続きは午後で

Wkumo

突然の告白

「お前が好きだったんだ」

「それは嘘?」

「どうだろう、わからない」

「わからないことは言わない方がいいよ、軋轢を生む」

 軋轢を生む、なんて言いながらも目の前の同級生はにこにこと笑っていて。

「そんなこと言われても、今日エイプリルフールだし」

 謎の言い訳をしてしまう俺。

「……ふ」

 同級生がまた、笑う。

「君が僕のことを好きだって? ちゃんちゃらおかしいね」

「な、なんてことを言うんだ。本当に好きだった場合俺に失礼だと思わないのか」

「いやあ? だって嘘だもん、知ってるよ」

「嘘じゃなかったらどうするんだよ」

「そういう風に強調するところがもう嘘っぽいんだよ」

「えー……」

 俺は言葉に詰まる。

 困った。

 ……何に?

 そもそも俺はどうしてこんなことを言い出したのだろう。

 こいつのことが好きだなんて。

 ……わからなくなったのは数日前からだった。

 こいつのことが好きなのか? 嫌いなのか? どうでもいいのか?

 なんとなく一緒にいる相手だった。

 クラスの余り物。

 行くところがないから一緒にいた。

 別に卑屈な気持ちは持ってない、便利だな、とは思っていたが。

 だが便利だけで付き合うには少々、危うい相手だとも思う。

 こいつはよく俺のことを試すようなことを言うのだ。

 と言ってもそこまで危険なことじゃない。

 この世から議論は無くなった方がいいと思う? とか、君はあいつのことが嫌いなのかい? とか、本当に些細なこと。些細だが、相手によっては気を悪くするようなことだ。

 俺は別に、何を言われたってよかった。

 何かを言われて答えるのは楽しいし、それで話が発展していくのも面白い。

 こいつが俺を試していたとしても、試し議論に「不合格」が重なっていたとしても、別にどうでもいいし。

 一緒にいられれば、それで。

 ――その辺りで気付いたのだった。

 ひょっとして俺はこいつと一緒にいたいのか? ということに。

「僕の話聞いてる?」

「あ、ああ、いや、聞いてない」

「自分から言い出した癖に聞く気がないとはひどいねえ」

「え、ごめん」

「何を気にしてるの?」

「何を気にしてるって……」

 そりゃ一つしかないだろう。

 俺が、こいつを、好きなのかって。

「そもそも好き『だった』って何さ、『だった』って。今は好きじゃないみたいじゃないか」

「あ、ああすまん」

「そういうのは普通『好きです』じゃないのかい」

「え、あ、そうだな」

「やり直し」

「やり直し? 嘘なのにか?」

「嘘だからこそだよ。こういうのは拘りが大事なんだよ。プロは嘘を吐くときですら本気を出すんだよ」

「嘘に本気出したくないんだが」

「じゃあ嘘じゃないってことでもいいよ」

「やり直せばいいんだな?」

 同級生は頷く。

「……俺はお前が好きだ」

「……、」

 同級生は一瞬大きく目を見開く。

 そして、沈黙。

「どうだった?」

「……いや、驚いたよ」

「何に驚いたんだ」

「嘘じゃないことは午後になってから言えって言われなかった?」

「な、お前、何考えてるんだ」

「いやあ……エイプリルフールに告白なんて」

「違うぞ、違うから」

「何が違うの?」

「わからないんだよ俺は本当のことが……」

「ゆっくり解き明かしていけばいいじゃないか」

「そういう問題じゃない、わからないとしっくりこないんだよ」

「わからないって、真実は一つしかないじゃないか」

「何だ」

「君は僕を好きってことだろ」

「はあー?」

「続きは午後で」

「Webでみたいに言うのやめろよ」

「ふふふ……」

 笑う、こいつの表情は今まで見たこともないような顔で。

 ああこいつ今たぶん嬉しいんだな……と思ったのと、なんかたぶんこいつも俺のこと好きだな……と思った、それは午後に明らかになることで、真実どうだったかは伏せておく。

 だって恥ずかしいし。

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