花箱 弐

木花咲耶姫がどうして?


さっきまで結界の中にいたのに…。


それよりも…。


「方法って!?」


俺は木花咲耶姫に近付いた。


「この中に封じ込み眠らせる。」


そう言って、手の平に水色の花を咲かせた。


「あの子の呪いは八岐大蛇が死なない限り解けないわ。だけど、わっちの力で呪いを止める。」


「八岐大蛇を滅(めっ)すれば花は助かるのか?」


木花咲耶姫に尋ねると黙って頷いた。


「力を貸してくれ木花咲耶姫。俺に花を掬わせてくれ。」


「その為にわっちは来たのだから。」


そう言って、木花咲耶姫は俺の額に口付けをした。


暖かい風と共に赤札が舞い落ちた。


目を開けると元いた場所に戻っていた。


口の中が鉄の味で広がっている。


「花…、こっちに来い。」


俺は手を広げた。


花は叫びながら俺に向かって来た。


「美月先輩!?」


聖が驚いた顔をしてこっちを見ていた。


ガブッ!!


鋭い牙で俺の肩を噛んで来た。



肩に激痛が走った。


花の鋭い歯がグリグリ音を立てて肩に食い込んで行く。


「っ…。大丈夫、大丈夫だから。」


俺はそう言って花の頭を優しく撫でた。


ポロポロと涙を流して肩を噛んでいる。


「式神血晶"花箱(はなばこ)"」


氷の部屋にある筈のない綺麗な花達が咲き誇り花の体を木花咲耶姫が優しく抱き締めた。


「もうお休み。」


花の体が小さくなり水色の箱の中に収まった。


「聖さん!?大丈夫ッスか!?」


オサムさんが蹲っている聖に近寄った。


「木花咲耶姫。氷の部屋もどうにかしてくれ。」


「わっちに命令するのは其方だけだぞ?まぁ良い。その為にわっちはいるのだから。」


木花咲耶姫が手を大きく振り上げると、暖かい風が

吹き風で氷を溶かし聖の体を枝の付いた花が巻き付いた。


「サンキュー。」


そう言うと、木花咲耶姫は微笑み赤札に戻って居た。


ガクッ。


意識が朦朧とする。


やばいコレは…血を流し過ぎた…。


足に力が入らなくなり地面に崩れ落ちた。




本城蓮 二十四歳


拉致があかない。


いつまでこの状況を繰り返せば良い…。


だいだらぼっちは本気を出さずに時間だけを潰してる。


「蓮兄。このままだと…。」


雛も薄々感じていた様子だ。


ピシピシッ


何だ…?


天上を見てみると空間に歪みが出来ていた。


結果に歪みが?


パリーン!!


結界が解かれ黒い羽がだいだらぼっちに突き刺さる。


「ッ!?な、何だコレは!!」


黒い羽?


バサバサ!!


鴉天狗のお面をした軍団が降りて来た。


「こんな所で時間食ってんなよ紫乃(しの)。」


鴉天狗の頭と思われる人物に言われた。


紫乃…?


僕の事か?


だけど…、何処か引っ掛かる名前だ。


「その顔は思い出して居ない様だな。今のうちに行

くぞ。結界の歪みが出来た今がチャンスだ。」


鴉天狗はそう言って錫杖を掲げた。


黒い羽が集まり僕達の体を浮かせた。


「えっえー!?ちょっと!?だいだらぼっちは!?」


雛が鴉天狗に尋ねた。


「後回しだ。それより桜の元に行くぞ。」


「桜って誰よ!?」


桜?


どうしてその名前を愛おしく感じるのだろう。


僕はそんな事を考えていると鴉天狗が見つめて来た。


「いずれ思い出すだろう。お前達はそう言う運命と言うなの螺旋に立って居るのだからな。桜を助け出す事に集中しろ。」


そうだ…。


まずはお嬢を助けないと。


「待っていて下さい。直ぐに行きます。」


僕達はお嬢の元に向かった。


この後に起こる事を知らないまま。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る