男子校に入学したはずなのに、クラスメイトがどいつも女子っぽすぎる件:番外編

怪物mercury

【PV一万突破企画!】男子校に入学したはずなのに、女子と王様ゲームな件

 それは、ある日突然に起きたのだ。

 俺たちが、各々の生活を普通に送っていた時、全身が謎の光に包まれて、目を開けるとそこは、真っ白い部屋だった。


「ここ……は……?」


 まったく、どこかにワープされるときに目がくらむような光に包まれないといけないとか、いったい誰が決めたのだろうか。


「こ、この音はお姉さまの息の音ですわぁ!どこにいらっしゃいますのぉ!

まずは落ち着け!ここがどこかを先に把握しろよ!」


 近くにレイナがいることはわかった。さっきは本屋に行った帰りだったので、こいつが近くにいるはずがない。つまり、どこかにワープさせられたのだ。

 部屋には、扉が一つ。とても頑丈そうな扉だが、鍵穴はないのできっと簡単に開くだろう。


「よいしょっ。」


 ドアノブをひねって押してみるものの、開きそうな手ごたえはない。


「腕立て伏せ、を、100回、しやがれ、です。」


 謎の機械音声が流れてきた。えー、これ、やらないと開かないの。

 俺は別に筋肉はない。そう、いわゆる貧弱系男子というやつなのだ。


「96……97……98……99……100!」


「おめでとう、せいぜい、頑張って、脱出しやがれ、です。」


 などとツンデレのようなことを言って、ドアが開いた。

 自動ドアだったら、これを作った人はなぜドアノブをつけたのだろうか?


「うわっ。」


 ドアを開けると、さらに広い真っ白い部屋に出た。あたりはドアがたくさんついており、そのうちの二つは既に開いていた。


「カヅキ!?お前も飛ばされたのか!?」


「うちがいなくて寂しかったかぁ?」


 カオリとアオイがいた。二人とも、軽く息を上げているところを見ると、二人も何かやらされたようだ。


「カヅキは何やったんだ?」


「腕立て100回もやらされたよ。いったいここは何なんだ?」


「それは、『も』っていわないよ、カヅキ。うちなんて腹筋200回だぞ。」


 さすがアオイ。俺より運動神経いいだけあって、割とさっさとこなしてしまったらしい。

 ウイーン。

 ドアがまた一つ開いて、なかからユミコが出てきた。


「ここは?」


「どうも、何者かによってワープか拉致されたらしい。ここから脱出するには、お題のクリアが必要なようだ。」


「なるほど。」


「ちなみに、ユミコは何をやらされたんだ?」


「腕立て。500回。」


 こいつもそんなにやらされたのか。


「すごいな、お前。お疲れ様。」


「ありがとう、旦那様。」


 誰がじゃって。


「そんなに筋肉あったのかぁ。それじゃあ今度、プロレスでもs……」


「しない。横向きにしただけ。野蛮。」


 顔を真っ赤にして怒るカオリを後ろからアオイと二人がかりで止める。こいつはなぜそうも暴れたがる。


「向きは指定されていないから、横を向いて腕立て伏せした。曲げ伸ばし約500回。」


 もうそれ腕立てじゃねえだろ。

 ウイーン。


「ああもう疲れた。いやになっちゃうわ。何が起きてるの?」


「ユウキ、よかった。無事?」


「無事よ、カヅキ。でも、ここは一体?」


「なんかよくわかんねーけど、みんなワープさせられたんだ。ここは、よくわからないけど特別なところみたいだぜ。」


「あら、カオリさん、ありがとう。」


ウイーン。


「あっ、お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!ここどこ!?」


 妹のユイまで飛ばされているらしい。本当に何なんだ、ここは。

 ウイーン。


「あっ、シュガーだ!シュガー!ここどこ!?」


「いや、ウチの妹の真似とかしなくていいですから。」


 むしろ、見ていてはずいからやめてほしい。

 ウイーン。


「おや、カヅキ様です!カヅキ様!ここは一体!?」


「やめろセバスチャン。お前がやると、もはや吐き気がする。」


 ましてや、ドSでくそ強いこの人が手を広げて迫ってくるとか、貞操の危機である。


「これで、全員、そろった、な。次の指示まで、飯でも食って、まて。」


 ウイーン。

 ドアの一つがまた開き、その奥には大きな食堂と、テーブルの上にごちそうが乗っていた。

 鳥や豚の丸焼き、大盛りのサラダ、ちょっとおしゃれなパン。どれもおいしそうなのはいいんだけど、ここは待遇がいいのか悪いのかわからない。


「まぁ、わざわざ拉致したのに食べ物を渡すってことは、毒なんてないでしょう。残すのももったいないし、せっかくだからいただきましょう。」


 こういう時、ユウキは非常に頼りがいがある。ぜひほかの方々にも見習ってほしいものだ。ユウキはサラダに粉チーズを振りかけると、置いてあったフォークで食べ始めた。

 ほかのみんなもぽつぽつと食べ始める。


「粉チーズ。」


「はい、どうぞ。お使いください、お師匠様。」


「ん。」


 ユミコは粉チーズを振りかけると、食べようとして……セバスチャンさんに止められた。


「お嬢様。危険なにおいがします。」


「大げさ。ユウキだって食べてる。」


「先に毒見いたします。」


「ちぇ。」


 そういうとユミコはセバスチャンさんに粉チーズを振りかけた。直後、セバスチャンさんはのたうちまわり始める。


「目が、目がぁっ!」


「ユミコ、それRTXって書いてあるぞ。」


「ほんとだ。」


 まったく、うっかり屋さんである。転がるセバスチャンさんには、カオリがフォークを刺しておとなしくさせていた。


「そろそろ、次の、ミッション、だ。次の部屋に、進め。」


「待ちなさいですわぁ!

うちらはまだなんも食ってないぞぉ!」


 レイナ……と、その隣にいるのは、幽霊化したユウリだろう。こいつらだけ出てくるの遅かったな。


「ドア越しにお姉さまの声が聞こえてましたわよぉ!なんでみんな腕立て伏せとかばかりなんですのぉ!

