第10章 エルフの王と旅支度

10-1 妄言


「無事か!?」


 《三次元空間創造クリエイト・スリー・ディメンション》の黒い姿見が現れて間もなく、インが血相を変えてやってきた。


「大丈夫。さすがに少し疲れたけど……」


 立ち上がろうかと思ったがインが滑り込むように座ってきたので、体を起こすのに留めた。


 そうしてインはずいぶん険しい顔で俺の体を隅から隅まで眺めていった。

 舐めるようにというほどではないが、とにかく必死だった。視線はせわしなく動かしていたし、まったく落ち着きがなかった。


 俺の体にいったい何があるのか。そう深刻に勘ぐってしまう挙動だが、いかんせん……


 疲れた。身も心も。

 何もやる気が起きない俺は呆けたようにインの忙しない動きを眺めるばかりだった。


 竜巻の中でやられていた腹や肩に気がいく。だが、痛みはもうないし、外傷もとくにない。精神異常もたぶん……ない。


 “診断”は2,3分だった。

 インは息をついたかと思うと、周囲に視線をやった。


「……ネロ」


 インの止まった視線の先には大量の葉枝に囲われ――というより半ば植物と一体化して眠っている少年姿のネロがいる。

 相変わらず精霊たちはネロの周りを戯れるように飛び交いながら、ネロに入り込んでは出てきたりしている。


 俺たちのいる場所は盛大に陥没している。巨竜の形の溝をつくって。

 その先には低い崖、いや、ここが窪地だ。ここは“クレーターの内部”であり、クレーターができた原因は俺だ。


「ネロは何か言ってたか?」


 インがネロから視線を戻さないままに訊ねてくる。何か言ってたか?


「色々言ってたよ。よく分からなかったけど」


 インは俺に視線を戻して「色々とは具体的になんだ」と訊ねた。さきほどの心配っぷりとは裏腹に語気は竜モード風で、圧と冷淡さがあった。

 俺はネロが言っていたことをそのまま伝えるべきかどうか逡巡した。が、すぐに決断した。会話はどうやら聞こえているわけではないようだが、俺たちのこれまでの行動は七竜たちに筒抜けのようだし、はぐらかしたところで果たして意味があるのか分からなかったからだ。


「俺を霊樹にするとか、俺の教師になるとか」

「……教師か」


 インは俺の解答にそれほど驚く素振りは見せなかった。詰問する雰囲気はなくなっていたが。

 ひとまず勝敗やネロが負けたというこの状況については二の次らしい。


 しばらく間があった。インはその間、視線を落として考え込んだ様子で、動きらしい動きを見せなかった。


 インが何を考えているのかは知らないが……どうであれ俺は、インが今までと同じく俺の側にいて、味方であり続けることを願った。

 ここには俺の願望も多分に含まれている。ネロが殺そうとしてきた手前どうにも不安だったが、インが敵になることは正直なところ考えづらくはあった。


 この常に俺の母親であろうとしてきたインがいまさら俺の敵側にまわるだなんてことほど信じられないこともない。

 母とは早くに死別し、義母ともうまくいってなかった俺に母親を語らせるほど信頼のないこともなかなかないと思うが、俺も30年生きてきた男だ。程度は分からないが、“人を見る目”はそれなりにあるつもりでいる。インの母親にこだわる気持ちは半端ではない。こだわるというのもおかしな表現だ。母親そのものと言っていい。


 だが、インにも七竜という何物にも代えがたい責務がある。母親業よりは七竜の責務かもしれない。

 「霊樹にする」なんて問題発言も出たことだ。七竜の長になれと打診してきたのは七竜側だが、すべてが宣告した通りに進むとは限らないかもしれない――


「――教師にはなるだろうの。霊樹にするのは奴の妄言だ。ちと役者が過ぎたようだがの」


 そうしてインは続く言葉を紡いだ。

 ……は? 妄言? 妄想の? ……それだけ?


