備忘録詩集Ⅱ

ナカムラサキカオルコ

冷たい夜の底で咲く

水面にのびた枝に ぽむぽむと柔らかい塊のように

花びらが集まって 花が集まって

ゆらゆらゆれて はらはら散らして

ささやきあって 笑い合って

夜道を急ぐひとりひとりを かまうようにかまわぬように

遠目からみたら 霧かもやのように大きい白い影のように

近くへ来たら ひとつひとつはあまりにも小さくて

立ち止まって手を掲げる レンズを向ける

夜の底でもいともたやすく 手のひらに吸い込まれる

捕まえた 捕まえられた夜のさざめき

すべての人に宿る孤独をそっとかすかに 思い出す

小さな薄い靴音を響かせながら 歩き出す


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