慧遠1  石虎世代の人

釋慧遠しゃくえおん。俗世での姓は

雁門かんもん樓煩ろうはん県の人だ。


幼い頃から読書を好み、

神童の名をほしいままとしていた。


13 歳の頃、母の兄弟である令狐れいこ氏に従い、

許昌きょしょう洛陽らくようを遊學。若くして学生となり、

六經を知悉するが、特に優れていたのは

莊子そうじ老子ろうしについてだった。


広い器で、威風堂々。

そしてスキッとした爽やかさ。

老学者も、英才たちですら、

慧遠の底知れぬ知識、解釈には

敬服するしかなかった。


21 歳の頃、東晋とうしんに赴きたいと願い出る。

豫章よしょうで高名を馳せた隠者、范宣はんせん

契りを結びたい、と思ったのだ。


しかし折り悪く、石虎せきこが死亡。

にわかに中原に戦乱の嵐が吹き荒れる。

そのため、この段階での

東晋入りは叶わなかった。




釋慧遠,本姓賈氏,雁門樓煩人也。弱而好書,珪璋秀發,年十三,隨舅令狐氏遊學許、洛。故少為諸生,博綜六經,尤善『莊』『老』,性度弘偉,風鑒朗拔,雖宿儒英達,莫不服其深致。年二十一,欲渡江東,就范宣子共契,值石虎已死,中原寇亂,南路阻塞,志不獲從。


釋慧遠、本の姓は賈氏、雁門の樓煩の人なり。弱きに書を好み、珪璋秀發にして、年十三にして舅の令狐氏に隨いて許、洛に遊學す。故に少きに諸生と為り、博く六經を綜じ、尤も『莊』『老』を善くし、性度は弘偉にして風鑒は朗拔、宿儒・英達と雖ど、其の深致に服さざる莫し。年二十一にして、江東に渡らんと欲し、范宣子に就きて共契せど、石虎の已に死し中原の寇亂せるに值い、南路は阻塞され、志に從えるを獲たらず。


(高僧伝6-1_為人)




この時代の僧としては、たぶんクマーラジーヴァよりも知名度上ですよね? 釈慧遠さんです。石虎時代に青春を過ごしてた人だったんですねー。とりあえずこの人のポスト淝水に入るまではどえらく長いんですが、その辺は次話でものすっごく圧縮して語ります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る