11
ホームのベンチに、二人で腰を下ろす。
「……………」
「……………」
めちゃくちゃ気まずい空気が流れる。
チラッと翼くんを見ると、その横顔は少し怒っている様に見えた。
さっきドアが閉まる寸前に電車を降りた事で駅員さんにめちゃめちゃ怒られたけど、それが原因ではない、とは思う。(悪いのは確実に私達だったし)
私はその沈黙に耐えられなくなり、口を開いた。
「げ、元気にしてた?」
「……うん」
私の問いに、そっけない返事。
やっぱり怒っている?
「……あの……彼女と、仲良くやってる……?」
本当はそんな事聞きたくなかったけど、他に会話が見付からず、咄嗟に聞いてしまった。
すると、その私の言葉を聞いた翼くんが、はぁぁぁ……と深い溜め息を吐いて「やっぱりそうだったか……。そうじゃないかと思ってたんだ」と頭を抱えた。
その後も、なにやらブツブツ呟いている。
どうしたんだろう?気分でも悪いのかな?
大丈夫?と声を掛けようとしたら、翼くんがパッと勢いよく顔を上げ、衝撃的な事実を口にした。
「あのさ美里ちゃん、勘違いしてるみたいだけど、俺、アイツとより戻してないから」
「え?……えぇっ!?なんで!?」
私は驚きの余り、立ち上がり叫んだ。
その叫び声に、近くにいる人達が一斉に振り向く。
「ちょっ!声っ!」
翼くんが、シーッ!と人差し指を立て、私の腕を引っ張ってベンチに再度座らせた。
私は、驚かせてしまった人達がジロジロこちらを見ているので「すみません……」と頭を下げた。
深呼吸をして、パニックになっている頭と心臓を落ち着かせる。
「……なんで、寄りを戻してないの?」
声が少し震えた。
「なんでって言われても、俺、もう他に好きな子いるから」
「えっ……」
本日二度目の衝撃の事実に、私は言葉を失った。
他に好きな子?そんな子がいるの!?
(そんな……)
じゃあやっぱり、どの道私は失恋確定じゃん。
「その子は、俺が彼女にフラれて落ち込んでいる時に元気を分けてくれた子なんだけど――」
元カノと寄りを戻していないと聞いて一度は浮上しかけた私の心が、再び沈んで行く。
翼くんが何かを喋っているけど、全然頭に入って来ない。
「……って美里ちゃん、聞いてる?」
「……へ?」
「俺今、告白してるんだけど」
「告白?何を?誰に?」
「美里ちゃんに『俺の好きな人は美里ちゃんです』って」
「え……」
翼くんの、本日三度目の衝撃の事実に、私はまたもや言葉を失ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます