笑顔が見たい!ただそれだけ!!
さぼ
1話目 プロローグ
「おい!帰ったぞ!」
「はい。おかえりなさい」
「ったく!大黒柱が帰ってきたらすぐ迎えに来いよ!」
「ごめんなさい」
「いいから早く飯は?」
「今お持ちしますね」
俺の日常は常に父の怒声と母の謝罪が聞こえてくる。
「ねぇ!にぃに!遊ぼ!」
「あ。ずるい!僕と遊んでよ!にぃに!」
この可愛く甘えてくるのは俺の自慢の兄弟だ!
妹の彩(あや)は5歳ながらにも足し算、引き算が出来て頭が良く何より可愛い! 兄贔屓かもしれないが、他の同い年の子を見ても1番可愛いと断言出来る!
弟の健(たける)は4歳と彩と1つしか歳が変わらないのに今でも赤ちゃんの頃と変わらないほどべったりくっついてくる甘えん坊だ。そして、可愛い! 兄贔屓かもしれないが、他の同い年……(以下省略。
そんな兄弟を連れて俺たちは部屋へと行こうとすると……
「おい!廉(れん)!いるのか!」
「はい。父さんいますよ」
「てめぇ!なんで迎えにこないんだよ!おかえりなさいぐらい言ったらどうだ!!」
そう言いながら父さんは俺の顔を殴った。
「ごめんなさい。次から気をつけます」
「パパ…にぃにいじめないで?」
「いじめてないよ〜? 悪いことしたから怒ってるだけだよ〜! 彩はいい子にしてたかい?」
家の中で父さんに殴られるのは俺だけだ。というのも、父さんは俺の本当の父さんではない。母さんの再婚相手なのだ。
再婚した時から父さんは俺のことを毛嫌いしていて、事ある毎に難癖をつけられては殴られていた。
「パパ! にぃにと遊んできていい?」
「いや、パパと遊ぼう! 廉は部屋で勉強でもしてろ」
「はい。わかりました」
父さんがいる時は彩と健と遊ぶことは出来ない。父さんがそれを許さないのだ。
「えぇ〜にぃにと遊びたいなぁ〜……」
「彩はパパが嫌いかい?」
「うぅん!好きだよ!」
「そっか!お兄ちゃんと遊んでいるとろくでもない人間になってしまうからパパと遊ぼうね!」
「はぁ〜い……」
「彩は偉い子だね〜」
そんな声を聞きながら俺は自分の部屋へと行く。
ーーパタンッ
「ふぅ……俺さえ我慢すれば、彩も健も、そして母さんも幸せに出来る」
俺はここまで育ててくれた母さんを尊敬している。3歳の頃に父さんを事故で亡くして、今の父さんになるまでの8年間朝も夜も働いて俺を支えてくれたのだ。そして、彩や健にも感謝している。父さんに殴られる度俺が死んでしまえばいいんじゃないか? と思ってしまうことがあってもその度彩や健の顔が浮かんで生きる元気が湧くのだ。
「廉大丈夫?」
「母さん大丈夫だよ。母さんこそ最近痩せてきて大丈夫なのかよ?」
「廉に比べればこれくらいどうってことないよ?手当てするからこっちおいで」
そんな母さんの手はがさがさで女性ならではのお手入れは一切されていなかった。でも、温かい。母さんの手はいつ触れても懐かしさと温かさがあって俺は好きだ。俺はこの手に守られ、支えられて生きてきたのだ。だから、俺はこの手を守りたい。
「母さん、俺決めたよ。教師になりたい」
「まぁ!いいじゃない?廉なら立派な教師になれるんじゃないかしら?」
「母さんありがとう」
廉は教師にさえなれば母さんを楽にしてあげれると思ったのだ。
「それじゃあ、勉強頑張らないとね!私は彩たちのことを見てくるわね」
「うん。よろしくね」
それから俺は猛烈に勉強に取り組んだ。
ーー3年後
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。彩も健もお兄ちゃんの言うことをちゃんと聞いて行くんだよ?」
「「はぁーい!!」」
今日は健にとって初めて小学校に登校する日だ。去年から彩とは一緒に登校していたが、健は母さんに送り迎えしてもらっていたのだ。
「やっとにぃにと一緒に行けるね!」
「そんなに嬉しいか?健?」
「もちろん!僕にぃに大好きだもん!」
可愛すぎる!!この子は天使ですか!!
「そっか!ありがとな」
照れ隠ししながらも健の頭を撫でてやる。
「あ。ずるい!彩もにぃにのこと大好きだもん!」
こっちにも天使が!!ここは天国か!!
「彩もありがとな」
2人と手を繋ぎながら通学路を歩く。
「健は小学校でやりたいことあるのか?」
「うーんとねー…給食!!」
「給食?そんなに楽しみなのか?」
「うん!あと友達たくさん作る!」
「健ならたくさんできるさ!」
「彩は?」
「今はね!国語がすごい楽しいの!」
「お?何してるんだい?」
「色んな漢字を勉強したり、文の作り方?みたいなのも勉強してる!」
「そっか!彩は頭良いからすぐ覚えれそうだな」
他愛もない会話をしながら横断歩道で信号待ちをしていると、前方からトラックが猛スピードで向かってきていた。
「にぃに、あの車スピード早くない?」
「そうだな。朝からあんなにスピード出して危ないな」
何か配達で急いでいるのかなと思っているとスピードを緩めることなく歩道に乗り上げこちらに向かってきていた。
「!?彩!健!危ない!」
間一髪の所で彩と健を押し出すもすぐに視界は真っ黒になった。
「「にぃに!!」」
彩と健の叫び声が聞こえて体を起こそうとするも力が入らない。熱い。痛い。寒い。冷たい。何か喋らないと…
「おぎゃー!!」
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