第282話 LV282 母なる大樹
「これで、最後だな」
「ギョエェェ!」
ブリズエラの氷魔法攻撃が最後のジョボネゴッダ弟を貫いた。
王達が考えは正しかった。少数精鋭に絞った討伐隊の編成が、功を奏し勇者達は一人の犠牲者なくジョボネゴッダを駆逐した。もしここに、他の兵士が参加していれば間違いなく足手まといとなり何人かの犠牲者が出ていただろう。
正確な数、ジョボネゴッダ兄1匹、ジョボネゴッダ67匹。その敵を、勇者達はものの30分足らずで駆逐したのだった。
「ねぇ、これで終わり? これが厄災だったの?」
イルイルは呆気なすぎる状況に疑問を持つ。
「過去の勇者はよほど弱かったのか……」
レイモンドも解せない様子である。
「ねえ、あそこの木動かなかった?」
シキートが中央に聳えたつ大樹を指差した。
「まさかね……」
フミヤは木を見上げる。
「ドクン」
「ドクン」
そのまさかだった。
「これは心臓の音?」
「あれは、人の顔……だよな」
ライガの『遠視』が、50m程の上空にある木の先端の異物を捉える。
木の先端付近から浮き出た物は、人の顔に近かった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
聞いた事のない悍ましい叫び声と共に、勇者達周辺の地面が隆起していく。
「なんだなんだー」
「離れるぞ!」
皆は一斉に中央の大樹から距離を取る。隆起した地面からは大量の根が突き出し何層にも重なっていく。重なり合った木はやがて二本の足を形成し、聳え立つ大樹
*ジョボネゴッダ母が現れた。
ジョボネゴッダを生み出していたのは、この大樹であった。
「これは倒すのに骨が折れそうじゃのう」
「こんなんどうやって倒すのよ」
トーレムグレイグ勢は一旦集まり、巨大なジョボネゴッダの動向を窺う。離れた所でもまた、ゴータスフール勢が集まり様子を見ていた。
「私、行ってくる!」
「無茶だヴィオラ! 俺達は飛べないし、あの木々を登って行こうにも樹木化してしまうぞ」
ダンがヴィオラを引き留める。
「あいつが立ち上がるぞ! 気を付けろ」
ライガが注意を促す。
「姉さん、俺が行ってきます」
「ブリズエラ……」
「ちょっと待って!」
今度はフミヤがブリズエラを引き留めると、背負っていたリュックを地面に下す。そして、そのまましゃがんみ込みリュックのチャックを開けた。
「モキューーン」
「メロ!」
「連れて来てたの?」
「うん」
そして、フミヤは考える。
(自分は樹木化しない)
(メロは樹木化する)
(樹木化は自分が触れば解除できる)
(💡)
*フミヤは閃いた。
「メロ! 行くぞ」
「モキュ」
メロはフミヤの意を汲み、スキル『伸縮自在』を使用。体を巨大化させていく。
「よし、俺を口に入れてくれ」
「モキュ」
メロは一旦フミヤを口に入れ、さらに巨大化していく。メロの体はぐんぐんと伸びていき、ついに巨木と同等のサイズに並んだ。フミヤは、巨大化したメロの口からひょっこりと顔だけを出す。
「合体! フミヤメロだ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ジョボネゴッダ母はフミヤメロを敵として認識した。
フミヤメロとジョボネゴッダ母の巨人対決が始まった。
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