「……妄言ってどういうこと?」

「妄言は妄言だぞ。お主が奴との戦いに身が入るようにの」


 インは淀みなくそう語った。とくに嘘を言っているようには見えない。

 戦いに身が入るようにって……つまりあれか? マンガとかであるその気にさせるための演技とか、ああいうのか? そんな……そんな簡単な話なのか?


「……なんでそんなこと。俺が戦いに身が入るようにって」

「我々の関与しない、人の里で人の子として生まれたのならそのままでもよかったかもしれんが。我々と共に在り、長になったのなら、お主の“人の好さ”はどうにかせねばならん。母として見ている分には一向に構わんのだがの。だが、そういうわけにもいかん」


 インは俺から視線を逸らしたかと思うと、そう語った。少しばつが悪そうだった。


 ……人の好さ? みんな逞しく生きているし、俺、つまり、お人好しの代表格でもある現代日本人がおよそこのアナログもアナログの中世ヨーロッパ的な世界の住人として適してないのは分かるが……。

 いったいどういう尺度の話だ? どうにかできるもんなのか? だいたいどうにかして、その後はどうするんだ?


「ここにはな。お主が無闇やたらに力を振るわぬよう、力の制御力を養う意味が多分にある。友を殺され、怒り、敵を蹴散らすくらいなら構わんのだが……復讐心の果てが暴走と都市の破壊とあっては八竜の長として由々しき事態だ。まだ八竜のことは世に布告はしとらんがの」


 ああ、メンタルダウンを防げと? 都市の破壊も俺への評価はともかく、七竜の面目はないだろうな。


 インが「分かるか?」といくらか声音を緩め、諭すように聞いてくるので一応頷く。納得はしていない。無性になにか蹴り飛ばしたい。


「……ようは精神的にタフになれってこと?」

「そうだの。……己の力の制御の術を知らぬ者はいずれ身の破滅を招くものだ。分別もな。もしお主に分別がなければ、分別のない愚かな男であるなら、今頃1つや2つ大事が起きておるかもしれん。制御の術は己の知り得る事象にのみ働き、知り得ない事象に関してはその者の精神力の如何に強く左右される。……その身に宿ったのがお主でよかったと私は思うぞ。異なる世界にやってきてしまった身の上には同情もするが、これまでに何1つ大事にならなかったのはひとえにお主の分別の成果だからの」


 そう言うとインは俺を胸に抱いて、たしなめるように背中を軽く叩いた。


 確かに俺の外見のままの子供が宿っていたら何かしら事件が起きていそうではあるが……なんかずいぶん心配かけていたらしい。

 というより、ネロとの戦いを見て認識を改めたというべきか? 俺的にはもう結構色々と“やっちまった感”はあるんだけど。


 ざわついていた精神が落ち着いてくる。インも離れた。


「ところでネロは他に何か言っておったか?」


 他か。ユリウスというワードがよぎる。


「ユリウスとか言ってたよ。様付けだったけど上司かなにか?」


 インはユリウス様か、と視線を落とした。だが、すぐに視線は俺と合わさる。銀色の瞳が一瞬、虹色の輝きを秘めて揺らめいた。


「我々の創造主だ。我々七竜の協定をお創りになった方でもある」


 創造主。上司ではなくそっちだったか。

 そうだよな、七竜のさらに上の権力者なんてこの世界には存在しない。


「ネロが言うにはユリウス様は俺のことを気にしている風だったけど」

「何と言っていたのだ?」


 眠る前のネロの言葉を軽く思い返し、物々しい文面の1つをチョイスした。


「……狂気と、この世の狂気と闇に食われるって」


 インは目線を下げて間違ってはおらん、とこぼした。


「ユリウス様は稀に我々に助言をくださるのだが、先日のお言葉では突然現れたダイチのことにも触れていてな。善人であり、ホムンクルスの影響で精神退行もあるため精神崩壊の恐れもじゅうぶんあるとして、頼りがいのある身内として接するといいと仰ったのだ」


