【書籍化】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜
ミポリオン
古代遺跡への旅路~黒幕との邂逅を添えて~
第044話 告白
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書籍化に伴い、収録範囲を非公開にいたしました。出版する際に必要な措置になりますのでご理解の程よろしくお願いいたします。
一巻分の収録範囲に関しましては、書籍版をお求めいただくか、アルファポリスのサイトにてレンタルも開始しておりますのでそちらをご覧ください。
最初の何話分かはアルファポリスのサイトで無料で読むことができます。
二巻以降の内容に関しましてはWEBと書籍で全く別物になっておりますので、残させていただいております。
誠に申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いします。
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一巻収録範囲のざっくりとしたあらすじ。
高校生達の勇者召喚に巻き込まれた中年サラリーマンの福菅健吾。彼はスキルが『言語理解』しかないことを理由に誰一人戻ってこない『奈落』へと追放されてしまう。
しかしそこで、『言語理解』スキルを使用することで遥か昔に滅んだ超古代文明の技術と力を手に入れることに成功する。
その力でモンスターに襲われていた美少女剣士のリンネを助けた健吾は、冒険者になり、紆余曲折を経て、異世界でやってみたかったことをやりながら、魔境や秘境を求めて世界を巡る旅に出ることに決めた。
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俺達は街を歩きで出て人目が少ないところまで行くと、少し街道から外れて話しはじめた。
「それで次の目的地なんだけど、この国の西のエルフの国に未踏破ダンジョンがあるって聞いたことがあるわ」
エルフの国か……。
冒険者の国にもエルフは多少はいたけど、あまり関わる機会がなかったからな。きちんと間近で見て話をしてみたい。できれば長い耳を触ってみたい。
「なるほど。じゃあ次はエルフの国に行くか」
「ええ。それで?このまま歩いていくわけじゃないでしょうね?歩いたら何日かかるかわからないわよ?前みたいにあのレグなんとかに乗ってくの?」
俺たちは街を歩きで出てきたわけだが、リンネもそのまま行くとは思っていないようで俺に尋ねた。
「レグナータな!!いやあれだと旅って感じがしないから別のでいく」
「ふーん。旅なんて面倒なだけなのに」
俺が答えると、リンネは不満そうに呟く。
スピードだけを考えれば、レグナータも悪くはないが、別に急ぐ旅でもないし、俺は異世界の旅というものを楽しみたい!!
旅が好きじゃないみたいだけど、快適な旅ならいいだろう?
「俺はリンネみたいに旅はあまりしてないからな。旅に憧れがあるんだよ」
「そうなのね。それで?何で行くの?」
「テレレッテレー、普通の馬車~」
どこかの青いどら猫が道具を出すかのような音を真似しながら、街道から外れて出したのはどこからどう見ても普通の馬車だ。
「どこが普通なのよ!!馬が生きものじゃないじゃない!!それに引く馬車も見たこともないような形だわ!!」
俺が出した馬車に憤慨するリンネ。
ちゃんと馬―の形をしたもの―が、普通に馬車を引いているのに文句が多いことだ。
「これはゴーレム馬だ。ちゃんと自分で判断する知能を持っているんだ。それに、全方位見えるように設定できるし、ちゃんと馬車も衝撃を全て吸収してくれるし、中は広くてシャワーやトイレ、そして寝室や複数の個室も付いてるから快適そのものなんだぞ?」
「そんな馬車見たことも聞いたことないわよ!!」
俺は至極丁寧に普通の馬車の説明すると、なぜかリンネがぷりぷりと怒る。何が不満だって言うんだ……。
「まぁまぁ、中に入ろうぜ?」
「はぁ……ケンゴといるとホント驚きばかりね……」
「ワクワクしていいだろ?」
「そ、そうね……」
俺はリンネをなだめてキャンピングカーのような荷台のドアを開き、中へ入る。その時のリンネの顔はほんのり赤らんでいた。
「お手をどうぞ?」
「ふん」
俺が中からお姫様をエスコートするように手を差し出すと、そっぽを向きながら手を出すリンネ。
俺はそんな彼女の手を取り、ひょいっと彼女を中へと引き上げた。
「な、なんなのよ、これぇえええええええええ!!絶対馬車じゃないわ!!」
中は近未来的な造りの24畳くらいの普通のリビングになっていて、ソファーやテレビが置いてある。
その様子を見てリンネが叫ぶ。
「何言ってんだよ。普通だろ?」
「こんなの普通なわけないじゃない!!いい加減にしなさいよ!!」
「分かった分かった。悪かったよ、冗談だ」
「もう!!」
