第058話 調査と治療方法
「リンネ、ちょっと待ってくれ」
「なによ?」
次の日、俺達は城を出ると、世界樹に向かおうとするが、城の前の道を通っていくの面倒なのでインフィレーネの障壁で道を作っていくことにした。
「こっちから行こう」
「なるほどね!!」
城の後ろに回りインフィレーネを顕現させ、組み合わせて障壁を道のように展開して、その上を走っていく。
「まるで湖の上を走ってるみたい!!」
「いいだろ?」
「ええ!!」
「にゃーん(僕も走る~)」
俺が先に走り、リンネがその後に続く。水面スレスレを走り抜けていくので、初めての体験にリンネが嬉しそうに笑う。そして、俺たちの様子を見たイナホも俺の腕の中から飛び降りて、一緒になって楽しそうに走り出した。
一度歩いた部分は分解してまた前へと移動しながら道を延長して進んでいく。湖はそれなりに広かったが、俺たちの身体能力を駆使すればあっという間に通り過ぎた。
その姿を城の兵士たちが呆然と眺めていた。
そして辿り着いたのは世界樹の根本。
改めて見上げると本当に圧巻である。
「こんな木があるなんて信じられないな」
「ここにしかないからね。それも無理はないわ」
「にゃーん(おっきいねぇ)」
確かに見たことがある人間じゃないと、高さ何千メートルもある木があるなんて言っても信じられないだろうな。
「さて何かおかしいところを感じるか?」
「うーん、そうね。前に来たときはもっと青々としていた気がするわ」
「元気がないってことか」
「そうかもしれないわね」
それなら、と俺はインフィレーネで解析をしてみる。
『これはどうやら中にある遺跡が不具合を起こして、本体である世界樹に悪影響を及ぼしているようですね。こちらの遺跡は時空停止措置を受けていなかった所があるのでしょう。流石に劣化してしまった部分が出たのだと考えられます』
バレッタが報告してくれた。
なるほど、世界樹の中に遺跡があるのか。根元から入って上に登っていくのかな。
『そうですね』
「そうなんだ」
バレッタの報告にリンネが答える。
「それで解決策はあるのか?」
俺がバレッタ先生に尋ねると、
『はい、今現在ケンゴ様に注入しているナノマシンを一定以上世界樹に投与すれば、余程重篤な機能不全でなければ、自動的に増殖して不具合を起こしている個所を直してくれるはずです。今の状態を見るに問題ないでしょう』
「分かった。どうすればいいんだ?」
すでに解決策があるようなので、バレッタにその答えを促す。
『セックスですね』
「はっ?」
バレッタの答えに俺の思考は一瞬真っ白になってしまった。
一体どうなったら治療とセックスが結びつくって言うんだ?
『セックスです』
「いや聞こえなかったわけじゃないんだが」
もう一度何のためらいもなく呟くバレッタに俺は困惑する。
『大事な事なので二度言いました』
「そうか。それで?木とするわけには行かないだろ?」
シレっと言い切るバレッタの言葉を聞き流し、具体的な案を尋ねた。
『もちろんリンネ様に決まっています』
「え!?」
突然話題を振られたリンネが驚く。
そりゃあ、俺と事を成すのはリンネ以外に居ないわなぁ。
俺もリンネ以外は願い下げだし。
『何を驚いているんですか?リンネ様以外にケンゴ様のお相手をする人はいないでしょう?』
「そ、そうだけど……」
バレッタに指摘されると、困ったように俯くリンネ。
こういうことには何か踏ん切りが無いとトコトン弱い彼女。
その姿は少し小さく見えた。
『それとも、他の誰かが相手をしてもよろしいのでしょうか?』
「や!!」
バレッタが脅迫するかのように問うと、ガバッと顔を上げて素早く答える。
『それならリンネ様がやるしかないでしょう』
「でもなんでしなきゃならないのよ?」
リンネは至極根本的な疑問を質問する。
確かに気になるよな。
『魔導ナノマシンが体液に含まれているからです』
「それなら汗とか唾液とかでもいいでしょ!?」
そうだそうだ!!
