ダンジョン作成スキルって何?
さぼ
第1話 プロローグ
「眩しいなぁ」
そんなことを呟きながら洗面所へ向かう。俺は堂島勤35歳の未だ独身サラリーマンだ。今日は日曜日だから契約通りなら休日の予定だが…
「いつになったら休めるのか…はぁ…」
そう。もうここ3ヶ月ほど休日なんてものは無い。それもこれも上司の無茶振りや新人の無断退職、更には子会社倒産と所謂典型的なブラック企業だ。ここに勤めて13年文句も言わずただロボットのように仕事をこなしてきたのが運の尽き。
「辞めるタイミング見失ったなぁ…」
軽く朝食を済ませて、いつものあの場所へ。
「今日って数学宿題あったけ〜?」
「いや、ないよ!それより昨日のあの番組見た?」
「あ。見た見た!斉藤さんイケメンすぎてもう号泣!」
「はい。はい。大丈夫です!はい。今から向かいますので。はい。わかりました」
「はぁ…なんで俺が…くそ」
「まぁ!トメさんや!今日は一段と綺麗に見えるわねー」
「あら!キクさんわかる?孫から貰った化粧水がすごい肌に馴染んで若返ったみたいなのよ!」
俺の周りの日常は忙しい。駅が近いことから色んな会話が朝から耳に入ってくる。
「うるせぇ…なんでこんなに人がいるんだよ…今日日曜日だろ…」
俺は昔からうるさいのが嫌いだ。とにかく1人で何かを集中してやることが好きで誰かと一緒にいることが苦痛でしかない。学校なんかでもよく1人で行動してた。
「そういえばあいつは今頃なにしてんだろ」
幼稚園の頃から腐れ縁で大学卒業するまで同じ学校に通っていた美穂。家が近いこともあって親同士が仲良くなりよく交流してたが、俺から見た美穂はただの馬鹿だ。
何をやらしてもすぐミスをするし、覚えも悪い、ただ諦めることは絶対になかった。1度決めたことは必ず貫き通すのが美穂だった。それゆえ…
「美穂ね!大人になったらたくさんの子供たちを笑顔にする仕事に就きたいの!」
大学卒業してすぐにどこかへ消えたが、恐らく子供たちを笑顔にする仕事を探しているんだろう。
「まぁ、俺にはどうでもいいんだけど。っと着いたか」
ここは偶然通勤中に見つけた神社。周りは木で囲まれ、上から射し込む陽の光はどこか神秘的な場所に来たのでは?と勘違いすら思わせる。
俺はここが好きだ。この神社の周りには家がない。そう、人がいないのだ。聞こえるのは虫の鳴き声と風で木々が揺れる音くらいだ。
「〜っん!はぁ〜!ここの空気は美味いよなぁ…!人がいないだけでこんなに変わるのかねぇ…」
俺はいつも出勤前にここに寄って英気を養ってから向かうのだ。ただ、今日はいつもと違った。
「あれ?こんなものあったっけ?」
いつものベンチへ向かおうとすると、見慣れないダンボールがそこにはあった。
「なんかやばいものでも入ってたらどうしよう…」
(…ガサゴソ……ガサゴソッ)
「っ!え?今動いたよね?」
恐る恐る近づいてみるも、勇気が出ない。
「怖っ!いや、開けないよ?得体の知れないものとか災厄でしかないでしょ!」
すると…
『そこの青年よ…助けてくれ…』
「え?何か喋った?」
『お願いだ…ここを開けてくれ…』
「ダンボールって喋るものだっけ?(あ!!ドッキリか!どこかのテレビ番組でも来てたのかな?)」
『青年よ…わしの声が聞こえてたら…是非とも力を貸してくれ…』
「はいよ!しょーがないなぁ!」
テレビ番組のドッキリだと信じ込みダンボールを開けていく、これでも良心的な部分もあるので分かってても引っかかるのが信条さ!
(…ピカーンッ!)
「うっ!眩しいっ!…」
いきなり辺りがすごい量の光に包まれ思わず顔を顰めて目を細める。
『青年よ…助けてくれてありがとう…』
「え?誰?」
そこには知らないおじいちゃんが立っていた。見た目は80歳ぐらいだろう。杖を持って髭も生やしている見るからに年寄りって感じのおじいちゃんだ!
『青年よ…名前は何と言う?』
「え?あ。堂島です」
『そうか…堂島よ…わしを助けてくれた褒美に何か一つ願いを叶えてやろう』
「え?(これは…どういうドッキリなんだ?)」
頭の中が混乱して今置かれている現状が理解できない…
『さぁ…なんでもいい。何か望みはあるか?』
「えっと…じゃあ…楽な仕事に就きたいです!」
『なるほど…楽な仕事と言ってもお主の好きなことじゃないと続かんじゃろ…他に希望はあるかの?』
「じゃあ…なるべく人が少ないとこで落ち着いた雰囲気の職場がいいです!あと休みも取れて、給料が高い方がいいかな!」
『ふぉふぉふぉ…やはり人間は欲がたくさんあっていいのぉ…よし…では願いを叶えてやろう…』
「あ。ありがとうございます!(これは…随分と役が凝っているなぁ…)」
(…ピカーンッ!)
「うっ!またか…」
またしてもすごい量の光に視界を支配され思わず目を瞑った。そして…
「は?ここどこ?」
再び目を開けたらそこは先程までいた神社ではなく、周りが土の壁の牢獄なようなところだった。
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