 ずいぶん親身な創造主だが……善人ね。この世界に来てからなんのかんのと色々と言われてきたが、これもあまり言われたくない言葉だ。


 精神崩壊に関しては納得できる。殺人ないし魔物の殺害を実際に見るのと殺害の経験が、その辺はまったく素人同然の現代人の精神に何も及ぼさないわけもない。

 うつ病がそうであるように――ネットでもそういう相手は見つけられるだろうけど――治療に身内や友人の存在は重要だ。延々と内々で哲学や自己啓発をできるのならともかく。俺の復讐にはやる心もインやアレクサンドラによって引き止められたものだった。


 それにしてもユリウス様は俺のことも知ってるらしい。「どこまで」「何を」知っているんだろうか。俺に理解があるようだが、なぜだ?


「ユリウス様は俺のことをどこまで知ってるんだ?」

「分からんよ。私らはユリウス様と言葉を交わすわけではないからの。魔人の出現時や大陸に危機が及ぶ時などの一大事の時に、ご助言をいただけるのみだ。稀にこちらからご助言をもらう時もあるがの」


 一大事か。


「ふうん。紙か何かで指示を?」

「石板だな」


 そう答えたインにはなにか不服そうな感情はとくに見られなかった。

 石版か。雰囲気あるな。


 ……ん。インは視認できないようだが、創造主なら俺のゲームウインドウについても何か知ってたりしないか? もしくはこれらのゲーム的な現象――転生のことについてでもいい。


「俺ってユリウス様と話せるようになる?」


 インは「どうだろうの」と眉間を狭く、視線落としながら腕を組んだ。


「我々とてユリウス様のお声は聞いたことがないからの」

「ないんだ」


 だが、お主は話せるかもしれんなと、インは顔を上げる。


「お主の登場と氷竜の君臨はバルフサにとって紛れもなく大変革だからの。七竜が一体増えるのだし当然ではあるが、ユリウス様が個人名を挙げ、しかも気にかけるよう仰ったことなど、私の知る限りでは初のことだ」


 七竜とはコンタクトを取っているし、新たなリーダーになったのなら気にもかけるだろう。

 にしても創造主とコンタクトか。話したらいよいよそれっぽい仕事内容になりそうで嫌だな……。お飾り天皇でいい。


 眠っているネロが視野に入る。ユリウス様や氷竜職への億劫さを紛らわしがてらに俺は訊ねた。


「そういえばネロは大丈夫なの?」


 インもネロに視線を寄せた。


「寝ておるだけだからの。明日には動けるようになる」


 明日か。フリドランを案内するって言ってたな。


 次いで、『きみが望まないならここですべて終わりにしてもいいよ。私たちとの関係も私たちがきみに強いた契約も、すべて』というネロの言葉が脳裏に蘇った。


 俺と七竜たちの関係が終われば俺がどうなるか。


 ディアラやヘルミラは俺の傍にいるだろう。だがインはいなくなるかもしれない。

 七竜たちは俺になにか仕掛けるだろうか? ないとは言い切れない。でもフルやルオが敵になるとは正直……考えづらいのは人がいいのだろうか。治療までしたのに?


「ネロは他になにか言ってたか?」


 インの質問に我に返る。少し考えて答えた。関係を終わりにしてもいい云々の発言は触れないことにした。


「明日フリドランを案内できるくらいに回復するって。ネロから案内されるの? 俺」

「まあ、約束はしておったからの。首都のビテシルヴィアの方でもお主を迎える準備は終えとるはずだ」


 迎える準備か……。俺はあんまり気が進まないんだけどな。謝られたりもしてないし。まあ、俺もやり返しはしたけども。なんかネロに踊らされてるようで納得いかない。

 なんにせよ、御大層な歓迎じゃないといいな。ルートナデルの時のように、密やかに控えめにがいいよ。


 と、そんなところで消えてなかった黒い姿見からゾフが顔を出してきた。


「……ご無事のようで、……よかったです」

「さすがに少し疲れたけどね」


 ゾフが姿見から出てきて、角+目隠し+ゴスロリの奇抜な容姿を披露してくる。


「もう少し疲弊しているかと……思っていました」


 ということは戦いを“見ている”わけではなかったか。


「疲れてるよ? 色々振り回されたし。今日はもう帰って寝たいよ」


 激闘の戦いの後の疲労とするにはまったく説得力はないだろうが、一日中営業で歩き回り、喋り散らしもした日の肉体的疲労と似た疲労が俺の体にはある。治療の前だったらもうとっくに眠っていることだろう。……いや、でも、ジル戦後はなんか起きれてたな。


