第279話 LV279 フミヤ不敵に笑う
「みんなどうする? 突入するか、それとも他の奴らを待つか……」
レイモンドは岩陰に隠れ、湖の中央付近を見ていた。
「トリニスタントの連中もドレンもいないんだよね」
「うお!」
「どこから湧いて来たんだよ」
レイモンドは前方に集中するあまり背後にいたフミヤに気付いていなかった。トーレムグレイグ勢は、レイモンド達と合流したのだ。
「今、『ビクッ』てしただろ? 勇者なのに情けない」
「おまえには、言われたくない」
フミヤとレイモンドは相変わらず反りが合わない様子だ。
「お前はどう思う?」
レイモンドはヴィオラに尋ねる。
「このまま待っていても仕方ないけど、私達の中で火属性を使える仲間は二人だけ……厳しいね」
何か良い作戦がないかと考え沈黙する一同。その中で、フミヤが不敵に笑い出す。
「フフフ、ようやく特訓の成果が見せられる」
「何か方法があるの?」
「そこのリレンザ君、こっちに来てもらえるかな?」
「イレイザだ!」
イレイザは身を屈めながら、フミヤの傍へ移動する。
「炎の剣だしてよ」
「何故お前は、いちいち偉そうなんだ」
*イレイザはイラっとした。
「いいからいいから」
イレイザは不機嫌そうに剣に炎を宿す。
「何かあるなら早くしろ! 奴らに気付かれるぞ」
「はいはーい」
フミヤは立ち上がり、両手をだらんとし目を閉じる。ほどなくして、フミヤの両手がぼんやりと光りだした。
フミヤはその光る右手で轟々と燃えるイレイザの剣を握る。
「何するんだ、手が焼け落ちるぞ!」
「いいからいいから」
淡い光がフミヤを守り、炎に包まれる手は一切の火傷も負ってはいなかった。
さらにフミヤは、右手で燃える剣を掴んだまま、もう一方の手で皆が入れるほどの大きな光の円を頭上に描く。
「みんな、早くこの下へ」
一同は言われるがまま、光の円の下へと密集する。
「相対する絆」
*フミヤは神スキルを『相対する絆Lv3』を発動した。
光の雨が皆に降り注ぐ。
「なにこれ? 何も感じないんだけど……」
イルイルはがフミヤに問いかけた。
「このスキルは、一定時間一属性だけ共有できるスキルなんだ」
「今、全員が火属性を持ってるって事かのう?」
「でも、私は回復防御系魔法しか使えないし、ラオ老とイレイザさん以外は火属性攻撃や魔法を習得していないですよ」
ラオ老とファリスもいまいちスキルについて理解できていない。
本来、個人それぞれに合った属性という物が存在する。ヴィオラは雷、レイモンドは土、ファリスは光といった具合である。ただ、属性があるからと言ってすぐに
魔法などが使える訳ではなく、技や魔法を出すにはそれなりの修練がひつようである。
すると、フミヤは首を振り答える。
「火属性を使う必要はないよ。今までの攻撃に勝手に属性付与するだけだから……」
「――という事は、俺が『アースロックスレイブ』を使えば、火土属性の攻撃魔法になる訳か」
「そうそう、レモンの言う通り」
「レイモンドだ」
「フミヤ、すごい……」
「じゃあ、遠慮なくアイツらを倒すか」
ライガは早く戦いたくて居ても立ってもいられない。
「でも、気を付けろよ。触ると樹枝化するぞ!」
「わかってるってよ」
「みんな行くぞ!」
「おお」
いざ、湖中央へ。
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