俺の呆れたような答えに、リンネが俺の襟元に掴みかかる。流石に悪かったと思い、両手を上げて謝罪すると、彼女は俺を離してくれた。
俺はこれから話すことに緊張してついつい悪乗りをしてしまったのである。
「コホン、まずはそこのソファーにでも座ってほしい」
「な、なによ……。まずはケンゴが座りなさいよ」
「分かった」
何かあると疑うリンネが促すので、俺が先にソファーに座ると、隣に彼女が腰を下ろした。
「それで?話って何よ」
リンネは座るなりすぐに本題を切り出す。
「え~っとだなぁ。あ、先に馬車を走らせよう。行先は西でいいんだよな?」
「そうね」
俺はゴーレム馬にインフィレーネで街道沿いに進むように指示を出す。もちろん他の人や馬車にぶつかったりしないように注意しておく。
ひっひっふー。ひっひっふー。
ちょっと深呼吸。
「それでだな。話を戻すと、俺が普通じゃないことはリンネも分かっていると思う」
「そうね。会った時から色々おかしかったわね」
やっぱり変だと思ってたのね。うん、知ってた。
「そのことについて説明したいと思う」
「……いいの?」
今まで言おうとしなかったのにはそれなりの理由があると思っていたのだろう。リンネは少し躊躇いがちに俺に確認する。
「すぐに話しても信じてもらえないだろうと思っていたからな。でも今はリンネには知っておいてもらいたんだ。彼女だしな」
「そ、そそそ、そうね。私はケンゴの、か、かかかか、彼女だものね」
俺の言葉に挙動不審になりながら返事をするリンネ。
「まずはどこから話そうか。そうだな、俺はこの世界の人間じゃない。別の世界の人間だ」
俺はリンネが落ち着くのを待ってから語り始める。
「別の世界?」
リンネは別の世界と言われてもピンとこないらしい。
「うーん、そうだな。普通の手段では行くことができない程もの凄く遠い国とでも思ってもらえればいいと思う。そこにはこの国とは全く違う文化や環境があって、魔法やモンスターなんて存在しない国だった。戦いもなくて、一応平和な国だったと思う。俺はそんな中で育ったわけだ」
「ふーん。戦いもなくて、魔法もモンスターないなんて不思議な国ね。この馬車もその国の技術なの?」
俺はリンネに分かりやすいように言い換えて説明すると、なんとなくわかったのか、今乗っている馬車についてリンネが言及する。
「いやこの馬車はまた違うから後で話そう」
一応概念的には俺の世界にもあるにはあるけど、ごっちゃになるから順を追って話していかないとな。
「分かったわ」
「俺はそんな場所で育って普通に働いていたんだが、突然、仕事に行く途中で急に光に包まれて、気づいたら隣の隣の国ヒュマルス王国って所に召喚されていた」
リンネが頷いたのをみて俺は話を続けた。
「それって勇者召喚とか言われるやつじゃないの?あなたって勇者だったの?」
リンネはキョトンとした表情で俺に問う。
召喚とか召喚された勇者についてはある程度認知度があるようだ。
「いや、それだったらよかったのかもしれないけど、俺だけステータスが一般人未満でスキルもなんも持ってないからって追放されちゃったんだよな」
「なんですって!?」
俺が追放されたと聞いて俺に詰め寄ってくるリンネ。顔がめちゃくちゃ近い。その可愛らしい顔が怒りの形相に歪んでいる。
あんまり近づくとちゅっちゅしちゃうぞ?
明らかにそんな雰囲気じゃないからしないけどな!!
「あ、いや、今ここでこうしてリンネと一緒に旅できてるわけだから落ち着いてほしい」
「あ……うん……わかったわ」
俺が馬のようにドウドウとなだめると、リンネは浮いていた腰をソファーに下した。
「それで追放された先ってのが、リンネが挑んでいたあのダンジョンだったんだ」
「あんなところに何の力も持たないあなたを放り込んだというの!?ただの人殺しじゃない!!」
「だから落ちついてな」
「う、うん……」
俺が話を続けるとリンネが再び荒ぶるので落ち着かせる。
「それで、飛ばされた場所には実は秘密があった。天井に古代文字の暗号らしきものが書かれていて、俺にはその文字が読めてな。その文字に従って行動したら何もないはずの壁が開いたんだ。そして、そこにはありえない技術で作られた船が一隻置いてあった」
「なるほど。この馬車はその船の技術ってことね」
続きを聞いたリンネは腑に落ちたといった表情になり、馬車のことも理解してくれた。
「その通り。そして俺はその船の所有者になった。そのおかげでリンネを助けてダンジョンから出て冒険者になれたってわけ」
「そうだったのね。どおりで常識がないわけだわ、ようやくスッキリした」
話終えると、リンネは自分の中のモヤモヤしたものが消え去ったかのようにすっきりとした表情をしていた。
「信じて……くれるのか?」
俺は本当に信じてくれるとは思っていなかったので聞き返す。
「普通ならそんな与太話信じられるわけないけど、実際にあなたの力もこういう技術も見せつけられたら信じざるを得ないわ。それに、わ、わわわ、私はケンゴのか、かかかか、彼女だもの。し、信じるのは当然のことよ!!」