バレッタの返事に対して、リンネのまっとうな答えに俺も一緒になって心で応援する。
『含まれている量が微量なのですよ。精液には多量に含まれているので一番楽なのです。恋人同士なのですし、何も問題ないでしょう』
「それはそうかもしれないけど……」
いや確かに合理的に考えればそうかもしれないけどさ。
リンネの気持ちってものがあるじゃん?
『どうしても難しければ手でも、胸でも、口でも使って出させてあげればいいのです』
その言葉は流石に看過できない。
「流石にそれは悪いから俺が自分でやってもいいんだが……」
「『それは駄目(です)』」
俺は申し訳なさそうに手を上げて提案するが、なぜか俺の案は二人に却下された。
『それでどうするんですか?』
「……やるわよ」
バレッタの問いかけに、聞こえるか聞こえないか微妙なくらいの声量でリンネが呟く。
『なんですか?』
バレッタが聞き返す。
いや、もういいんじゃないだろうか?
「やるって言ってんのよ!!」
具体的な部分は言わずにリンネが叫んだ。
『何をです?』
再度聞き直すバレッタ。
いや許してやれよ。
「セックスするって言ってんのよぉおお!!」
リンネはこだまする勢いで絶叫した。
『だ、そうです、ケンゴ様』
「あ、ああ。分かった」
満足したバレッタが今度は俺に話題を振ると、俺は狼狽えながらも頷いた。
『それではひとまず200発くらい決めてきてくださいね!!』
バレッタの作り物めいたテヘペロが幻視された。
それにしても……、
「多くね!?」
その数にビックリする。
『それでも少ないくらいです。世界樹が大きいので仕方ないのです』
「それは確かにな……」
確かにデカさゆえに全く足りないだろう。最低限の数って感じなのかもしれない。
「そ、それじゃあ、いくか」
「うん……」
俺は馬車を取り出して、赤くなって俯くリンネの手を引いて馬車へと乗り込む。
「にゃーん(交尾が終わってご飯の時間になったら起こしてねぇ)」
「お、おう」
イナホはソファにピョンッと飛び乗って丸くなりだした。
ちゃんと意味わかってるんだなイナホの奴。
「イナホはなんて?」
「セックス終わったら教えろってさ」
「な!?」
イナホの言葉を使えるとプシューッという音が聞こえた気がするほどさらに真っ赤になってしまった。
大人しくなってしまったリンネを寝室へと連れていってベッドにお姫様抱っこをして寝かせてやる。
「いつも雰囲気がなくて悪いな」
「べ、別にいいわよ……。それに、私たちはこ、恋人だし……。これからもっとこういうことすることになるんだもの。少しずつ慣れていきたいわ……」
「リンネ!!」
「キャッ」
組み敷く形なって、下にいるリンネが頬を赤らめ、横を向いて口元に手を当てながらそんなことを言うもんだから、そんな彼女が可愛らしくていじらしくて俺は襲い掛かってしまった。
それからは心行くまでお互いを貪りあったのは仕方ない事である。
■■■■■
「はぁ……全く世話の焼ける人達です……。ここぞとならないと事に及ばないのですから……。別に単純な接触でも送受可能で、セックスする必要は無いのですが、私が背中を押してあげませんとね。せっかく恋人関係になったのですから、多少性に溺れるくらいでも構わないのですよ。そしてゆくゆくは御子息、御令孫、そしてその先の御子孫に至るまで未来永劫お仕えいたします。あの二人の子供なら後継者として申し分ないでしょうし。子供は天の授かり物ですからそこをいじるのは野暮という物、気を長くして待ちましょう。あの二人がすぐ死ぬことなんてないのですから。ふふふっ」
一方船では、バレッタがため息を吐いた後、恍惚の表情を浮かべながら独り言ちていたのであった。
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