第112話 報酬
祭壇に近づくと、そこには冒険者の国の実攻略ダンジョンでヘカトンケイルを倒した時のような宝箱がその中央に鎮座していた。
「おお、また出たな!!」
「ええ、また大儲け間違い無しね!!」
「ふむ、主君それはどのくらいマタタビンが買えるのだろうか」
「にゃーん(美味しいもの入ってないかなぁ)」
俺たちは階段を駆け上がり、ワクワクしながら宝箱の前に立つ。
すると、以前と同様に自動的に宝箱がゆっくりと開いた。
「えっ!?」
「はっ!?」
「へっ!?」
「にゃ!?」
俺たちは驚いて四人ともおかしな声を上げる。
それは仕方ないだろう。なんせ何も入ってないんだから。
「うわっ。これって外れなのか?」
「私も色々なダンジョンを攻略してきたけど、流石にこんなの初めて見たんだけど……しかも初回攻略で。基本的に初回攻略は宝が豪華なはずなんだけど……」
「マタタビンが買えない……」
「にゃーん(空っぽだよ~)」
俺たちはがっかりして項垂れた。
冒険大好きリンネでもこんな事態が初めてとは余程異常なことなんだとわかる。
マジでなんもないのか?
しかし、次の瞬間不可思議な現象が起きる。
俺たちの体が淡く光り始めたのだ。
「うわっ、一体なんだ!?」
「えっ?えっ?」
「主君!!」
「にゃにゃにゃー!?」
俺たちは慌てふためき、おろおろとしてしまう。
何が起こってんだ!?罠だったのか?
俺自身の体におかしなところはないようだが……。
皆は大丈夫なのか!?
『成長限界を突破させました。全能力値が1000上昇させました。スキル『念話』『異空間倉庫(小)』『鑑定』スキルを付与しました。』
そして宝箱から声が響き渡り、今俺たちに起こった現象を理解した。
マジか!?宝はモノじゃなくてステータス系だったか!!
どれが初回攻略ボーナスか分からないが、これは凄いことだな!!
成長限界を突破したってことは150が限界になったのかねぇ。
それに全能力値1000アップとか大盤振る舞い過ぎる件。
そして異世界定番スキルみたいな奴の付与。
俺は似たようなことがすでに出来るからそれほど変わらないけど、リンネ達にしてみればかなりいいスキルだろう。それに俺以外はイナホと意思疎通がなかなか難しかったからな、念話はかなりありがいと思う。
ステータスを確認したが、全員のレベル上限が更新され、全能力値が1000上昇して、スキルも付与されていた。
そして声と同時に宝箱は燐光を放ちながら消えた。
『皆きこえるか?』
「「「!?」」」
俺が念話を使って話しかけると、全員がビックリしながら俺の顔を見る。
その顔お約束って感じでいいですねぇ!!
いただき!!
それはそうと話を続けよう。
『今付与されたばかりの念話スキルを使用して頭に直接語り掛けている。心の中で皆に話しかけるようにすれば使えるはずだ』
『こうかしら?』
『おお。聞こえるだろうか?』
『僕も!!聞こえる~?』
『え!?これはイナホかしら!?』
『うん、僕だよ~』
『おお!!イナホ殿の言葉が分かるな!!』
イナホとの意思疎通が可能になったことでリンネとカエデは手を取り合ってキャッキャッと騒ぐ。
百合百合してて尊い。
『今ので分かったと思うが、さっきの声の通りの内容が俺達に与えられた報酬だってことだ』
『凄いわ!!アイテムバックも無しで結構沢山荷物が持てるみたいね!!それに鑑定まで!!これからもっと便利になるわねぇ』
『あの弱かった私が、こんなにも高い能力値を得た上に、さらに限界突破することが出来るとは……感無量だ』
『わーい、ご主人以外とも会話出来てうれしー』
リンネとイナホははしゃいで、カエデは胸に手を当て天を仰いで喜びをかみしめている。
最初はがっかりしたが、なかなか良い報酬だったのではないだろうか。
俺たちはしばらくの間その余韻を楽しんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます