19年遅れの宿題
@tacchan811
どうしようか
もうすぐ50歳になる。なのにこれまでの人生、悔いだらけだ。こういう時、神様が現れて「お前の人生、好きな時からやり直させてやろう。いつに戻りたい?」と問うてくれるのが小説の常だが、それはないし、あっても不要だ。僕にはかわいい妻と子供とペットがいる。この状態のまま30歳に…は無理な話だ。今のままで状況を改善したい。
そこで、ふと思った。なんで出てきた年が「30歳」なんだろう?…あ、もしかすると…忘れていた、いや、無理に忘れようとしていた宿題、その宿題の提出を諦めた時だ。僕がふとしたことから取り組んだ宿題、人生を賭けると言いながら中途半端に終わった宿題。これが残ったままだから、人生どこかで満たされない気持ちでいっぱいなんだ。
僕は大学卒業後、地方銀行に入った。バブルがすでにはじけており、就職活動は思うように進まず、希望していた都市銀行(今で言うメガバンク)はことごとく落ちた。この時点で仕事に対する希望を失っていた。入社してもそれは変わらなかった。なんで預金の窓口に座らないといけないんだ?(研修の一環でやらされる)。なんで一円合わないと全員残されるんだ?(もっとも、新入生の僕が原因だったことも多々あった)。なんで残業は毎日つかず、上司が残業時間を勝手に決めるんだ?(タイムカードはなく手書きで上司が勝手に残業時間を少なく書いていた。今なら大問題だ)etc etcで、こんな毎日が楽しいはずなかろう…と思われるだろうが、僕には一つ希望があった。それは地方銀行に入ることと引き換えに「3年間我慢して勤め、3年経ったら辞めて勉強する」という目標が実行しやすくなったことだ。もし、希望した都市銀行に入っていたらそんなことは思わなかっただろう(もっとも、ほんとに都市銀行に入っていたら逆に3年もたなかったかもしれないが)。僕はこの想いを胸に、早く預金窓口の研修が終わることを毎日祈った。預金窓口の次は為替、為替の次は年金。そしてやっと、まだ興味のあるローン(融資)の窓口の研修となった。なぜ融資に興味があるかと言うと、金銭消費貸借契約の締結、抵当権など担保権の設定や解除、手形や小切手を扱うため、勉強になるからだ。気乗りはしないとはいえ、帰ってからボーッとしているのも現実逃避しているのももったいない。帰宅してからは融資、法務に関する銀行業務検定を受けつつ、何とかやる気を心の井戸から無理やり汲み出して出社した。
そうこうしているうちに入社から3年が経とうとしていた。そろそろ実行に移さなければ。
19年遅れの宿題 @tacchan811
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。19年遅れの宿題の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
だいすき/@maron32
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
愛しさ/@wiltan
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
あの島へ/@popos22
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
初めての一人旅/@kijib
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
テラス/miki
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
みんな/@namahu2021
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます