正義の戦争
のか
第1話
「やれっ!やれぇーーー!」
敵の戦闘車がバキュンバキュンと音を立てて迫ってくる。こちらも緊迫した面持ちで、銃を構える。
「3、2、1……!」
ドバババババンッ!!
敵に向かって力強くかつ的確に撃つ。敵が次々に血を流して倒れていった。
お国のために闘う。これが俺の「正義」だ。
そして、敵が鎮まると、俺たちは持ち場へ引き上げた。夜の者と交代し、少しばかり眠りにつく。
目を覚ましたのは、薄暗い朝だった。他の者はまだ寝ていたが、俺は悪い予感がした。
ドクン、ドキュ、ド、ドカ
ドッカーンッ!!!
その大きな轟音に、みんな目を覚ます。
「大変だ!空襲だぞっ!」
ドガ、ドキュドキュ
俺は、仲間の誰よりも最初に爆撃機に近づくために、街をがむしゃらに走っていった。住民たちが逃げる方向に逆流して、肩を色んな人にぶつけながら走る。走りながら銃に弾をこめていると、
「あっ!!!」「うわあっ!!!」
誰かとぶつかってしまい、思わず後ろを振り返ると、小さい男の子が寝そべって転んでいた。そして、その子は泣き出す。
「チッ!」
とても苛々した。早く爆撃機を追わなければならない。だから、その子を無視して先を急いだ。
ドカーンッ!
すると、後ろで爆撃音が聞こえたので、足を止めて慌てて振り向く。
…………俺がさっき走ってきたところが、火の海だった。
頭が真っ白になり、目の前のメラメラ燃える火を呆然と見つめる。今までたくさん、お国のために頑張ってきたボロボロの足が、膝から崩れ落ちた。
同時に、俺の「正義」が叩き壊される音を聞いた。
正義の戦争 のか @LIPLIPYuziroFan
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