きみの物語になりたい

久米坂律

桜花一片

 先月、とある人物から告白を受けた。

「特定の相手がいないのなら、自分を見てくれませんか」と言われたのだ。


 相手は立石という名前の高校の同級生で、三年近く関わりは途絶えていたのだが、ひょんなことから今年の十月に再会した。


 正直なところ、何か好意を抱かれるようなことをした記憶はない。そして、私が相手をどのように思っているのかも分からなかった。


 どんな形でもいいから答えがほしくて、頭の中を引っ掻き回す。高校時代のこと、最近のこと。


 ……やっぱり分からない。

 下宿先のアパートの中で、お手上げとばかりに机にべたりと突っ伏すと、窓の外に白い何かがちらつくのが見えた。アパートの庭には桜の木が植えられているので、多分桜の花びらだ。


 あまり相手を待たせるのは不誠実だから、と三月の内に答えを出す、と自分の中で決めていた。既に散り始めている桜に、もう猶予はないのだと気付かされる。


 散って行った桜の花びらはあまりにも儚げな色をしていた。

 でも、それでも。

 そんな頼りない花びらでもいいから、私は答えを教えてほしかった。

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