お前ら、いろいろ楽しすぎだろ!」


 よく見ると二人とも涙目である。何があったというのだ。


「お、お姉さまぁっもう、ワタクシは、ワタクシは穢れてしまいましたわぁっ。」


 お前の心は割と元から穢れているだろ、と喉元まで出てきたが、さすがに泣いている女子にそれを言うほど鬼畜ではない。


「落ち着けって。何があったんだ?」


「ワタクシの指示が、ワタクシの指示がぁっ!」


「ユウリ、何があったんだ?」


「うちらの部屋の指示が、『自分で自分の全身を嘗め回すこと。』だったんだ。」


 苦労しているんだな、お前らも……。


「ユウリの、ユウリの舌さばきがうますぎてっ!」

「オッケーわかった、いったんストップしようか。」


 これ以上は百合が咲き誇る秘密の花園だ。


「お前ら、早く、しやがれ、です。」


 デフォルトで鬼畜な機械音声が、割とマジで傷心のレイナに突き刺さる。


「おい、さすがにこいつ傷ついているんだから、ちょっと待ってやれよ。」


「優しい、ショタっ子も、アリだと、思うぜ、ハスハス。」


 このしゃべり方、どこかで聞いた気がする。


「とにかく、今は指示にしたがいましょう。」


 次の部屋を開けているユウキは、脱出に積極的だ。


「いいけど、何をするんだ?」


 なんだろう、この会話に置いて行かれている感じ。


「これを見て。」


 最近話題のパープルウオッチが人数分置いてある。


「仕方ない。つけるぞ、カヅキ。」


 俺と一緒にしょぼくれているレイナを運ぶカオリが、自分の分と、俺の分、レイナの分を持ってきてくれる。


「ここで、お前ら、に、やって、もらうのは、王様ゲーム、だ。」


「何でそんなことを!」


 アオイが叫ぶ。


「ふっふっふっ。まだ、言う、わけには、いかない、のだ。」


 こいつが何を考えているのか分からないが、すくなくとも、ろくなことでは無さそうだ。だが、今はユウキの言う通り、言われたことに従うしかない。


「まず、1回目だ。開始しろ。」


「「王様だーれだ!」」


「あ、ウチだ。」


 一回目はアオイだ。比較的無難だな。


「ちなみに、過激な方が、喜ば、れるぞ。」


 機械音声は余計なことを言ってくる。


「え、えーっ!?じゃ、じゃあ、3番と1番がハグとか?」


 過激でこれって、アオイさんピュアっすか。


「1番は私だよー!」


「私が3番。」


 ヒカル先輩とユミコかぁ。先が読めないペアだな。


「ほら、ユミちゃん、おいで!」


「待って、今、能力をっ……!?」


 そういや、ユミコはヒカル先輩の心を読むと頭痛くなるんだよな。けれども、能力を切るのが若干遅かったらしい。しかもハグだから、より強く出ちゃったのか、ユミコは目を回してぶっ倒れた。


 もちろん、ハグしているヒカル先輩はさらに強く抱きつく。どうでもいいけど、2人ともスタイルがいいからか、胸の少し下に隙間があるんだよなぁ。あの、めちゃくちゃ色っぽい隙間はすばらしけしからんと思う。


「ぐへへへへ、それが、見れた、から、よしと、する。」


 なんとも嫌なことに、俺と似たようなことを考えたらしい機械音声にもういいよ、的な扱いを受けた。


「はい、保健室。」


 ウイーン。


 またひとつドアが開き、中にはベッドが並んでいた。その程度の気は効かせるのか。


「ヒロインを、雑に、扱うと、ブーイング、が、起きる。」


 などと意味のわからないことを言っているが。


「さぁ、2回目、だ。」


「「王様だーれだ!」」


「ワタクシですわぁ!」


 やべぇ、2回目から機械が本気を出してきた。


「お姉様は王様にキスですわぁ!」


 バゴンッ!

 パープルウォッチが爆発した。


「王様ゲームの、ルール、を、見直して、から、出直して、こい。」


「酷いですわぁ。」


 本人はピンピンしているが、メンタル的にやられていそうだ。仕方ないから、キス……はちょっと無理なので頭を軽く撫でてやる。

 ヌチャァ……。


「なにこれ。」


「ユウリの唾液ですわぁ。」


 食堂の奥のキッチンにシンクあったよな?走ろう。


「「王様だーれだ!」」


「アタシかぁ。」


 げっ、よりによってカオリかよ。また危ないなぁ。過激の意味が、エロじゃなくグロに走りそうだ。


「とりあえず、全員投げさせろ!」


 最近ストレスでも溜まっていたのかな。さすがにコンクリの床は避けてはいるものの、みんな同じベッドの上に叩きつけている。こわっ。

 ユウリの唾液に若干の感謝だな。手の汚れは洗えば落ちるけど、骨折は落ちないし。


「カァヅゥキクゥン!?」


終わった……。






「「王様だーれだ!」」


「私。」


「過激、なのが、すくないと、いつまでも、でやがれない、ぞ。」


「じゃあ、2番と4番、下着以外全部脱いで。」


 みんなの間に鋭い緊張が走る。これはやばい。誰だ、だれが2番だ!


 そう、何を隠そう、俺は4番が誰なのか知っている。


「俺、4番なんだけど。」


 女子勢の間にはさらに緊張が高まっていく中、1人だけ落ち着き払っている奴がいた。


「2番は、わたくしにございます。」


 こ、ここに来てセバスチャン……だとっ!?


「ご安心ください。ここは人目があります。」


 良かった、俺の貞操はしばらく安全らしい。


「人目がありますので、優しく致しますぞ。どうしてもと言うなら、物陰でもよろしいですが。」


 うん、全然安全じゃないね。とりあえずそのズボン大きくなってない?


