99話 クランメンバー

「えっ……!?」

「よろしく」

 嘘だろ……

 確かに関係性は悪くないかもしれないけど、すでにクランに入っていたはずだ。

 そして、もしもそのギルドを敵に回しでもしたら大変なことになってしまう。

 まず、真っ先に俺を目の敵にして地の果てまで追いかけてきそうなやつの顔が浮かぶ。

 目の前にいたのは修羅の副団長を務めているはずのオウカだった。


「いやいやいや、オウカは修羅に入ってるだろ」

「辞めてきたよ」

「修羅の団長はなんて言ってたの?」

 修羅の団長のタツといえば実力者としてこの世界で名を馳せている男だ。

 敵対するなんて考えれない。


「団長はお前の決めたことなら文句はないって送り出してくれた」

「そうなのか……」

 確かにタツは正々堂々の勝負を掲げていて、漢の中の漢という話も聞いたことがある。

 それならば修羅全体としては大丈夫か。


「それと機会があれば殺りあおうぜって言ってた」

 うーむ、そんな機会は訪れないので気にしないでおこう。


「ところで湖都ことはなんて言ってたの?」

 こいつが一番の問題でオウカ大好きな変態だ。

 素直にオウカを手放すわけがない。


「湖都も最初はそんなクランぶっ潰すとか言ってたけど、私がそんなことしたら二度と口聞かないよって言ったら一発だった」

 あぁ、それは湖都にクリティカルで効き目のありそうな言葉だな。


「あいつはマジモンの変態だったな」

「ずっと泣いてたから、少し可愛そうな気もしたんだけど……」

「2人共、湖都と会ったのか?」


「ここにくるまでに馬車に乗せてもらえたから」

「オウカと離れるときなんて言葉にならない言葉を発してたよ」

 うん、想像ができる。


「ということで、問題ないよね」

「いや、確かに問題はなさそうなんだけど、なんでこっちのクランに入ろうと思ったの? というかどうやってクランができるって知ったの? あと、3人は知り合いなの?」

 わざわざ修羅のような有名なクランからまだできてもいない弱小クランに移るメリットが思い浮かばない。

 まぁ、ジャンヌのサポートのおかげで外面は一流になりそうだが……


 そして、どうやってこれからクランを作ると知ったんだろうか?

 クランメンバーの募集なんて出してないだろうし。


 3人が仲睦まじく喋っているのも気になるところだ。ここまで湖都に送ってもらったようだし、さっき出会ったったてわけではないだろう。


「うーん、なんでだろ? 楽しそうだったからかな。もちろん修羅にいる時も楽しかったけど団長の背中ばかり追いかけてるのも違う気がしたんだ」

「まぁまぁ、そんなもんなのか?」

 修羅って元々はPK集団だしメンバーは殺伐としてそうだよな。

 そりゃあ、PK集団に比べたらほとんどのギルドが楽しそうに見えるんじゃね。


「クランができるからって誘ったのはウチらだな」

「私たちがパートナー探しの旅に出てたらたまたまオウカちゃんと出会ってそれでクロツキさんの話が出て、知り合いだってことで力を貸してもらったんです」

「影に潜る黒い竜なんてクロツキしか思い浮かばないからな」

 そういえばリオンとルーナはディーのような相棒を探してたんだったな。

 ふむふむ、その過程でオウカと出会ったと。

 世の中というか、ゲーム世界というのか、狭いもんだな。


「それで見つかったの?」

「それは後でのお楽しみってやつだな」

「ものすごく苦労しましたから」

 どうやら見つかったようだ。


「その辺で良いかの、最後の1人がまだなんじゃが……」

「あぁ、申し訳ない」

「最後の1人はこやつじゃ!!」

 ジャンヌは力強く最後の1人を指差した。

 ジャンヌの指差したのは俺?

 ではなく、俺の後ろにいたジャック?


「ジャック? ジャックもクランに参加できるのか」

 てっきりクランメンバーになるためには来訪者ビジターじゃないとダメだという固定概念があった。

 まさか現地人ローカルズもギルドに参加できるとは……

 さすがはルキファナス・オンライン、自由度の高さを見せてくれる。

 というか、もはやゲームだという感覚は薄れてもう一つのリアルだと感じている。

 イメージで言うと異世界に来ている感覚だ。

 もちろん来訪者は死んだりしないのでそこはリアルではないが、それ以外はまごうことなき本物だ。


 メンバーに顔を向ける。

 顔見知りばかり集まった形でこのメンバーなら特に気を遣わずに済みそうだ。

 ルーナとリオンは予想通り。

 オウカの参加の衝撃は凄いが修羅の当人たちで納得がいっているのなら断る理由もない。

 ジャックに関しては実力面も性格も断る理由はない。

 ただ、現地人というところに一抹の不安を抱えてしまう。

 俺なんかがクランのマスターとして命を預かることになってしまう。

 割り切らなければいけないのだが、そんな簡単にはいかない。

 徐々に徐々に慣れていくしかないのだ……

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