大聖女マリアンヌと復讐の少女クリアローズの戦い

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 あの終わりの日が迫った時期、あたしの住んでいる村の近くでは、魔物が異常に繁殖していた。

 だから、あたしは、自警団の一員として、その魔物退治の手伝いをしていた。


 あの頃のあたしには戦闘力がなかったから、道具を渡したり、素材のはぎとりをしたりしただけだったけれど。

 けれど、魔物は狩っても狩ってもきりがなくて。


 だから、村の大人たちは救援依頼を出したのだった。


 そうしたら、たまたま近くを通りかかった聖女たちがやってきた。


 これで助かる。


 村の者達も、あたしも思った。


 けれど、やってきた聖女達は、あたしたちを助けなかった。

 それどころか、村ごと魔物を焼き払ったのだ。


 村人達は全滅。


 その時、たまたま村から出ていたあたし一人だけが生き残った。


 そのあと、運よく貴族に拾われたあたしは、養子となって生き延びたけれど、あの日の出来事を一日だって忘れたことはない。


 聖女に復讐する。


 私はそう、決意した。







 聖女は、あたしと同年代の小娘だった。


 近づく方法はいくらでもある。


 だから、あたしは聖女が学校に通うタイミングにあわせて、その学校に乗り込んだ。


 面倒見の良いお姉さんとして、あいつに近づいた。


 聖女は多くの人から慕われていた。


 規律と協調性を大事にする、クソ真面目な人間だった。


 慈悲もある。


 慈愛もある。


 けれど、すべてを救う意思はなかった。


 何かの事故で学校に迷い込んできたとき、聖女は魔物を捕まえるため、学生を囮にした。


 別にあたしは、そいつのために怒ってるわけじゃない。


 あたしにとっては、聖女も他の生徒もどうでもよい存在だった。


 耐えられなかったのは、あたしの村を焼いた時も、そんな仮面のような面をしていたのかという点だけ。







 その学校にいる者達は、皆聖女に心酔していた。

 成績の良いものは、聖女のとりまきになれる。

 ファンクラブなんてものが作られて、男も女も聖女に熱をあげていた。

 馬鹿げていると思ったけれど、利用しない手はなかった。


 それを利用して聖女にとりいって、懐に入った瞬間に、背中を刺してやろうと思った。


 でも、どんなに優秀な成績を出しても、親切を働いても、聖女はあたしを目の中に入れなかった。


 それは、あたしだけじゃない。

 他のみんなも、とりまき達も同じ。


 あいつは誰も信用していないようだった。


 そんな中、季節外れの転校生が学校にやってきた。


 やたら面の整った男子が。


 不審に思ったけれど、聖女の仲間にならないなら興味はない。


 放置していた。


 それが間違いだったと気づくのは、少し後の事だ。







 少しした後。季節外れにやってきた例の転校生がやらかした。


 やつは、学校内に魔物を招き入れていた犯人だった。


 魔物を見た生徒達は、恐怖でパニックを起こした。


 けれどそれを、聖女が粛々と退治していった。


 貴族としての振る舞いはあるけれど、あたしにはそんなものと戦う力がない。


 あたしは、魔物に襲われて死にかけた。


 魔物にかみつかれて、死にたくないと思った時、聖女があたしを助けた。


 屈辱だった。


 犯人はすぐ捕まったようだ。


 噂では聖女に恨みがあったとか。


 聖女が焼いたのは、あたしの村だけではないのかもしれない。


 ありえる。


 だって、同じ学び舎で通っている生徒を心配すらしない女なのだから。

 あたしが言えた義理ではないけれど。


 あの犯人は、牢屋にぶちこまれたそうだ。

 うまく利用すれば、使えたかもしれないのに、残念だ。







 聖女の懐にもぐりこめないまま、あたしは学校を卒業した。


 学園で過ごした時間は、結局全て無意味な時間だった。


 このまま家に戻ると、貴族としての役目に縛られてしまう。


 あたしは事故死を装って、行方をくらました。


 その後は、魔物を倒す力を身につけながら、聖女に近づく方法を探し続けた。


 その中で、魔物に襲われている少年と出会った。


 狙っていた魔物だったので、結果的に助けることになったがどうでもよかった。


 しかし少年フィトアは、あたしの後をついてきた。


 何度も追い払ったが、無駄だった。


 少年は、意思を持った魔物だと言った。


 あたしは、どうしてか放っておく事ができなかった。


 かつていた村で、世話をしていた子供達の事を思い出したからなのかもしれない。


 手間のかかる子供達だった。


 将来は、冒険者になるとか、狩人になるとか、力もないくせに勝手な事ばっかりいって、無茶して。


 とりあえず、あたしはその少年と行動を共にすることにした。


 しかし、そんなあたしたちの前に聖女が立ちふさがる。







 大聖女マリアンヌ。


 そいつが、憎き敵の名前だ。


 決して忘れる事が出来ない名前。


 そいつは、組織を作って、力の強い聖女を育成していっているらしい。


 一時期、有能な聖女ミクラシアやカチュアニーゼとかいうのの、後任についていたとか。


 そんな事はどうでもいい。


 フィトアを守りながら、あたしは戦った。


 フィトアが味方する影響なのか、近くにいた魔物達は皆あたしの味方になった。


 多くの人の生活を踏みにじった、今も踏みにじりつづけている魔物達。


 けれどあたしには関係ない。


 大聖女マリアンヌを討つ。


 そのために利用した。


 けれど、そこまでしてもあたしは敗れた。


 あたしは故郷の人達に謝ることしかできない。


 結局生き延びた意味を果たせなかった。


 多くの人に迷惑をかけただけだった。


 無力で何も成せなかったあたしは、聖女に仇なす存在として討伐された。


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大聖女マリアンヌと復讐の少女クリアローズの戦い 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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