最後の試合

@hana6379

真剣勝負

中学校剣道部での話。剣道に憧れ、中学生から剣道を始めた。

武道の一本というのはいかに綺麗に技を出せたかどうかで決められる。剣道では相手を竹刀で叩いた時の音、姿勢、声、残心で判断される。

このように厳しい審査基準があるので初心者はなかなか一本を得ることはできない。だから中学生で始めたばかりの私は必死に練習をした。

防具と袴、剣道着を着たまま夏練習するのは地獄のような辛さで、慣れないうちは熱中症で吐き戻す人も少なくなく、私もその1人だった。

裸足ですり足をするためマメができて皮が剥がれるし、技を出す時足で音を鳴らさなければいけないので、慣れないうちは踵を痛めたりもする。

冬は冬で裸足の足が寒くて辛い。そんな練習生活を続けるうちに徐々に試合に勝てるようになった。

私の学校の剣道部は未経験者の割合が多く、強豪校には敵わないが、そこそこの強さで県大会に出られるか出られないかという程度だった。

レギュラーを勝ち取り、県大会に出場が決まる試合に出ることになった。試合は5試合あり三本先取で試合が決まる。私のポジションは次鋒という二番目の試合担当だった。

先方は惜しくも負け、次鋒の私が負けると負けの流れができてしまう。そんなプレッシャーの中私の出番が来た。当然負けてはいけないので慎重になるが勝つためには攻めなければいけない。が、ふとした拍子にバランスを崩しその隙を狙われ一本を取られた。そこで私はこう考えた。相手はこちらが一本を取られたことで焦って比較的一本を取りやすい面を打ってくるだろう、それに合わせて小手を打てば勝てると。

私はその小手を読み再開の合図とともに返し技をかけると読み通りに相手は小手を打ち、私の返し技が今までにないほど綺麗に決まった。

二度目の再開では、相手の苛立ちがあったため小手を合わせることで二本目を決めて私の勝ちになった。

中堅、副将、大将と続くのだが、中堅が勝ち、副将が負け、大将の試合にかかっていたが結局負けてしまった。

成果を残すことはできなかったが、友人たちと汗を流した日々はいまでも楽しい思い出である。

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