129話 金喰狼
リオンは笑い転げて、オウカは頷いている。
そんな横で俺はルーナから説教をくらっていた。
「クロツキさん、流石にやりすぎですよ。いくら舐められたからってここまで戦意を挫くなんて」
「いや全然そんなつもりはなくて……ただ世の中を強く生きるためにはこういう経験もいるかなと思っただけで」
「はぁ、やりすぎてトラウマになったらどうするんですか?」
「それは大丈夫でしょ。死なないように加減はしたし、そもそもこれゴムナイフだし」
俺はゴムナイフを指で弾くが、その行動を見るルーナの目は冷たい。
「まったく、いい勉強にはなったようですけど。君たちも相手が弱そうに見えても無駄に喧嘩を仕掛けたりしてはいけないですよ」
「すみませんでした」
「手も足も出なかったです」
「クロツキさん、もの凄く強かったです」
3人は未だにしゅんとしている。
「上に上がって休憩にしましょう。今日はメンバーが全員勢揃いですし、お茶でもしながらお話をしましょう」
ルーナが手を叩いて3人を起こさせる。
ゴブリンがクッキーを食べて紅茶を飲んでいるのは分かる。
人間とさして変わらない。
スライムもなんとなく想像通りだ。
体に入れると溶けていく。
1番の謎はガイコツだ。
食べたものは一体どこへ消えているのか。
観察している俺と3人の目が一瞬あったが、すぐに逸らされた。
まぁ、気にしないことにしておこう。
少しの束の間を楽しむ。
普段でも割と静かだが、今日は特段と静かだ。
現在、
この状態だと、メンバー以外は許可がなければクランハウスには立ち入れず、無理に突破しようとすると迎撃モードに入る。
「ごめんルーナ、やっぱりリックたちの様子を見てくるよ」
「そうですか、分かりました。では私たちは待っていますね」
「私もついていこうか?」
「私もいくか」
リオンとオウカの申し出はありがたいが、影の館の護衛を任せることにする。
よっぽどのことでもない限りはクランハウスの防衛が突破できるとは思えないが念のためだな。
§
王都から少し離れた場所で始まった戦闘は激化していた。
流石に王都での大規模戦闘を避けるためにお互いの合意のもとで戦闘が開始された。
3人と三体のモンスターのパーティと6人のクランメンバーの戦闘。
巨大熊の一撃は大楯で防がれるが、防いだ男の足元は攻撃の重みで大きくへこむ。
巨大虎の速度に翻弄されて、徐々に
そこを巨大鷲が狙いすまして上空から降下し、かぎ爪を開くが横からの魔法攻撃を回避するため獲物を捕らえるのを諦め再び上空へと飛ぶ。
そのさらに上から巨大な炎の玉が鷲に近づくが旋回してこれを回避する。
しかし、狙いは鷲ではなく従魔たちの後方にいる
「
セレスが魔法を発動させると猛吹雪が炎の玉へと吹いていき、炎の玉を凍らせて砕く。
さらにセレスは前線を見て魔法を発動する。
「アイシクルランス:クワトロ」
4本の大きなつららが味方の従魔を避けて相手に向かって飛んでいく。
炎の玉を放った魔法使いが前に出る。
「バーンフレア」
高熱はつららを溶かして、魔法の範囲にいた巨大熊と巨大虎を襲おうとしたところで、天城はスキルを発動する。
「
三体のモンスターの爪が牙が鋭くなり、その毛並みは柔軟さと強固さを兼ね備え、攻撃を弾き全ステータスが大幅に上がっている。
従魔は前線で相手を抑え、リックは少し離れた位置で金喰狼のクランマスター、シャビと相対する。
熱い応戦が繰り広げられる中、トップ同士1対1で斬り合う2人。
実はリックたちのパーティと金喰狼のクランメンバーは知らない仲ではない。
共にダンジョン攻略をしたことだってある。
「モンスターを狩って何が悪い!!」
「モンスターを見境なく攻撃するのもどうかと思うが、今回は話が違う。来訪者だったんだぞ。それも子どもの……」
シャビが大きく叫び、それにリックが応える。
「だからどうした? ガキだろうが大人だろうが、男だろうが女だろうが関係ない。俺らは好きにプレイするぞ。止めたければ勝手にしやがれ。もしくはクライアントに直接話しな」
金喰狼は有名な実力もある有名なクランではあるが、ときに過激すぎた。
特段、迷惑行為をしようとしてるわけではない。
しかし、迷惑行為になったとしても気にはしない。
全ては金次第。
金を積めば大抵のことは受けてくれる。
それが傭兵クラン金喰狼。
「君は昔からそうだな。お金を何よりも優先する。あの子たちを狙ったのはどういう依頼なんだ? 依頼者を吐け」
「信頼第一。クライアントに直接交渉しろとは言ったが、クライアントの名前を漏らすわけがないだろ。それに開示してもいいとしてもお前には何も話すことはない!! お前の偽善にはもうほとほと疲れたんだよ」
シャビの持つ刀とリックの剣がぶつかり鍔迫り合いになる。
「はぁぁぁぁぁ」
鍔迫り合いの状態からリックはスキルを発動する。
剣に電気が走る。
シャビは剣を弾いて後退する。
そして刀を鞘に戻した。
緊張感が漂う。
「縮地、居合・紫電一閃」
「
互いに超高速の移動から自身の持つ最大攻撃を放った。
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