絶望の王【完結済…?】

朝霧 命/みている。@休止中

絶望。

………

……


絶望。現在の状況は、この言葉が一番似合っているだろう。


回復を担当していたクリスは、元々臆病な性格というのもあり、奴の圧倒的な威圧感を前にし気絶。

盾を担当していたガドルフは、右手を失った。

魔法を担当していたアリアは、魔力が枯渇し、クリスとガドルフを護る為の魔道障壁を建設し、実質戦闘不能。


しかし、私は勇者だ。この世に生まれ落ち、神からの加護を受け、この王を抹殺する事を命じられている。

それ故に、私はここで希望を捨ててはならない。

ここで希望を捨ててしまったら、戦う意思を捨ててしまったら、私を信じてくれている人類はどうなる。

きっと、絶望するだろう。

ならば、私達がやらなければならな―――――


パリンッ…!!


「ぁが…ッ!?」


闇色の太光線が私の顔を掠る。

直後、ガラスの割れる音と共に、後ろに居たであろうアリアの声が聴こえ…


何が起きたのか、容易に想像が付く。

これまで旅を続けて来た仲間達が、今消滅した。

跡形もなく、理不尽に、血塵すら残らず。


悪魔は笑う。


私の顔を見て。


悪魔は言う。


これが私達のしてきた事の一部だと。


次は、私以外の人類を消すと。


私は想像する。


私の目の前で、街が1つ滅ぶ光景を。


悪魔は笑う。



怒りの表情を浮かべながら。


「貴様らを生み出さなければ、自然はあのままだった。我の部下も、死ぬことなど無かった。貴様に問う。部下が死んだ気持ちを、愛した街が滅んだ気持ちを。」


と。


希望など無かった。

人類は、人類史上最も怒らしてはいけない者を怒らしてしまったようだ。


私にはどうすることも出来ないのだ。

奴はもはやただの悪魔王ではない。


『絶望の王』だ。

そして、私は認識してしまった。

あれは悪魔ではない


私たちを生み出した、紛れもない"神"自身だと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る