第284話 LV284 進化するスキル
樹木化したライガは力を失いぐらつく。
「ライガが落ちるぞ」
ダンが上を見上げて叫んだ。
「うりゃあ」
フミヤはメロの口から両腕を抜き、ジョボネゴッダ母から落ちかけているライガへ向ける。
「発動しろアプロバブル!」
*フミヤはアプロバブルLV5を使った。
フミヤのスキルアプロバブルは、フミヤが神界での特訓を経てLV5までに成長していた。アプロバブルはレベルアップに応じてこういうふうに成長を遂げていた。
LV1 頭から泡が発動し、浮遊できる。
LV2 頭から出る泡の量が少し調整でき、浮遊状態から若干操作可能になる。
LV3 頭から出る泡の量がさらに調整でき、浮遊状態から操作可能になる。
LV4 頭から出る泡の量が自由に調整でき、空への昇降や移動ができる。
LV5 他の者の頭から泡が出せるようになる。
LV6 頭を伝って体にも泡が出せるようになる。 ……etc.
これによりライガの頭がアフロヘア―になる。
ライガはアプロバブルの能力により、ゆっくりと地面へと降下していく。下りてきたライガをダンは優しく受け止める。
「よくやった、フミヤ」
ダンはフミヤを褒める。
「私はこの頭になるくらいなら死を選ぶわ」
*イルイルはライガの髪型にひいている。
「何だかんだで、あいつ《フミヤ》は重要な局面で必要とされる」
そう言うはレイモンド。
万が一、樹木化したライガがあのまま地面に落下していれば、体は粉々に砕け死んでいただろう。フミヤはライガの命を救ったのだ。
フミヤメロとジョボネゴッダ母の戦いはさらに続いている。
「メロ、あそこの顔わかる?」
「モ゛キュ!」(フミヤを咥えているため、返事が濁っている)
「たぶん、アレが弱点らしいよ」
「モ゛ッキュ(了解)」
メロは、ライガが予想したジョボネゴッダ母の弱点を狙い拳を振るう。ジョボネゴッダ母は、木の枝を張り巡らせ自身の顔部分を執拗に庇う。その行為が、「弱点はここだ」と、皆の確信へとつながる。
メロとジョボネゴッダ母との闘いは均衡状態。ただ、ややメロに疲れが見える。両者決め手に欠けるなか、地上の二人が動き出した。
「お前も気付いたな」
「考えは同じようですね」
ヴィオラとレイモンドである。
ライガの行動がヒントとなり、二人はジョボネゴッダ母でなく、メロの体を駆け上がる。凹凸のないメロの体を登るには至極の業であるが、それを可能とできるのがこの二人であった。
ヴィオラとレイモンドの存在に気付いたジョボネゴッダ母は二人の接近を阻止しようと、無数の木を繰り出した。ヴィオラとレイモンドは咄嗟に剣で振り払う。
これに呼応するように各自が動き出す。ブリズエラは背に羽を生やし空へ飛び立つと、ヴィオラとレイモンドへ迫る木々を氷魔法で粉砕。二人の援護に回る。そして、イルイルとマカジルは地上より、攻撃魔法でジョボネゴッダ母を牽制した。さらにラオ老は子蜘蛛を、シキートは
ヴィオラとレイモンドが、メロの肩までを駆け上がるのに要した時間約20秒。
「ヴィオラ!」
フミヤがヴィオラの存在に気付いたのは、二人がジョボネゴッダ母の顔の前へ跳躍した時だった。
ジョボネゴッダ母は自身の顔を守ろうと、ヴィオラとレイモンドの前に巨大な木のシールドを張り巡らせた。
「ヴィオラ突っ込め! 俺が砕く」
「了解」
ヴィオラより一瞬先に跳んだレイモンドは剣に魔力を込める。
「アースロックスクリュー」
レイモンドの剣から繰り出した螺旋状の石つぶてが、巨大な木のシールドを綺麗な円形状にくり抜いた。ヴィオラは躊躇せず、レイモンドの作った円形状の穴に飛び込むと、その先にあるジョボネゴッダ母の顔を切る。
「ゲギャア゛ア゛ア゛ァー」
顔を切られたジョボネゴッダ母は苦しみの表情で悶えている。
「メロ! 俺を吹き飛ばしてくれー」
「モ゛キュン」
メロは勢いよく息を吐き出し、フミヤを木のシールドの方へと吹き飛ばした。
「ギャン」
当然、メロに飛ばされたフミヤが狙い通り穴に入る訳はなく、シールドにぶち当たった。それでもフミヤは、なんとかしがみつき開いた穴の方へじりじりと近寄っていく。
ライガが弱点だと予想したジョボネゴッダ母の顔は、
幸いジョボネゴッダ母にはそのような体質はなかったのだが、思っていた以上に生命力が強かった。ジョボネゴッダ母の上に立つヴィオラとレイモンドに樹木化が迫る。フミヤはヴィオラとレイモンドを救うためにジョボネゴッダ母に飛び込んだのだ。
「や゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「本当に五月蠅い核だな。こんな奴見た事ないぞ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
核は苦しそうな声を上げ続けている。
「おっ、フミヤ遅かったな」
「フミヤ--!」
「ヴィオラ――!」
フミヤはすぐにヴィオラへ抱きついた。
「俺は無視かよ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「五月蠅えよ」
「あ゛あ゛…………」
レイモンドがとどめとばかりに核へ剣を突き刺すと、核の叫び声は止まり息絶えていった。
「大丈夫かよ。もう腰辺りまで樹木化してるじゃん」
慌ててフミヤはレイモンドに触れる。
再度樹木化しないようにヴィオラはフミヤと手を繋ぎ、レイモンドはフミヤの肩に手を添えていた。
フミヤが立つ場所を中心に木々が徐々に枯れていく。
「終わったな」
「そろそろ下りましょう」
「アプロバブル使う?」
「い、いや大丈夫だ。俺はこのまま下りる」
「わ、私も大丈夫かな」
「そうだ! メロー」
フミヤ達は、差し出されたメロの手に飛び乗り、ゆっくりと地面に下してもらった。
ジョボネゴッダ母はゆっくりと枯れ朽ちていく。皆はその様子を只々見ていた。
ついにフミヤ達はジョボネゴッダを残らず倒したのである。
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