第281話 LV281 世界最強の実力

  ジョボネゴッダ兄との戦闘が始まった。迎え撃つはヴィオラ。


 ジョボネゴッダ兄は弟より格段に強かった。同様に気配がなく、スピードは弟の五倍。さらに、木でできた自身の体を自由自在に伸ばし遠距離から襲ってくる。フミヤとイレイザはヴィオラの邪魔だけはしないように離れた位置から様子をうかがっていた。


 ジョボネゴッダ兄は確かに強い。『樹木化』の特殊能力を除いても魔人筆頭クラスであるのは間違いないであろう。しかし、ヴィオラの強さはさらにその上をいく。


 ジョボネゴッダ兄による変幻自在の無数な攻撃を、顔色ひとつ変えず躱しては切る。ジョボネゴッダ兄の表情は読み取りにくいが、フミヤ達にはなんとなく焦っているように見える。


 ジョボネゴッダ兄は、自身の射程距離を維持しながらヴィオラとの距離を保っていた。「近付かれればやられる」と、本能的に察していたからだ。だが、ヴィオラはお構いなしに距離を詰めていき、相手との距離が3m程に詰まったところで魔法を唱える。


「ライトニング!」

「ライトニング!」

「ライトニング!」


 間髪入れず打ち込んだ三発の雷が、ジョボネゴッダ兄の動きを止めた。完全に棒立ちになったジョボネゴッダ兄を、ヴィオラが追撃する。


「エアースレイブ」


 ヴィオラの繰り出した真空波で、ジョボネゴッダ兄の胴は真っ二つに切断された。慌てたジョボネゴッダ兄は、分断された体から木の枝張り巡らせ再生を試みる。――が、フミヤの神スキルにより火属性が付与された攻撃に当てられ、うまく再生が行えない。


 当然ヴィオラはその隙を逃さない。エアースレイブにより吹き飛ばされ宙に舞う上半身と下半身に、詰め寄ったヴィオラが剣技を繰り出す。あまりの速さゆえ、フミヤとイレイザの目には「ヴィオラが近づいた瞬間に塵となった」と、いうふうにしか見えなかった。


「何回切った? 80は切っただろ?」

 近くでジョボネゴッダ弟と戦うライガが、ヴィオラとすれ違いざまに尋ねる。


「――143回」


「さすがだな。途中までは数えられたんだけどな」


「戦いながら、それだけ数えられたら十分でしょ」


 *フミヤの口をあんぐりとさせている。

 *イレイザは口をあんぐりとさせている。


 そして、フミヤは正気に戻る。


「ああーそうだ、イレイザ! 俺達も倒さないと……」


「…………」


「――って木になってるんかーい!」


 *イレイザは『樹木化』している。


「なんでコイツが木になってんだよ」


「あっ!」


 イレイザの背中からひょこっりとジョボネゴッダ弟が顔を覗かせている。


「マジかよ」 


 二人はヴィオラの戦いに気を取られるあまり、忍び寄るジョボネゴッダ弟に気付けなかったのだ。


「コイツ、すぐ木になるな」


 *フミヤの攻撃。

 *ジョボネゴッダ弟は84のダメージを受けた。

 *ジョボネゴッダ弟は枯れていく。

 *フミヤはジョボネゴッダ弟を倒した。


 その後、イレイザはフミヤにより元の体に戻され、少し嫌味を言われた。

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