 インが、「ネロは搦め手が得意な奴だからの」とコメント。

 散々な目にあった後だと、搦手と一言で終わらせないでほしいとつくづく思う。


「夢で昔のことを思い出したり、竜巻で飛ばされたり、やる気をなくされたり。散々な目にあったよ。なんか合間ではアルヴィルたちと踊ったけど」

「踊る?? そんなことをしておったのか」


 呆れたようにインがそう言うと、「ネロさんは……戦いを楽しんでいたようですね」とゾフ。

 ゾフは相変わらずのたのたした、内気なやつにしか見えない口調だが、言いようはごく淡々としている。


「そうだね。前半は俺の戦いに感激してたよ。インが観戦して喜んでるみたいに」

「奴と私を一緒にするでない」


 インがむっとして反論してくる。だが説得力は正直ない。


「……疲れておるようだし。帰るとするか」


 改めて俺に疲れの要素を発見したのか、一転して気勢を消してインが見てくるので「帰ろう」と俺は同意しつつ、ネロのことはそのままでいいのかと訊ねた。たぶんそのままでいいんだろうなと思いつつ。


「この森にいる限りは奴は不死と言ってもよい。さすがに魔力を使い切り、肉体が負傷し体力もなくなればあのように眠りこけねばならんくなるがの」


 不死か。森の主然としていたしな。


 《三次元空間創造》の廊下を渡っている間、インが死を告げる包囲レクイエムバードの対処について訊ねてきたので、始原魔法の聖火をミニサイズで出した。


「この聖火? がやっつけてくれたよ」


 インは盛大に眉をしかめ、軽く変顔になった。そうしてやがてため息。


「いつものことではあるが。少し奴のことを同情してしまうの。なあ、ゾフ?」


 ゾフはインとは違い、軽く考える素振りは見せてはいたもののなにかそれらしい感情の変化の片鱗は見せないままに――目元の方は分からないんだが――聖火に視線を寄せた。


「……死を告げる包囲は、638年の間、……ネロさんや精霊たちが……魔力を蓄え、構築し続けた、……設置型の大魔法です。……理論上では、魔人がたとえ……私たち七竜よりレベルが高く、……レベル150を超えるようなことがあっても……対処ができるとされる、……レベルダウン魔法の……究極的な完成形です」

「ネロも言ってたよ。ジルによくからかわれてきたとも言ってた」


 次いで、638年ものを壊してしまって申し訳ない気持ちがにわかに湧き起こる。

 申し訳ないも何も、俺はレベルダウンのせいで散々な目にあったんだが……。


「なんか悪いことしちゃったかな。そんなに長年魔力を注いできたものを壊して」


 そう一応取り繕った言葉を並べていると、2人はネロが俺の実力を引き出すべく演技をするのを知っていたであろう事実に思い至る。

 インはネロから念話が来た時、テンションが低いというか不機嫌そうに見えたものだった。ネロの方も、破壊されることは念頭にあっただろう。


 インが肩で息をついたのが目に入る。


「一度構築し終えていますし、……陣を破壊したわけではないので、……また媒介を作成し、魔力を注げば……使えるようになりますよ」


 媒介ってのは鳥か。それならまあ、安心かな。


「200年くらいかの?」

「完全に元通りにするとなると、……220年ほどかかるのでは……ないでしょうか」

「そうか」


 安心でもないな。220年ね。


「まあ別にあそこまでの強力なレベルダウンはいらんのだが。だいたいレベル150以上の魔人などかつて現れたことなどないしの。あやつは意外と心配性な面がある。凝り性とでも言うべきか?」