ああ……本当にこの女の子は……。
「ありがとな」
俺は嬉しくてその一言だけが自然と口から出ていた。
「当然のことなんだから礼など不要よ!!」
「俺が言いたいんだよ」
いつものように腕を組んでそっぽ向くリンネに、俺は優しい笑みを浮かべて答える。
「な!?……全くもうしょうがないわね!!感謝されてあげるわ!!」
虚を突かれたような声をあげた後、リンネはフフンと自慢げな表情で言い放った。
呆れつつもまんざらじゃない彼女の顔がとても可愛い。
「それで、リンネを助けたのも、ギルバートを倒したのも、ギガントツヴァイトホーンを倒したのも、ほとんど俺の力じゃないんだよ。こんな俺だけど見損なったか?」
そう、俺が怖いのは、全部俺の力じゃないことでリンネに拒絶されることだ。
だから俺は最初悪乗りで冗談を言って気を紛らわしていた。
俺は与えられただけ。別に努力したわけでもなんでもない。
たまたま運よく字が読めて所有者になっただけに過ぎない。
本当の俺はうだつの上がらない只の一般人なのだ。
「は!!それこそ見損なわないで欲しいわ!!私はリンネ・グラヴァール。人類最高のSSSランク冒険者よ!!あなたが手に入れたものはあなたの物、あなたの力。それも含めてあなたなの。後はその力をどう使うのかが大事なのよ。その力を使って私を助けたのはあなた。ギガントツヴァイトホーンを倒したのもあなた。だからあなたを見損なうなんてことはありえないわ!!それに私の修行にもついてきた。私はちゃんと見ていたわ」
鼻で笑ったリンネは、冗談じゃない!!と憤慨するように答えた。
ああ、この娘は全くもう……。
「良い女だな!!」
俺は心からそう思う。
「はん、そんなの当然じゃない!!私は人類最高ランク冒険者リンネ・グラヴァールなのよ?」
上機嫌になってニヤニヤと笑う彼女。
「そんなリンネが俺は大好きだ!!」
俺は感極まって叫んでいた。
「な、なななな、なに言ってんのよ!?」
俺の叫びにリンネは狼狽してアワアワと慌てている。
「大好きだって言ったんだよ!!」
「ふーん、そう。私はそうでもないけどね」
もう一度言うと、ソワソワして視線をそらし、髪の毛の先を手で弄びながらリンネはそう答える。
「そうなのか?」
「そ、そうよ!!」
聞き返すとリンネは少し慌てて言い繕うように答える。
「本当に?」
「だから、そうだって言ってるじゃない!!」
さらに聞き返すと、顔を真っ赤にして強い語気で答えるリンネ。
「本当の本当に?」
「だぁかぁらぁ、別に好きじゃないって言ってるじゃない!!」
もう一度聞き返すと、しつこいわね、と眉間に皺を寄せてリンネが答えた。
「本当の本当の本当に?」
俺はどうしてもリンネの口から欲しい言葉が聞きたくて、ダメ押しにさらに聞き返す。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………好きよ」
すると、長い沈黙の後、彼女は確かにそう言った。
嬉しい……。その言葉が聞きたかった。
「なんだって?」
でももっとはっきりと聞きたい。
そんな欲が出てしまって、耳に手をあてて聞き返す。
「何度もしつこいわね!!大好きだって言ってんのよ!!寝ても覚めてもあなたのことばかり考えてる!!ずっとあなたのことを目で追ってる!!あなたが私を見つめるとドキドキしてどうしたらいいか分からなくなるの!!あなたに触れられるとそこが熱をもってもっと触ってほしくなる!!そして、もっとずっとあなたと一緒に居たいって思ってしまうのよ!!それが何!?悪い!?それとも文句ある!?」
すると、堰を切ったように彼女は早口でまくし立てて、プイッとまたそっぽを向く。
「いや、そこまで言えとはいってないんだが……」
聞き返した俺の方が逆に面食らってしまった。
「あ……」
リンネは自分が何を言ったのか思い至ったのか、一瞬で今までで一番だとはっきり言えるほど顔を真っ赤に染めた。
「でも俺はリンネがそこまで俺を思っていてくれて嬉しいな」
まさかそこまで思ってくれていると思わなかった俺は、正直言ってめちゃくちゃ嬉しくて舞い上がってしまい、リンネのその華奢な体ををそっと抱き寄せて、そのおでこにそっとキスをおとした。
「ちがっ!?今のは違うんだから!!嘘なんだからぁ!!忘れなさぁい!!」
すると、リンネは俺につかみかかり、ガクガクと揺さぶった。しかし、俺は揺さぶられながらも幸せを感じている。
俺たちの騒がしい旅は始まったばかりだ。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
カクコン用の新作を公開しております。
https://kakuyomu.jp/works/16817139557489215035
どうぞよろしくお願いいたします。
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