イツカノ約束

panda de pon

第1話いつか

今、 約束の場所に向かっています。

早く会いたい気持ちではやる足取り。私は君に会えるだろうか?


 君に初めて逢ったのは、七年前のクリスマスの夜。あの頃私はなんとか日々を過ごしていた。夫の浮気、息子の反抗期、祖母の世話、何処を見ても問題しか見えなかった。心休まる時間なんて無かった。。。クリスマスに夫は上司と飲み会。本当に?多分浮気相手とデートだろう。息子は最近友達の家に入り浸っている。

心は乾き、どんどんマイナス思考になっていく。

 あの日もいつものように、夕飯を届けに祖母の家に通っていた。薄暗い中で一人自転車をこいで急ぐ私は、段差で転けてしまった。その辺に散らばったタッパ、「急がないと。」暮れかかった中、呟きながら集めた。いざ自転車をこぎだそうとした時、足に痛みが足に走った。急に情けなさが私を襲って、その場でしゃがみこんでしまった。大粒の涙が溢れた。

 その時「大丈夫ですか?」少し、迷ったような声が聞こえた。一瞬顔を上げると背の高い優しそうな青年が立っていた。

 彼は手を差し伸べてくれた。「立てますか?」私は慌て俯いた。泣き顔を見られたくなくて、「大丈夫なので、行って下さい。ありがとうございます。」そう言った。

 すると、少し間が空いて何かゴソゴソと音がした。そして急に目の前に絆創膏が差し出された。彼は「どうぞ」と言った。

 ビックリして、思わず顔を上げると彼は、「やっと顔を上げましたね」とはにかんだ笑顔で言った。

 私はその少しはにかんだ笑顔に、心に小さく陽が射むのを感じた。「ありがとう」よく見るとまだ20代半だろうか、屈託の無い笑顔だった。久し振りに心が晴れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る