40話・カルロスの仕業では?
「なぜですか?」
「許婚であるあなたがいたにもかかわらず他の女と浮気して、それが騙されたとはいえ妊娠させて連れ帰るような男なのに」
「そうですね。ここに年寄りがいれば若気の至りとでも申すようなことでしょうね」
「若気の至りとは。あなたも彼と同じくまだ若いだろうが?」
「肉体年齢はそうですが、精神はそうでもないようです」
なんせ人生やり直していますからとは言えないけれど。アダルハートは私の言葉に怪訝そうに眉根を寄せた。私はふと思い出した。アダルハートにも皇子時代、婚約者がいてその彼女の父親が彼の後見をしてくれていたことを。
「陛下にも許婚がいらっしゃいましたよね? 確か先代皇帝がお決めになったご縁の御方が」
「あれは可哀相なことをした。余が皇位についてこれからと言う時に余の後ろ盾をしてくれていたユカルーン公爵がはやり病で亡くなり、あれも父の死に気落ちして亡くなった」
皇帝は悼むように言った。彼はその婚約者のことを忘れてはいなかった。胸の引き出しにしまい込んでいたようだ。それに対しフォドラが不満に思うようなこともないようで全て受け止めているように見えた。
「フォドラさまはおいくつなのですか?」
フォドラはアダルハートと顔を見合わせる。
「あ。いえ、失礼しました」
主に男性が女性に年齢を聞くなんて失礼とされる。同性の気楽さでつい、聞いてしまったが本人が嫌がるなら止めた方が良さそうだ。そう思って取り消そうとしたら答えが返ってきた。
「34です」
「えっ? 34歳ですか? 全然見えないです」
彼女は20代じゃないの? あのオリティエが21歳と聞いていたし、そんなに年が離れていないと思っていた。
でも噂とはあてにならないものだと言うことはここに来てから良く分かっている。今の皇帝は後宮を持っていなかった。私に与えられたプラダ宮殿は実は元後宮だったと言うのは女官長のロアナから教えられ、アダルハートが皇位に就いてから先代皇帝によって後宮にいた側妃達は皆お暇を出されたと聞いた。
フォドラの事も未婚女性としか伝わってなかったことで20代だと思い込んでいた。
そうだとするとあと思う一つ気がかりな事があったけど、あれも違うのかな?
「あの。陛下?」
「何かな?」
「一年前、私が成人したおりにシュガラフ皇帝から私を妾妃にしたいと書状が届いたことがあったのですがあれは陛下がそう望まれたのですか?」
「一年前? あなたを妾妃に? そのような失礼な申し込みは──」
と、言いながらアダルハートは考え込む姿勢を見せた。やはり彼ではないのだろうか?
「その書状は今、どちらに?」
「ゲルト国に、父のもとにあります」
「……不快にさせて済まなかった」
「あの、皇帝ではなかったのですよね?」
アダルハートが謝罪する脇で黙って話を聞いていたフォドラが言った。
「もしかしたらカルロスさまの仕業では?」
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