第57話 高虎先輩、今日はメイド服持参で登場
「松雪先輩って、噂の文芸部の創設者って人っすよね!? え、お会いできるんすか!? あのガチチアコスを作った人っすよね!? ひゃー!! どうしよう、とりあえず、松雪先輩に脱いでもらっていいっすか!?」
玉木さんとはまだ付き合いが短いけども、断言できる。
この子も大概にアレだな。
コスプレイベントをはしごして、麗しのレイヤーをフレームに収める事に何よりの喜びとする玉木さん。
そんな彼女なので、高虎先輩の持つ衣装制作スキルの高さは既に理解している様子。
もう、出会う前から
「やあやあ! みんなの高虎先輩が来たでござるよ! 今日は新作のコスを」
「はじめまして! 自分、玉木陽菜乃といいます! 松雪先輩のコスプレ衣装はこれまで見てきた中でも一番の逸品っす! 最高っす! はじめまして!!」
「お、おう。そうでござるか。ええと、大晴くん? 説明をプリーズでござる」
高虎先輩がちょっと引いている。
やっぱり玉木さん、相当なくせ者だったか。
仕方がないので、僕が要点だけかいつまんで玉木さんの情報を伝えた。
「ええ!? 大晴くん、身バレしたでござるか!?」
「そこに引っ掛かりましたか。ええ、それはもう見事にバレました。おかげで、文芸部に侵入者を許すという
「シルバー先輩、新入者じゃなくて、新入部員っすよ!」
「玉木さんの思い浮かべているものとは、漢字が違うんだよ。あと、いい加減にシルバー先輩呼びをヤメてくれないと、高虎先輩を追い出すよ?」
「なにゆえ小生が!?」
「すみません、先輩。これが玉木さんには一番効果的なんです」
「来間先輩! もうシルバー先輩とはたまにしか呼ばないので、ご容赦くださいっす!!」
「ほら、ご覧の通りですよ」
それから、30分ほど玉木さんに質問攻めを受けた高虎先輩。
氏があんなに疲れた表情を見せたのは初めてかもしれない。
「いやぁ、これはまた、強烈な女子が増えたでこざるね。ところで、新作を披露しても大丈夫でござるか?」
「それは普通に楽しみなので、お願いします!」
「あ。私も。すごく見たいです」
「あたしは仕方なく見てやるって感じだけど! なに、どんなの!?」
高虎先輩は「ふっふっふ」と含み笑いをして、大きな袋から衣装を取り出した。
「おおお! メイドリームですか!」
「ん? メイド服じゃん?」
夢みるメイドリーム。
少女の夢を食べる夢魔を退治すべく結成された、戦うメイドさんを描いたアニメである。
当初は朝の時間帯に放送されていた女児向けアニメだったが、魅惑の衣装と戦うヒロインが大きなお友達にウケて、この度深夜枠に移動しての第2期が決定した、今最もホットなアニメの1つである。
「牡丹ちゃん。あれはね、メイド服じゃないの。メイドリームって言って、あれを着ないと夢の中に入れないんだよ。それからね、メイド服なのに露出が多くて、可愛いとエロいのちょうど中間地点をぴったり撃ち抜く事によって、メイドリームは人気を博しているんだ。なにが良いってまず、脇。そこから横乳への流れは鉄板。もうね、堪らないの」
小早川さんブーストで、僕の説明する事はなくなった。
「2着持って来たので、希望者は試着してもらっても構わないでござるよ!」
「はい。私、着たいです」
「もー。すぐそうやって、あたしにいやらしい恰好させようとするー。まあ? 松雪が頭を下げるなら着てやらなくもないけど?」
「大晴くん。小生が見ない間に、守沢氏の中の人変わったでござるか?」
「そうなんですよ。よく似た声出すんですけど、どうしても違和感ありますよね」
試着する人間の選定は後にしようということになった。
その前に最高のショーが開催されるからだ。
こういうところが、僕の高虎先輩を尊敬する所以なのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『えっ? ホノカの分のデータがあるんですかぁ!?』
僕は決勝ゴールを決めたサッカー選手のように、絨毯の上をスライディングで滑りながらガッツポーズをした。
同士諸君の歓声も聞こえる。
そうだとも、共に祝おう。この
「ホノカ氏さえ良ければ、着てみてもらえるでござるか? 以前のイベントの際に気付いたのでござるが、ホノカ氏はモデルに向いているのでござる。全身を見られるというのは、衣装を作る上で実に助かるゆえ、よろしければ今後も衣装づくりに協力して欲しいでござるよ!」
『大晴くん、大晴くん!! ど、どうしましょう!?』
「もちろん良いよ。そんなに嬉しそうなホノカに、僕がダメなんて言うはずないじゃないか」
『わぁ! ありがとうございますぅ! 松雪さん、ホノカは可愛いコスをたくさんしたいので、もちろんオッケーです!!』
「おお、それは何より。では、今回のメイドリームの衣装のデータを」
「先輩、パソコンはもう準備できてます」
「相変わらず、ホノカ氏の事となると、音を置き去りにするでござるな。では、このUSBを!」
「合点! ホノカ、データ送信したよ! どう?」
スマホの中のホノカが大きな袋を引っ張って来た。
その仕草だけで死ぬほど可愛い。死んだとしても本望。
『ほわぁ! 可愛いですねぇ! 早速着替えます! ……覗いちゃ、めっ! ですよ?』
「うわぁ。尊いなぁ」
「うん。今のはかなり尊い」
「実に尊いでござるなぁ」
「分かるっす。ホノカ先輩、マジ尊い」
「あんたら、どうしたの!?」
まだ守沢はこのレベルに上がって来れないようだ。
言っておくけど、うちは着いて来れない者は置いて行くから。
そして、ホノカのお召替えが完了。
『じゃじゃん! どうですか? ホノカ的にはとっても可愛いと思うのですが!』
「脇がエロい。すごくエロい。最高だと思う。あと、ホノカちゃんのおっぱい大きいから、横乳の破壊力がヤバい。どうしよう、私、平静を装っているけど、今にも倒れそうなくらい興奮してる。ヤバい、ヤバい。短いスカートもヤバいし、ニーハイソックスのフリルとか、太ももの食い込みとか超ヤバい」
また小早川さんにセリフを奪われた。
ただ、彼女に同調すところ大であるため、否定や訂正は必要とされなかった。
「高虎先輩。やっぱりあなたは天才だ」
「おっす! 自分もそう思うっす! 松雪先輩は国の宝っすよ!!」
「いやいや、これはホノカ氏の魅力値の高さが原因でござる。皆の衆がチャームの状態異常引き起こしてるでござるよ」
予定では、この後に三次元による試着を予定しているらしいのだけど。
……それ、必要かな?
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