思い出は枯れない

NOTTI

第1話:新たなステージへ

2021年4月。龍也は大手商社の入社式に参加していた。この会社は龍也が以前から入社したいと思っていた第一志望の会社だったこともあり、無事に内定がもらえて、入社することが叶った喜びでまだ胸が高鳴っていた。


 今年はグループ全体で800人が入社し、社長が掲げる“グローバル・フィット企業”という社長が企業理念として掲げている目標の1つであり、この1つの方針に向かって既属社員と共に力を合わせて進んでいくことになる。


 そして、入社式が終わりそれぞれの仮配属の部署に向かっていった。龍也は経営戦略部経営マネジメント課に配属になった。この課は社内で“エリート街道”と言われているほど重要な部署で、この部署から出た社員はほとんどが係長以上の役職についている。そして、もう1つの呼び名が“カンパニーブレイン”という名前だ。これは、会社で作るプロジェクトは全てマネジメント課が最後の組み立てをすることになるのだ。今後は今年度から始まる新プロジェクトを中心に現在進行形のプロジェクトプランを社内のトップとして動かしていくのだ。この話を聞いて彼はかなり恐れ多かった。なぜなら、自分が卒業したのは有名大学ではないし、他の新入社員を見ると有名大学卒業者が多かった。しかし、その人たちは彼の仮配属された部にも課にもいない。彼はこの時、ふと疑問に思ったのだ。なぜなら、これだけ社内でエリートが集まる部でありかであるにもかかわらず、新卒が1名しかいない。有名大学卒業者が1人も所属していないということだ。彼はおもわず身震いをしてしまった。そして、部長と課長が課の社員を集めて食事会をしようと提案をしたのだ。実は経営戦略部のオフィスがあるのは本棟として建っている1号棟ではなく、2号棟の25階から30階まであり、27階に大きな食堂や課別の会議室もあるため、そこで歓迎会などを実施することは十分可能だった。


その日は入社式と課別の顔合わせなどで1日目を終了し、翌日からは全体新入社員研修が始まり、新社会人として一歩を踏み出すことになる。彼は新たなステージで働けることが嬉しくて仕方なかった。


そして、翌日のお昼の時に部長からランチに誘われて一緒に昼食をとった。その際に耳を疑う話を部長から聞いた。それは、“有名大学を出ていてもあなたのような柔軟性の高く、低姿勢な社員はいなかった。だから、私があなたを採りたいと人事部長に嘆願し、実現した。”というのだ。彼は正直この話を聞いてびっくりしてしまった。ただ、この時に彼の中にある諸説が浮上した。それは“学歴では計れない能力が自分の中にあり、その能力を一生懸命に育てたいのではないか?”という彼が一方的に持った感情に対して何かを求められているのではないか?と思ったのだ。


しかし、彼はこの栄光を掴むまでにはたくさんの挫折と屈辱を味わっていた。その経験から立ち直り、大手商社の“カンパニーブレイン”と言われる部署に上り詰める。

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