通勤電車で、死神と仲良くなった。

@ramia294

第1話

 今日も電車に乗っている。


 電車通勤は、もう何年か何十年続けている。


 ラッシュは、苦手なので、早朝の電車に乗る。


 まだまだ寒い日だって、電車に乗ってしまえば、大丈夫。


 しかし、駅で、ドアが、開くと、冷たい風が、吹きつける。


 寒いが、座らない。そんなに長い距離を乗らないので、立っている。

 おじさんの身で、こんな事を言うのは、どうかと思うが、おじさんの隣に座るくらいなら、立っている。


 乗車してから、何度目かの駅に、滑り込み、ドアが、開いた。


 冷たい風と一緒に、品の良さそうな紳士が、乗り込んでくる。

 乗客が、降りると紳士が、座る。


 次の駅で、隣の席に座っていた、ダークスーツのおじさんが、降りた。


「よかったら、座りませんか?」


 紳士から、品の良い声が、聞こえる。


「いえ、僕は、そんなに長い距離を乗らないので、立っています」


「そうですか?ずいぶん長い間乗っていられるようですが」


 紳士は、心配そうに言った。


「僕の会社は、隣の駅なので、大丈夫ですよ」


 次の駅までの十五分が、今日はやたらと長い。


「桜ですね」


 紳士が、不意に言った。


 

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