第069話 古代魔法

 リンネは表紙を見たり、タイトルをアンリに聞いたりして、気になる本を選び、適当な所に腰を下ろして話を聞かせてもらい始めた。イナホはその隣で丸まり、寝る腹積もりのようだ。


 俺もイナホの隣に腰を下ろし、古代魔法の入門書を読み始めた。古代の文字で書かれていたが、俺には何の問題もなく読めるし、理解できる。


 古代魔法には、


 1、自然魔法

 2、精神魔法

 3、時空魔法

 4、付与魔法

 5、治癒魔法

 6、錬成魔法

 7、契約魔法


 の7つがある。


「ドガガガーン」

「キャー」


 自然魔法は所謂属性魔法と呼ばれる魔法の上位互換で炎や水などを自在に操れる魔法だ。


 精神魔法はその名の通り、精神に直接作用する魔法。洗脳をしたり、幻覚を見せたりすることができる。


 時空魔法は、異世界ファンタジーでおなじみの転移や結界、そして重力などを操ったりすることが可能な魔法。ただし、転移は非常に多くの魔力を消費するため、基本的には転送装置で転移することの方が圧倒的に多いらしい。ただ、魔力が極端に多い人は例外だが。


「私に任せて!!アルティメットスターレイジングバスター、オーバードライブ!!杖の先が二つに割れ、魔力が刻々と収束し、空間を歪めはじめた。」

「何それカッコいい!!」


 付与魔法は、物体に何らかの魔法的な効果を付けることが可能な魔法だ。刻む物体の素材によって付与できる効果が変わるらしい。支援魔法もこの魔法の一部で、人相手に一時的な補助魔法を行使することができる。


 治癒魔法は、その名の通り、回復魔法の上位互換の魔法だ。回復魔法では欠損やひどすぎる怪我を完全に治すことができないが、治癒魔法ならそれも可能だ。ただし、これも治療薬や魔導ナノマシンの方がコストパフォーマンスが高いので、昔はそっちが主に普及していたらしい。


「フルバァアアアアアアアアアアアスト!!このはは力の限り叫ぶと、杖の先端から赤い閃光が空間を両断するかのように一瞬で敵に迫り、着弾した。グァアアアアアアアアアアアアア!!」

「やったの!?」


 錬成魔法は、物体から特定の物質のみを取り出したり、何かと何かを組み合わせて新しい物質を作り出すことができる魔法だ。鉄鉱石から鉄だけを取り出してインゴットにしたり、魔力と鉄を組み合わて魔鉄という物質を作り出したりできる。付与魔法で効果を付ける素材を作る際に役立つようだ。


 付与魔法と錬成魔法を使えば、疑似的に魔法を使うことができる装備なんかを作ることもできる気がする。


 最後に契約魔法だが、条文と制約を設定し、お互いがそれに同意することで、条文を破った際に罰則が自動的に発動する魔法だ。どうしても破られたくない約束をするときに有効だ。約束を破った際に命を奪うというのが最上の制約に思えるが、自身に完全に隷属する、という方が個人的には苦痛を伴うと思う。


「や、やるな!!しかし俺にはまだ後3回変身を残している。変身するたびにパワーがはるかに増す。その意味が分かるな?」

「なんですって!?」


 さっきから臨場感たっぷりにアンリが小説を語りを聞かせ、リンネが興奮しながらリアクションを取るという、図が続いたんだが……。


「なぁ?もう少し静かにならないのか?」


 流石に鬱陶しくなって尋ねると、


「なによ!!今いいところなのよ!!気になるならどっかいきなさい!!」


 とシッシッという手ぶり付きでリンネに追い払われてしまった。


 俺は邪魔者ですか……。グスン。


「わ、わかった」


 リンネの態度に俺はショボーンと項垂れて、聞こえないくらい遠いところまで移動し、腰を下ろして再び本を読み始めた。


「にゃーん(元気出して)」


 イナホもうるさかったのか、俺についてきて、胡坐をかいた俺の膝の上に乗り、腹に頭をこすりつけて慰めてくれる。


 イナホが優しくて可愛くて、俺の心は癒された。


 しかし、


「あれって、魔法少女マジマジこのはのアニメ化されてない部分じゃないのか?くそっ、気になる!!」


 俺はしばし古代魔法の内容が頭に入ってこなかった。


 なんとか思考を切り替え、俺は古代魔法の基本的な部分を覚えた頃には、気づけば何時間も経っていたのであった。

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