第4話
4………… Developed science(発達した科学)
ほとんどの生徒たちがバスへと避難する中、数名の生徒と橘(たちばな) 妃音(ひめの)、堂島(どうじま) 海里(かいり)、そして運転手の三原(みはら)だけが広間に残っていた。
そこにいる誰もが一言も喋らないまま、1時間ほど過ぎようとしていた時、沈黙を破る様に
「あの…妃音(ひめの)さん、さっきのって手品じゃなくて魔法?本物なんですか?」
日向(ひゅうが) 月斗(げっと)が尋ねる。
「ええ…さっきの生徒さんが魔法が使えるんじゃって言った時にふと、出来る気がして…」
「そんな事で?」
「ええ…日本では…私たちって普段生活をする上で、蛇口をひねれば水が使えて、スイッチを押せば電気やガスが簡単に使えるでしょ…あれって、昔の人からしたら魔法じゃないかしら…」
「確かに。[十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。]ってやつか。」堂島(どうじま)が応える。
「それって日本ではライフラインが充実していて、誰もが当たり前の様に使える科学技術って言えなくないですか?」
「科学技術…かどうかはさておき…」と堂島(どうじま)。
日本においてライフラインとは、エネルギー施設、水供給施設、交通施設、情報施設など生活に必須なインフラ設備などの事を指す。
「例えば携帯電話やFAXなども、仕組みは分からなくても、誰もが当たり前の様に使っていて、当たり前の物として認識している。」
「この世界では魔法が当たり前という認識をする事で使える様になるのか…」
「多分…この世界に於いては魔法が当たり前の能力?、なら誰もが使えるはず。」と言って妃音(ひめの)がまた辺りを明るく照らした。
「おおおっ」
「なるほど、ガス=火、水、電気=光だとすればそれがライフラインということか。」
「ウリ・ゲレル・フロイド」運転手の三原が呟いた。
「何かの呪文ですか?」月斗(げっと)が尋ねる。
「いえ、昔 ウリ・ゲレル・フロイド…ユリゲラーがテレビ番組でスプーン曲げを披露したところ、それを見ていた子どもたちが真似をしてスプーン曲げが出来たって言うのを思い出しました。」
「それもテレビの前の子どもたちが当たり前に超能力を認識したからって事?」
「私はその時、小さかったので実際見ては無いんですが、割と超能力やUFOとかそう言うのが好きでし、周りでも流行ってましたね。」
「てことは、俺だって!」
そう言って月斗(げっと)は、さっき妃音(ひめの)がした様に掌を胸の前に合わせたあと力いっぱい前へ押し出す動作をする。
ヴァアァァン!
怒号とともに火球と呼べるものが勢いよく飛び出し、堂島をかすめて[かまくら]の内壁に当たる。
「おいコラ!人に向けるな!」
「すいません!火が前に飛び出るなんて思わなくて!」
「てか明らかにこっちに向けてたよね!」
「何で火が出たんだろう?」
「馬鹿だな月斗(げっと)!」と言って陸(りく)も同じ様にやってみる。
グググッと陸(りく)の立っていた地面が少し盛り上がった。
???
もう一度。
ググググググッ
更に少し地面が盛り上がる。
「陸(りく)!ちょっと背が高くなってない?」
半笑いで月斗(げっと)が声をかける。
「おい!お前ら人の話を聞け!」と言って堂島が手をピストルみたいすると指先から水が出て月斗(げっと)の顔に当たる。
「うわぁ、しょっぱい!何するんすか!先生!」
「おお!すまん!大丈夫か?」堂島海里(かいり)が自分の人差し指を見つめる。またチョロっと出る。
「先生コレ塩水ぽいんすけど!」
「おもしれー!おい、京華(きょうか)お前もやってみ!」
陸(りく)に促されて
「えっ、こうですか?」京華(きょうか)が見よう見まねで掌(てのひら)を合わせるポーズをすると周りをいい香りが漂った。
「なんかお香みたいな匂いがするな!」
「なんか高貴な香りがするな!」月斗(げっと)と陸(りく)が顔を見合わす。
「ヤダっ!なんか恥ずかしい!」と京華(きょうか)が手で顔を覆う。
「多分コレ名前と関係あるんじゃないか?」
「本庄陸(ほんじょうりく)=土、堂島海里(どうじまかいり)=海水、天道京華(てんどうきょうか)=お香(こう)っぽい匂い。」
「ヤダ、役に立たない!」
「おい、梶(かじ)お前やってみ!」
「おお!お前すごい火出そうだから気をつけろよ!」
陸(りく)に呼ばれて1年の梶(かじ) が言われるままにやってみる。
シーン!
「アカンか!アカンのんか!」陸(りく)がガッカリする。
「でしょうね…僕、火事じゃないですから…」
「行けそうなのにな!」
楽しそうな月斗(げっと)と陸(りく)のやり取りを見て、南(みなみ) 千里(ちさと)は男の子って馬鹿だ!
と思いつつもその場の雰囲気が和んだ事に少し安心をした。
9月13日 AM 11:46
スマホは相変わらず圏外だが、時間だけは、別世界にいても元の世界の時間を指(しめ)していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます