Q.ラブコメは付き合ったらお終いですか? A.終わらせちゃうんですか?
楓原 こうた【書籍6シリーズ発売中】
プロローグ
『先輩、私と付き合ってくださいっ!』
高校二年の夏────俺は女の子に告白をされた。
相手は一学年下の後輩。俺の友達の幼なじみということもあって、学年が違うにもかかわらず接点があった。
かなりの頻度で一緒に遊びに行くし、何だかんだで同じテーブルでご飯を食べたりと、それなりに深い関係だ。
だからこそ、その言葉を否定することはなかった。正直な話をすれば、俺も好きだったから。
こうして、俺はイベント真っ盛りな時期に『告白』というイベントを体験し『彼女』という存在ができたのだ。
これで、俺は俺という物語の中に存在する青春の一ページを彩ることができただろう。
学生時代における彼女という存在は、青春を彩るための貴重なファクターだ。
まず、一人ではなくなるという貴重なアドバンテージ。空虚な毎日を艶やかな時間で埋めてくれるに違いないし、共に過ごす幸福感は何物にも耐え難い時間だろう。
加えて、彼女という存在は自分を認めてくれたからこそ側に寄り添ってくれているため、よき理解者とも言い換えられることが可能である。
理解者という存在は間違いなく己の不安を取り除いてくれる。逆も然り、自分自身が取り除く立場にもなり得るだろう。
学生時代の若者というのは、どう言おうとも人生における『成長期』だ。
苦難、苦悩、幸福、悦───色々なを体験することによって、今後の人生に影響を与える。
ということは、影響を体験していない学生時代の自分は
だが、理解者がいればその衝撃も和らげてくれる。弱音を吐き出させてくれたり、苦悩を受け止めてくれたり、一緒に前へと踏み出してくれたり。
つまり、理解者という存在は今後の人生を豊かにしてくれるための貴重な存在。
……とまぁ、ここまで並べてみたはいいものの、そこまで考えて「彼女がほしい」などと口にする人間はいないだろう。
皆、例外なく「その人のことが好きだから」付き合いたい───そう思っているに違いない。
しかし、貴重な存在であることには代わりないというのは確かだ。
そして、男子なら誰もが思う『欲求』の一つである。
だからこそ、皆は彼女を求めるのだ。昨今創作界隈では学生をメインとした『ラブコメ』が流行っているのは、それが如実に現れているからだろう。
創作は、読者の欲を満たす娯楽の一つだから。
ヒロインに恋を主人公がすることによって共感を覚え、ヒロインの可愛い姿を見て満足し、結ばれることによって達成感を得る。
過程こそ一つの作品によって様々だが、結局は皆ラブコメというジャンルを読む時には『青春』という言葉を楽しむのだ───彼女ができるまでの過程や瞬間を求めているがために。
さて、ここで一つ疑問だ。
Q.では、付き合った後はどうなのだろうか?
これは俺の知っている編集から聞いた話なのだが───
『付き合ってしまえばお終い』
という言葉が、ラブコメ界隈に存在するらしい。
確かに、青春を舞台としたラブコメの中では『付き合うまでの過程』を描いているもの、『付き合うこと』がゴール地点に設置しているものが多く存在する。
何せ、皆はそこを求めているのだから。作者が読者の求めるものを書いているからこそ、そういったものがありふれているのは理解できる。
皆も経験はないだろうか? 片想い中こそ、恋愛おける最も楽しく、幸せに浸れる期間であると。
事実、俺も付き合うまでは楽しかったと思っている。
毎日その子のことを思い浮かべ、少しの行動で喜怒哀楽し、一挙動一挙動に目が動いてしまう。
ご飯に誘われただけで内心天井を突き破るぐらい嬉しいと感じてしまった俺が言うのだから間違いない。
何なら、遊びに出かける際は緊張して眠れなかったほどだ。
俺と同じように読者という存在がその行為に共感しているからこそ、創作ではそこが求められる。
だからこそ『付き合ってしまえばお終い』という言葉が生まれたのだろう。
では、結ばれた俺は果たしてラブコメという中ではゴールを迎えてしまったのだろうか?
もう、俺の中でのラブコメという物語は終わってしまったのだろうか?
つまり───
Q.ラブコメは付き合ったらお終いですか?
そして、この疑問の答えは───
A.何を言ってるんですか、先輩? 付き合ってからが一番のラブコメじゃないですか!
……もしかして、終わらせちゃうんですか?
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