「そうですね」


 廊下を渡り終えて、金櫛荘の部屋に着いた。


「インはネロが手合わせで演技をするって知らされてたの?」


 改めてそう訊ねるとインは視線を落として、「すまんかったの」と謝罪した。

 一応ゾフもそうかと訊ねてみれば、はいと頷かれる。少し間があったが、ゾフもすみませんと謝罪。こちらにはさほど謝意はない。まあゾフを怒るつもりはない。


 俺はベッドに座って、ため息が出たままに軽くうなだれた。すらすらと出てくる愚痴。


「……しばらくレベルダウンに気付かなくてさ。ひどい目にあったよ。戦闘がいつもよりうまくいかなかった。最初はそんなに違和感なかったんだけど……さっきも言ったけど、竜巻で打ち上げられて風魔法をぼこぼこくらってさ。竜巻を破ったあとは上空からひいひい言いながら降りて、幻を見せられて拘束されて、」

「《春の祭典ライト・オブ・スプリング》か」

「そうでしょうね」


 俺も同意する。


「聖火でなんとか拘束してきた木とかは燃やしたけど、今度はブレスをくらってさ」

「奴のブレスは攻撃力は皆無だが、あらゆる生けとし者の生きる力を枯れさせるからの。ブレスも防いだのか?」


 生きる力ね。


「たぶん。拘束されてる間も守ってくれてたよ」

「で、死を告げる包囲を破壊したわけか。……その聖火という名はネロが名付けたのか?」

「いや、なんとかの聖火ってネロが言ってたから仮にそう呼んでるだけ」


 ゾフがアドラヌスの聖火ですかと訊ねてきたので頷く。


「アドラヌスの聖火か」

「ダイチさん。……聖火を見せてもらってもいいですか?」


 言われたままに俺は聖火を出した。

 聖火は相変わらず、“燃えている赤い宝石”だった。


「先日の始原魔鉱か。内包している魔力量と濃度がずいぶん増しておるな。ダイチがもう1人いるかのようだ」


 俺がもう一人。


「はい。……ネロさんの攻撃を……受け付けなかったのも、……頷けます」


 インとゾフ曰く、アドラヌスの聖火は昔に火の始原魔法の守り手だったアドラヌスという魔導士が王族や要人たちを守るために設置した「守護の炎」らしい。

 火、水、風、土の4属性の守護魔導士がいたらしいが、アドラヌスは城内警備や支援の方面で主に活躍していたとのこと。


 延命治療に赴く前に話をしていた、昔は高位魔素マナからでしか魔法がつくれず、そのために高位魔素が盗まれていたという時代の話だ。


「……かつて守護魔導士たちには我々に迫る力があったというが。この炎を見ていると、頷けてしまうな」

「……はい。……ダイチさんの方が、……力があると思いますけど」


 インがそうだの、と同意した。そんなに強かったのか。


「レベルいくつくらいだったの?」

「さあの。ゾフが言うには90はあったそうだが」


 たっか。カラの守護者並みだ。


「あくまでも推定レベルです。……当時は今よりも、……レベルの上がりやすい……環境だったとされていますから」

「そうなの?」

「はい。……魔素が今よりもずいぶん多かったので。……とくに魔導士たちは上がりやすかったと」

「濃度も濃かったしの。有り余るほどの濃度の濃い魔素によって、魔導士たちは強力な魔法を使いやすかったのだ。魔素を取り込み、操り、魔法として使えるよう変質させるのはもっともよく知られている魔導士の才能の1つだが、当時はそのような才はさほどいらんかっただろうの。魔素が魔法との親和性が今よりも高く、柔軟性もあった。変質もそれほど難儀ではなかっただろうからな」


 ふうん。


「で、強い敵を倒しやすかったと」

「敵も強かったろうがな。魔物にせよ、魔人にせよ。奴らにしても強力な魔素を取り込んでおるからの」


 なるほどね。魔法原始時代って感じか。

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