第059話 治療
翌日、採取した液体を瓶に入れてもっていき、世界樹にぶっかける。なんだか悪いことをしてるみたいで、辺りをきょろきょろ見渡して、俺達以外がいないこと確認してから事を行った。
「こ、これでいいのか?」
『はい、徐々に増殖して回復していくはずですが、これから足りるまで供給をお願いします』
「はぁ……分かった」
バレッタに確認すると足りないようだ。俺はため息を吐いて頷いた。
昨日というか今日の朝方まで頑張った結果、リンネは疲れ果ててひっくり返って寝ている。
何日かかるんだこれ?
『おそらく7日程かと』
バレッタさんから求めていない答えが返ってきた。
「はぁ……」
再びため息をついた俺は馬車に戻ってベッドにもぐりこんで意識を手放した。
「ハァ…ハァ……」
意識を覚醒させると、リンネが息を荒げながら俺の上で跳ねていた。
「何してんだよ!!」
「ナニよ!!」
などと一度スイッチが入ると積極的なリンネとやり取りをしながら1回戦を始め、その日もご飯とトイレの時間以外はインフィラグメで綺麗にしながら1日中求め続けた。
ちなみにイナホはご飯の時以外は、取り出してやった超古代製キャットタワーなどの遊び道具で遊びつつ、ゴロゴロと寝て過ごしていた。
そんな日が続いて8日目の朝。今日もリンネはスヤスヤと寝息を立てている。
「やっと終わりか……」
『はい、今日吸収させれば、ある程度遺跡の機能は回復すると思います』
「よし、寝よう」
そう思って俺が馬車に帰ろうとしたその時、近づいてくる気配を察知した。
「探しました」
しばし待つと優しい声色が耳に届く。
振り返ると、そこにいたのはアレナだった。
「おや、どうした?」
「報告がないのでどうなったかと思って探しに来ました」
どうやら1週間というのは結構長かったらしく、様子を見に来たらしい。
「ああ、原因が分かってな。治療もできそうだったから治療していたところだ」
「なんですって!?一体何が原因なのですか?」
俺の返事に詰め寄ってくるアレナ。
「ああ、世界樹の中に悪さをする源があってそれが悪影響を及ぼしていた。それを俺とリンネの力で治療したってわけだ。後は徐々に回復していくだろう」
「一体どうやってそんなことを知ったのですか!?」
さらに詰め寄ろうとするが、インフィレーネの障壁が自動的に遮り、それ以上近づけなかった。
流石インフィレーネやるな!!
「それは秘密だ。俺は冒険者だからな。自分たちの能力を明かすわけないだろ」
「そ、それもそうですね。少し焦っちゃいました。ごめんなさい。冒険者の能力を効くのはご法度でしたね」
俺の返しに、アレナは少し落ち着いた様子で謝罪した。
どれだけ調べても分からなかったことを1週間で解決したと聞けば、そりゃ驚くよなぁ。やってることは酷いけど。
「それでどうだ?一応少しは回復し始めていると思うが?」
「そうですね……。確かに一週間前よりずいぶんと生命力を感じます。はぁ……本当に良かったです」
俺の言葉に、しばし瞑想をしてから安堵の息を吐くアレナ。
どうやら問題ないらしい。こっちの解析(バレッタ)でも問題なし。これなら太鼓判を押せるだろう。
「ならよかった。しばらく予後観察が必要だろうが、もう大丈夫だろう」
「調査どころか、治療までやってくれるとは思わなかったです。リンネはホントにとんでもない方を伴侶にしたものですね」
アレナが感心したようにウンウンと頷いた。
「はは……、俺は只のおっさんだけどな」
「ギガントツヴァイトホーンを倒しただけじゃなく、世界樹の危機まで救っておいて、そんなわけないじゃないですか」
呆れ気味告げるアレナだが、前回はただカッコいい武器を使っただけだし、今回なんてセックスしてただけだぞ。ひどい話だ。
それのどこが只のおっさんじゃないと?
ただし絶倫にはなってるけどな。絶倫の只のおっさんである。
「そういえば、リンネはどうしてますか?」
「ん?リンネはまだ寝てるぞ?」
「そうですか……。それならリンネが起きたらお祝いも兼ねて夜に一緒に食事を取りましょうと伝えてください」
アレナが話題を変え、俺が答えると、今晩は城での晩餐に招待したいと言い出した。
「俺たちにちょっかいを出すような奴はいないだろうな?」
「もちろんです。あなたにはリンネがいることは周知の事実。余計な事をするものは少なくともこのエルフの国にはいないですよ」
俺が少し威圧を込めて睨むと、アレナは少し自慢げに語る。
「そっか。それなら後でリンネと一緒に行くわ」
「お願いします。……それにしてもなんだか生臭くないですか?」
俺が警戒を解くと、鼻をヒクヒクさせながら急にそんなことを言いだした。
ヤバッ!!俺の体から出た白い物を蒔いたばかりだった。
「い、いや気のせいだろ?」
俺はすぐにインフィレーネで空気を綺麗にしながら言い繕って、目を逸らして口笛を吹く。
「うーん、そうでしょうか。あら?確かに匂いがしないですね。気のせいだったかもしません。それじゃあまた後で」
腕を組んで首を傾げた後、再び鼻をひくひくさせるアレナ。
しかし、今度は何も匂いを感じなかったようで、不思議そうな顔をしながら供も連れずにやって来たアレナは颯爽と去っていった。
「あ、あぶねぇ……」
俺は冷や汗をかきながら独り言ちた。
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