誰かがスマホゲーをやっているだけの話

ラズベリーパイ

第1話

 ゴール。

 何らかの条件が達成された時に設定された到達地点である。

 某ゲームなどでは動かしていたキャラが踊って決めポーズを決めてくれたり、幾つかに分裂したりもするが、現実の私たちは分裂できないので果たしてゴールに向かう事は可能なのかどうか? と考えてみたが、多分私がつかれているだけだろう。


 ただ実際に【条件】を間違えると、違ったゴールに辿り着いてしまう。

 そのために条件の設定は間違えないようにしないといけない。

 しかもその条件設定は、途中、誰かの囁きなりなんなりによって簡単に歪んでしまい違うゴールに辿り着いてしまう。

 

 そのささやきが【天使のささやき】なのか【悪魔のささやき】なのかによって、ゴールも変わってくる。

 それらを考えながら私が、何度目かのささやきを目にした。


「これ、上手くいくのかな」


 不安になりながら進めていく。

 最近はやりの無料アプリ。

 ゴールに辿り着かせるだけの単純なゲームだが、それまでに様々な人と接触したりすることでそのゲームの、【その時の主人公】の動きが変わる。


 因みにゴールは幾つか自分で選べたりする。

 また、主人公に介入できるのは、何回までとか、どういったアイテムがあるのかとか、そういったものも全て決まっている。

 その中でどれを選択するかによって主人公のゴールが色々な方向に向かっていく関係上、違うゴールに辿り着いたり、遠回りしたりする。


 突然のアクシデントもある。

 以前見たのはゾンビ大量発生や宇宙人襲来、地底人が現れた、異世界に転移した等々、何処からどう考えても現実に即していないと思える内容だった。

 それでも、人間が多数住みこむ都市や気軽に歩き回る人々などの映像、カフェなどの飲食店、服飾の店などなど、学ぶことは多い。


 こうやって食べ物を注文するのかとか、色々と学べるところは多々ある。

 ただの映像とはいえ凝った作りになっている。

 次はどう動こうか、試しに植木鉢で何かを育ててみようか。


「育てると虫が出てくるんだよね。…ただその虫も、その国にいない物だったりもするらしいけれど」


 リアリティだけを追求していても面白くないし、見慣れたものばかりを見せられるのは退屈だ。

 その点このゲームは楽しい。

 川で釣りをしていたらサメがとれる事もあるし、人魚が引っかかる事もある。

 

 果たしてこれは川なのだろうかと思いながら、続けていき当初のゴールにたどり着いた。

 答えは、目的の大学に入る事。

 今回は上手くいった。


 鮮やかな花火が上がり音楽が流れるのを聞いながら、一つクリアしたと背伸びをする。

 頑張って特定のゴールにたどり着くたびにこうやって現実世界も盛り上げてくれたらいいよなと私は思う。

 頑張ったねボタン、みたいなものがあると嬉しい気もする。


 おすと滅茶苦茶褒めてくれるようなもの。

 頑張ったら褒めてもらえるボタン。

 それこそひたすらすごいねと言ってくれるボタン。


 本当にどこかにありそうだと私は真面目に考えた。

 後で探してみよう、どこかにあるかもしれない、そう考えながら参考書を開いたのだった。

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