恋は漫画みたいにはいかない

@fuji03

残酷な優しさ

誰にでも優しく、ムードメーカーであり、容姿も整っている。学校にはそんな女子が1人はいると思う。かくいう僕もそういう女子に出会った。容姿が整っていて、立ち振る舞いも女の子らしく、声も可愛い、いつも友人たちに囲まれていて、分け隔てなく接してくれる。彼女は僕の憧れだった。


漫画や小説であれば、冴えない主人公のまわりに、学園で人気の女子やかわいい幼馴染が集まり恋へと進み、男の友人にも恵まれ親友が出来て理想の青春というものを謳歌する。


だが現実ではそうはいかない。社交性が高くクラスのカースト上位の人たちは、僕のような社交性のない者たちにも平等に接してくれる。しかしそこにあるのは哀れみである。


クラスに馴染めず友達の少ない人に哀れみ、積極的に関わってあげているだけで、創作のように相思相愛になることはない。その優しさは僕のような人間にとっては残酷である。相手の優しさ故に好意をもったとしても、その恋の叶う可能性など微塵もないのだから。


彼女のような優しい人たちは、自信があり気の利いた冗談を交えた会話で楽しませてくれるような人間を選び、僕のような自己肯定感の低く社交性のない人間を選ぶことはない。


優しさ故に話しかけてくれただけで喜んでしまう僕は、叶わぬ恋だとわかっているから、その気持ちを押し殺して何でもないふりをしながらこれからも恋から目を背け続ける。

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