ラブ制作コメディ

根鶴 蒼

モノローグ

 「恋ってのは、ため息と涙で出来たものですよ」

 シェイクスピアの残した名言である。

 恋には色々な感情が必要であるということを言いたいのだろう。なるほど、すばらしい言葉だ。

 しかし、俺は一つ考えてしまう。

 恋=ため息+涙なのか?

 ため息と涙が有ればそれは恋と呼ぶのか?

 いや、違う。

 俺のため息と涙は「嫉妬」である。



 休日にジリジリと鳴る目覚まし時計を蹴飛ばし、爽やかな朝をむかえた。 

 太陽の光を浴びて生きている庭の木を眺め、何故か苦笑をもらしてしまう。

 部屋の扉を開け、リビングに向かうがそこには誰もいない。両親は仕事で妹は友達と遊びにでも行っているのだろう。

 棚からパン、冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、テーブルに置き、お湯を沸かしはじめる。

 お湯が沸くまでの間に顔を洗い、口をゆすぐ。

 沸いたお湯で粉を溶かし、スープを作る。

 こうして出来た朝ご飯を数分で食べ、服を着替えて身だしなみを整えてから外に出た。

 空は雲一つない綺麗な青色をしている。

 前までは

「空が青いと心が落ち着くなぁ」

 みたいな気持ちの悪いことを思っていただろう。

 実際、空が青いという理由で心が落ち着くなら苦労しない。失恋して「空が青いなー」、失敗して「空が青いなー」、緊張して「空が青いなー」で落ち着くような奴は空だけ見ていたらいい。

 このように人は綺麗事を言うのが好きだ。

「〇〇より〇〇の方が大切だよ!」と言う人は多くいる。それが間違えだと俺は思う。

 人はないものをねだり、あるものの存在を忘れがちなのだ。

 そしてこのことは挫折や、自分には無いものに気がついた時、今まであったものを失った人が分かる。

 なぜ今こんなことを考えているのか、それは俺も最初は向こう側の人間だったからだ。なんなら最近まで。

 だが今は違う、気がついてしまったのだ。

 朝見た木も、今俺の横を通り過ぎた男性も、公園で遊んでいる幼児も、みんな普通の人やもの。

 違うのは俺とその周り。いや正確には俺の友達の周り。

 俺は昨日、俺が彼の友達だと知った。

 


 

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