第18話 【短編】二次元のカノジョが僕の前でだけとにかく可愛い話・前
【お知らせ】
こちらの短編は、先日『小説家になろう』に投稿したものです。
1話完結の物語として書いたものを掲載しています。
また、エピソードは書き下ろしとなっております。
なお、本編もいつもの時間に投稿いたしますので、こちらはお暇潰しにお使いください。
読まれなくとも本編を読み進めるうえでまったく影響はございません。
ご安心のうえ、読み飛ばしてくださいませ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕には彼女がいる。
その彼女は僕の事が大好きだし、僕の事を一番に考えてくれるし、僕とどんな時も一緒にいてくれる。
そんな都合のいい女の子が現実にいるはずがない?
その指摘は実に正しい。
僕の彼女は二次元世界に住んでいる。
そして、僕と彼女はそれで充分に幸せなのである。
今回は、そんな僕たちの、とある1日のお話。
『大晴くん! 大晴くんってばぁ! 起きて下さい! 時間ですよぉ!!』
「うん。分かったよ。あと5分くらい声を聞いていたいなぁ」
本来、スマホのアラームなんて嫌われ者。
鳴った瞬間に叩き切られるか、「またあとで」とスヌーズをポチられるか。
『むーむー! 大晴くんの起きる気配がありません! これより、ホノカは強行モードに移行します』
ホノカは、こほんと咳払いをひとつ。
そして大きな声で目覚めの一言。
『起きてくれないと、ホノカ、大晴くんのスマホから家出しちゃいますよぉ?』
「おはよう! グッドモーニング!! もう起きた! 今起きた! 起きたよ!!」
『ふぃー。今日もわたしは大役を果たしましたぁ。どうですかぁ! ふんすっ!!』
「実は起きてたけど、ホノカの声が可愛すぎたので寝たふりしてました」
彼女の前では隠しごとなんてできない。
僕は聞かれていないのに、正直に罪を告白した。
『むーむー! 大晴くん、ひどいですよぉ! ホノカのことを弄んだんですね!?』
このスマホの中にいる、可愛いカワイイKAWAII女の子がホノカ。
僕の親父が人工知能の研究をしており、その過程で作られた、アプリのカノジョ。
正式名称は『本当に望まれるカノジョ1号』というあまりにもアレな名前だったので、僕が勝手にホノカと名付けた。
大事な事なので覚えて欲しい。
ついでに僕は
「ごめん、ごめん。その代わり、今日は約束してた場所に連れて行くからさ!」
『わぁ!! 大晴くんのそういう予定をしっかり守るところ、ホノカは大好きです!!』
そして休日の今日は、彼女とデート。
予定のない休日に恋人とデートしない理由を知りたい。
朝ごはんを軽めに済ませて、ホノカとの通信用のイヤホンとボールペン型カメラを装着したら、出発進行。
いざ、オタクの御用達。
アニメイトへ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇
「それにしても、ホノカの方から行きたいって言うのは意外だったなぁ」
『そうですかぁ? だって、大晴くんの好きなものは、わたしも好きが良いです! いつもお揃いがいいです!!』
もう、既に尊い。
家を出て5分で、早々に心が満たされようとしている。
こうなると、マクドナルドでてりやきマックバーガーセットを購入して、家で食べながら積んでるアニメ見たい気持ちになるが、それはノー。
今日はホノカの望んだお出掛けデート。
僕が満足したから打ち切りはないのである。
むしろ、初期ステータスで満足がカンストしているので、前提からして話が別。
『むーむー! 今、大晴くんはマクドナルドを眺めていました! デートでマクドナルドをチョイスするのですね』
「あ、いや! 今のは別にそういう訳じゃ!」
『そういう気軽なお店で済ませてくれる彼氏って、ホノカ的にはとってもポイントが高いです! やっぱり大晴くんのこと、大好きです!!』
「うん! 今のはそういう訳だった!! 帰りに寄ろうね!!」
ご存じだろうか。
彼女の「大好き」は、パラメーター10パーセントアップのレアスキル。
知らない人がいたら試してもらいたい。
『大晴くんは街行く女子を全然見ませんねぇ?』
「うん。そうだね。全然興味ないからなぁ」
『わたしとしては、他の女の子に目移りしている大晴くんに、さっきからあの子の事見てるの、知ってるんですよぉ!! とか言いたいです!』
「ごめん! ちょっと今の、もう一回言ってくれる!?」
アニメイトまでは徒歩20分。
自転車には乗らない。理由は2つ。
まずホノカはスマホが揺れると、酔ってしまう。
そして何より、自転車走らせたらホノカとの会話の時間が減ってしまう。
「おっ。猫だ」
『ほわぁー! 可愛いですねぇ! 猫ちゃん、首輪してます! にゃーにゃー! むーむー、猫の言語の開発が急がれます! 帰ったら博士に報告です!!』
僕は猫も大好きだけど、ホノカの方がもっと大好き。
世の中、猫とホノカだけの世界になれば良いのに。
「そう言えば、今日はホノカの恰好、メイドさんだね。初めて会った時以来の」
『やっぱり、アニメイトに行くならメイドさんです! ちゃんとネコミミもつけてます! どうですかぁ! さっきの猫ちゃんにも負けません! にゃー!』
大変結構なお手前で。
油断するとアニメイトがどうでも良くなりそうなのが玉に瑕。致命傷?
「スカートが短いの、いいよね! ゴシックスタイルも捨てがたいけど」
『むーむー! 大晴くん、いやらしいんだぁ! と、言いたいところですが、ホノカも見られるのを意識してのミニスカメイドなので、その感想も嬉しいです!!』
なんというありがたいお話。
可愛い彼女を眺めているだけで喜んでくれる。
そして僕も嬉しい。なるほど、これが平和な世界!
そんなこんなで、アニメイトに到着。
僕たちの住む街のアニメイトは小規模だけど、それでもオタクの夢と希望がみっちり詰まっているステキスポット!
僕はとりあえず、3時間までなら余裕で店内を見て過ごせる。
「何も買わねぇなら帰れ!」と言ってこない店員さんも含めて大好き。
さあ、楽しい時間がやって来た。
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