「ショタちゃん、に、手を、出すやつは、追放。」


 セバスチャンが消えた。あとかたもなく。多分、どこかにワープでもさせられたのだろう。


「王様、は、もう1人、指定、すること。」


「じゃあ、五番で。」


「五番はうちだけど、幽霊フォルムの時は、服の脱ぎ着が出来ないぞ?」


 ヨダレは出せるのにか。なんと、便利なやつなんだ。


「じゃあ、五番は逆立ち。」


「なるほど、逆立ち、なら、スカート、が、めくれ、上がる。過激だ。」


「逆立ちでも服の形変わらないぞ。幽霊だし。」


 なんて、なんて便利なやつなんだ!


「チッ。」


 ゆ、ユミコさん?まぁいいや。


「「王様だーれだ!」」


「私よ。」


 ユウキか、比較的安全だな。


「えっと、じゃあ、全員に。『初めて』がまだの人は、今ここで済ませること!」


 ……はっ!?


「ええやん、ええやん、これぞ18禁の醍醐味、で、やがります。」


「ちょっと待った!」


 ここで声を上げたのは、ヒカル先輩だった。


「初めてってなんの事?」


 そう、このピュア度100%の先輩には、そもそもの意味がわかっていないのだ。


 ユミコでさえ、顔を赤くして答えた。


「ごにょごにょ。」


 ヒカル先輩は頭からボンっと湯気だか煙だかを出してぶっ倒れる。


「もうみんな、何をためらっているの?」


「1番わぁ、ワタクシですわぁ!」


 だめだ、もう止まらない。このカオスは俺にはどうしようも無い。


「みんな落ち着いて!まずは、私が見本を見せるから!カヅキ、ちょっと来てくれるかしら?」


「お、おうっ!?」


 やばい、声が裏がえる。


「こっちを見て。」


「は、はい……。」


「うん、カヅキのお題は『女装男子』ね。」


「う、うん……へ?」


「だから、書き初めよ!私、いつもお題は決められてばかりだから!

あれ?みんな、なんで怒ってるの?キャアッ!」


 こうしてユウキは、保健室に監禁された。


「もう、場が、シラケたし、帰り、やがれ、です。」


 機械音声も戸惑っているようだった。





 気がつくと、自分の家にいた。夢……か?廊下からは、シューッという音が聞こえてくる。


「カ、カオリ……?」


 なにやってるんだ?


「見てみてカヅキ、これ、ゴキブリ駆除用の煙出るやつを、エレベータートイレの隙間から沢山流し込んでるんだ!」


 本当に何をやってるんだ……


「嫌な夢を見た事をみんなに話したら、みんなも同じ夢を見ていたらしいじゃない?」


 たしかに、俺も変な夢を見た。


「それで、機械音声の話し方から、ここかなぁって。」


 ピンポーン

 ドアのチャイムが鳴る。


「あ、みんなも来た!」


 なんだろう。


「パーティーしに来たよー。」


 偶然か、夢の中のメンツ全員集合だ。あ、セバスチャンさんだけいない。

 みんな缶を持っているが、飲み物では無さそうだ。


「ほらみんな!どんどんまいて!」


 たぶん、いくら相手がシオリさんでもオーバーキルじゃないだろうか。

 諦めて、もう一寝入りすることにした。

 そういえば、ユイは途中から見てないけど、どうしていたんだろう。





「私はもうだめみたいだ。コードネームY。」


「いいのよ、コードネームS。あなたはよくやってくれたわ。もう安らかに眠りなさい。」


 要するに、もう「組織」には用済みってことか。


「チームハーレムズも、これでおしまいね。」


「そうね、でも、きっと、また、私たちの夢を継いでくれる人が出てくるはずよ。」


「そうね、そう願いましょう。」


「ねえ、最後に聞いておきたいの。」


「もう、殺虫剤の影響で意識は長くない。早く聞け。」


「YとSって、なんのことだったの?」


「……は?」


「だから、YとSって何を表していたの?」


「小学校の……ローマ字から、やり直せ、ユイ。」


「そんな!でも私、九九すらまだ覚えきれてないのよ!そんな難しい話、どうすればいいの!

シオリ、シオリ!返事をして!シオリィィ!」


 こうして、私たちの冒険は終わった。


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