第19話 ホラー

   花音side


校門の前で回りと違う制服を着たスタイルのいい人のもとへ駆け寄っていく。


「お待たせ~」


「早くいくぞ」


周りの視線を気にせずに歩き目的地の映画館に着いた。


私はわざとカップルシートを選択して夏樹にチケットを渡した。



「ホラー映画なのか?」


「そうなの!面白そうでしょ?」


「いや全然」


「そこは嫌でも面白そうって言うとこでしょ?」


「そうなのか」



指定された番号の劇場に着き席に向かった。


「花音、ここカップルシートじゃないか?」


「あれ~間違えちゃった?」


「お前こんなとこに一緒に座ってるとこ彼氏に見られたらどうするんだ?」


「え?彼氏?そんなのいないから」


「そうなのか?」



上映が開始して一番怖いシーンのところで耐えられなくなり夏樹に体を傾けた。すると夏樹は私の手を握ってくれた。


「大丈夫か?無理すんな」


こんなの好きにならないわけないじゃん。

胸の高鳴り。何もかも聞こえなくなるくらい夏樹の横顔を見つめてしまった。


「好き」




映画の上映が終わり出口に向かう途中に

「花音、さっきなんて言ったんだ?」


「何でもないよ~鈍感な夏樹には教えない~」


こんなやり取りをして私と夏樹は駅で別れた。




   夏樹side


いつもより長い映画が終わった時刻は19:30


早く帰らないと天花寺さんに迷惑をかけてしまう。急ぎ足で家に向かうと道中で靴を脱いだまま椅子に座っている人がいた。


通り過ぎると同時に横目でちらっと顔を見る。


「あら?夏樹君?」


「あ!千夏さんどうしたんですか?」


「ちょっと足を怪我しちゃったの」

靴擦れだろうか踵から出血していた。


俺も早く帰らないと天花寺さんが怒ってしまう。


かと言って千夏さんを見捨てる訳にも行かないので...



「私重くない?」今こうしていわゆる『おんぶ』と言うものを実践してみた


「軽いですよ素晴らしいぐらいに」


「なにそれセクハラかしら」


色々当たっている事は置いといて...って置いておけるわけが無い。初めてのおんぶにしかも相手は女子大生


「千夏さんって彼氏とか居るんですか?」


「いないわよ。嫌味かしら」


「そんなんじゃ」


女性との会話も慣れてきた。そして着いたのは千夏さんの家のアパート


「本当にありがとうね」


「いえいえ。ではさようなら」

日はすでに沈み辺りは点々とある街灯の灯りだけ。


「天花寺さん怒ってないといいな」


重い足を一歩ずつ自宅に踏み入れるのであった




   綾香side


「遅いわね」


夕ご飯を二食分ダイニングテーブルに置きInstagramのインプレッションを確認しながら待っている。


ガチャ


「ただいま」玄関から夏樹の声がした。


「またこんな時間に」


「悪かった。ハプニングが続いてな」


「まぁいいわ夕ご飯出来てるわよ」


2人で囲む食卓。だがいつもと違い会話は無かった。


そんな無言の時間を断ち切ったのは夏樹だった。

「来週の土日で実家に帰るんだ」


「そう、楽しんでね。家事はやっておくわね」


「た、助かるよ。頼んだ」


プルルルルプルルルル

一本の電話が来た。


「もしもし夏樹だけどなんか用?」


通話中と言う文字の下に母さんと言う文字が表示されている。


受話器を私に渡してきた。すかさず受け取り耳に当てる。


「はい!お電話変わりました天花寺です」


【夏樹の母だけど~あの後夏樹に何かされなかった?】


「いえ。何もされてないです」


【それは良かったわ。それで本題なのだけれど、来週末夏樹が実家に帰ってくるのは聞いたかしら】


「はい。先程お聞きしました」


【それでなのだけれど...】

少し沈黙したのちに夏樹君のお母さまはすごい言葉を放った


【一緒に来てくれないかしら】


思考が止まる。考える時間が欲しい


「ひぇっ、あのそれはどう言う?」


【そのまんまよ~同居してるのだから放っておけなくてね】


また時間が止まる


「お伺いしてもよろしいのでしょうか?」


【ぜひ来て~】


「了解しました。夏樹君にいろいろ伺いますね」


【待っているわね~】


通話終了が表示されたと同時に夏樹君の方を見る。


「まじで?」

まるでサスペンスドラマの開始早々のセリフのような口調で夏樹君は言った


「行くことになりました」


「冗談でしょ?」


「本当です」



夏樹君の実家に行くことが決まったことで



楽しみにワクワクする女子高生と


不安に駆られる男子高校生がいた



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