ほっとすうぷ

みなはら

第1話 ほっとすうぷ

肌寒い一日が暮れてゆく

私は二人して食べる夕ごはんの支度をしている。



つい、鼻唄が出てしまう。


ごはんを食べたあとは、二人でなにをして遊ぼう?

いつもの遊戯かな?

そんな風に、楽しい気持ちを込めて料理の味付けをする。



うん!好い味っ♪

これならあの人も満足するかな(笑)


ちょっと一息。

スープの鍋の火を落として、食卓の椅子に腰かける。



魚の下ごしらえもできた。

彼が戻ってきてから火に掛けよう。



私はそっと目をつむり、

お米を炊き上げる蒸気の音へと耳を向ける。


穏やかな時間が過ぎてゆく。

ずっと続いたらいいなと思う時間。




でも…、

これは猶予期間なの。




時間や想いや、いろんなもの。

ぜんぶ、手から砂みたいにこぼれてゆくように思うことがある。



私は、


腰掛けていた椅子と対になっている小さく丸いテーブルへと、頭と腕を乗せて、

組んだ腕の間から、私の影が落ちたテーブルの木目をじっとにらむように見る。


テーブルへと身体を預けながらちょっとだけ顔を上げて、

部屋の中の小じんまりした調理場や食器棚を見るともなく眺めて、彼との最初からの出来事へと想いを馳せる。



私の時間、二人して居る時間。

ずっと一緒かもしれない。

でも、明日には唐突に終わるのかもしれない。



あの人はどう決めるのだろう?

どう終えるのだろう…。




やがて部屋の中に、ご飯が炊けた電子音が響いて、ちょっとびっくりする。



そろそろかな?

私は気を取り直して、ご飯の支度を再開する。


スープ鍋を火に掛け、温めながら、

食器を出して付け合わせの野菜などを盛り付け、

魚料理の準備を始める。




先は先、

今は今。


今のこの時間はとても大切♪

どこに着くのかわからなくても、

私は二人の時間を大切にしながら一緒に歩いてゆく。


私の気持ちは変わらないから。



彼が部屋の扉へと鍵を差し込んで開ける音が聞こえた。


私は急いで鍋から温めたスープを移してから、

トレイを手に、私の部屋の扉を開き、彼の部屋へと向かう。




「つかささん、お帰りなさい(笑)」


「寒かったでしょう?

温かいスープが出来てるから!」


そう笑いかけて、マグカップに注いだやさいスープを乗せたトレイを差し出した。



カップを受け取って、美味しそうな顔で飲む彼を少し見つめてから、

私は自分の部屋へときびすを返す。



「休んでいてくださいね。

今、お魚焼きますから!」





私の

私だけの

とても大切な時間




それは彼に作ったやさいスープのように

私のこころもあたたかくする




-終わりと始まり。そして物語は続いてゆく-







-あとがきのようなつぶやきです-


〈 一部私信となるメッセージ分は削りました(^ω^) 〉


この文章はイメージとして、

拙作、らのべ日記第2話の裏側のような感じで書き上げたものなのでした。←3年前の本文を参照せずに、キャラの持つ想いだけで綴ったものなので、季節や印象などがずれてしまっているかも知れません。その点はご容赦くださいませ(^_^;)

※ タイトルは記憶が確かなら、『あるひのこと』か『あるひのできごと』だったように思います。



主人公の名前は当時未決定でしたが、今回応募したネット小説大賞の短編の仮の名に合わせて、つかさとしております。←まだ決めてしまってませんね(苦笑) だいぶキャラたちに受け入れられて馴染んできた印象なんですけど。

ひらがな四文字で読ませる言葉にしたかったというこだわりは、そろそろ捨てる必要があるのかもしれませんね(苦笑)



これは自分が書いていたお話のピースのひとつとなる予定の文章なのですが、

もし読んでいただけた方がいて、ちょっとだけでも楽しんでいただけたのなら、とても嬉しいです("⌒∇⌒")

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ほっとすうぷ みなはら @minahara

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