劉裕111 禅譲璽書 1 

蓋聞

天生蒸民 樹之以君

帝皇寄世 實公四海

崇替 係於勳德

升降 存乎其人

 朕は斯様に聞いている。

 天が民を生み、彼らを育て導くために

 君主を定めるのだ、と。

 天帝が世にご意志を示されるのは、

 天下を公平にせんがため、と。

 天意の代行者の移り変わりは

 代行者に宿る徳のゆえであり、

 誰が玉座への段を上り下りするかは、

 その資質が決めるのだ、と。


有國必亡 卜年著其數

代謝無常 聖哲握其符

 このため国には必ず興亡があり、

 その期日も亀甲には刻まれている。

 移り変わりは常ならぬものだが、

 そのきっかけを握るのは、

 常に聖人である。


昔在上世 三聖係軌

疇咨四嶽 以弘揖讓

 上古の時代、ぎょうしゅんと禅譲が続いた。  

 この是非を泰山たいざん華山かざん衡山こうざん恆山こうざんにて

 神霊へお伺いを立てたところ、

 王の徳高き謙譲心ある振る舞い、と

 広く認められた。


惟 先王之有作

永 垂範於無窮

 過去の王たちが興された振る舞いは、

 未来永劫の規範とされるべきである。


劉氏致禪 實堯是法

有魏告終 亦憲茲典

 りゅう氏がそう氏に代を譲ったのも、

 曹氏が司馬しば氏に代を譲ったのも、

 堯王がお始めになった、

 この規範に従ったものである。


我世祖 所以

撫歸運 而 順人事

乘利見 而 定天保 者也

 世祖司馬炎しばえん様が天運に従われ、

 人事に則り、天命を請け負われたのも

 また、これらの理由であった。


道不常泰 戎夷亂華

喪我洛食 蹙國江表

仍遘否運 淪沒相因

逮于元興 遂傾宗祀

 しかし、天道とは

 常に平らかなものではない。

 蛮夷が中原を荒らし回り、

 古に都として示された地、

 洛陽を喪い、江南に逼塞してしまった。

 これらの不運が重なり、

 多くの没落要因がない交ぜとなり、

 そしてついに、桓玄かんげんよりの

 簒奪を受けた。




蓋聞天生蒸民,樹之以君,帝皇寄世,實公四海,崇替係於勳德,升降存乎其人。故有國必亡,卜年著其數,代謝無常,聖哲握其符。昔在上世,三聖係軌,疇咨四嶽,以弘揖讓。惟先王之有作,永垂範於無窮。及劉氏致禪,實堯是法,有魏告終,亦憲茲典。我世祖所以撫歸運而順人事,乘利見而定天保者也。而道不常泰,戎夷亂華,喪我洛食,蹙國江表,仍遘否運,淪沒相因。逮于元興,遂傾宗祀。


(宋書2-44_文学)




今日のぼく「また桓玄か」


詔勅、典策文、璽書でそれぞれいちいち話題がリセットされてんのがつらい。


くらすあてねさんより、左伝よりの引用を頂戴しました。「卜年著其數」は鼎の軽重を問う記事(宣公三年)、告終は隱公七年、あと「洛食」は『尚書』洛誥より、とのこと。左伝はどうせいろんなとこに掛かってくんだろって諦めがちなんですが、マジで尚書はこういう所に掛かってくるですね……。

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