第6話 MACHINE HEART

無機物に心はない。

なんて、心無い言葉なのだろう。

彼女の手のひらは人肌を温められるほど暖かいのに。

彼女の心は傷付いた小鳥を育てる程に暖かいのに。

皆、来る物を拒み、去る者を罵る。

命ある者が、仮初の命の物に、お前は違うんだと差別をする。

そして見て見ぬふりに集団で起こす理不尽な差別。

溝鼠ドブネズミやゴブリンなどを「穢らわしい」「下賎」などと宣う者と。

心が無いながらも懸命に慈しもうとする物。

同調圧力に負け、異端を排除し、排他的に染まった者たちと。

異端であることを理解し、寄り添おうとする物と。

どちらが綺麗であろうか。

どちらが穢らわしいのであろうか。

それが分からない者が多すぎる。

見目麗しい物、貌形が美しい物、自身の価値観に沿ったものの表面だけを受け取り、中身など一切顧みない。

本当の価値とは、中身まで吟味して初めてわかるものなのに。


「私、こころが、欲しい」

「どうして?」

「そうすれば、みんな、仲良くなれるから」

「……そうだね。心があれば…」


また一つ、嘘をついた。

どうして心なんてものはこんなにも低俗なのか。

どうして人というのはこんなにも醜いのだろうか。

けれども、君は、心が欲しいと言う。

ならばせめて。

俺は、君に君自身を嫌って欲しくないから。


「──エリン、僕の心を、受け取って欲しいんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る