第45話 スーパーヒーロー大塩平八郎と天保の改革

【天保の大飢饉発生!】

 キツい寛政の改革が終わり、窮屈な生活から一変して、自由を謳歌するように化政文化が花開きました。


 しかし、将軍・家斉は政治を放っておいて、遊び呆けていたので、どんどん出費がかさみます。

 

 トップがこんな状態なので、人々の生活は荒んでいきます。


 将軍が遊び呆けているので、江戸の町にはギャンブラーやヤンキーが増えて、治安がどんどん悪化していったんですね。


 一方で日本沿岸に外国船がよく出没するようになったので、幕府は異国船打ち払い令を出しました。


 こんな感じで、江戸幕府はグダグダしてきました。オワコン化の空気が流れてきましたねぇ。


 このような、幕府がグダグダしていると、ある大災害が起きました。

 

 江戸時代は何度も食糧難が起こっていますが、その中でも最大の飢饉と言われる『天保の大飢饉』が起きるのです。


 何度も飢饉が起きているので、それを教訓に米を備蓄している藩もありました。江戸幕府も米を備蓄していたので、それを人々に配り、飢饉を乗りきることができました。


 しかし、『天下の台所』と言われる大阪は、飢饉対策に失敗してしまいます。


 なんで失敗したのかというと、餓死者が多く出ているのに、大阪の町奉行所は特になにもしなかったのです。


 そんな中、お金を持っている商人は……


お金持ち「食料が少なくなってきたから、米を買い占めるでー」


 こんな感じでどんどん米を買い占めていくので、一般の人たちに米が行きません。

 

 令和二年の春、コロナ禍によって、はじめての緊急事態宣言が出されましたが、その時、マスクやトイレペーパーの買い占めが、一部の人々の間で行われました。

 天保の大飢饉の時に起きた、米の買い占めと通じるところがありますね。


 一部の人間が米を買い占めたのこと、そして町奉行所がなにもしなかったので、大阪では多くの人が餓死してしまうのです。



【スーパーヒーロー、大塩平八郎登場!】

???「奉行所いいかげんにせぇや。皆、お腹空いてるのに、なんで何もせえへんねん!」


 おや? 奉行所に文句を言ってる人がいますね。何者でしょうか?


平八郎「このままだと皆餓死してしまうやろ! 何とかせにゃいかんで! まったく奉行所は何してるんや!」


 彼の名前は『大塩平八郎』。教科書にも載ってるほど有名な人物ですね。


 平八郎は大阪町奉行所の元役人でした。現代で言うところの、市役所公務員のOBってとこですね。


 平八郎は自らのお金を、飢えた人々に分け与えていました。


平八郎「これで、ご飯を食べるんや」


町民「おおきに。平八郎さん」

 

平八郎「まったく、奉行所は何をしてるんや。こりゃ、俺も腹をくくらんとあかんな」


 飢饉に多くの人々が苦しんでいるのに、何もしない奉行所に対して怒っていました。

  

 平八郎は大砲や鉄砲などの武器を集めました。そして……


平八郎「皆、米を買い占める商人に天誅を加えるときがきたで! 戦うんや!」


町人A「俺、平八郎さんについていくで」


町人B「米を奪い返すんや!」


町人C「平八郎さん、かっこいい!」


 なんと市役所公務員OBと言える、平八郎に多くの人々がついてきたのです。私財を分け与えてでも、人々を救おうとしたので、人気があるのは当然と言えます。


 こうして、『大塩平八郎の乱』が起きるのですが……


町人D「平八郎がクーデターを起こそうとしてますよ」


奉行所「なんやて!!!」


 なんと、仲間から裏切り者が出て、奉行所に密告したのです。


 情報が漏洩してしまいましたが、平八郎はクーデターを決行しました。


平八郎「俺たちの怒りを思いしるんや!」


 平八郎は町中で大砲をぶっぱなしたり、爆弾を爆発させたりしたのですが……


役人「大阪をめちゃくちゃにするんやない! 役人をなめたら、アカンで!」


 奉行所がすぐに駆けつけてきて、鎮圧さてしまいました。平八郎は大阪から逃げるのですが、すぐに潜伏先をつかまれてしまいます。


役人「見つけたぞ! 平八郎!」


平八郎「無念!」


 平八郎は爆薬に火をつけて、爆死しました。


 こうして、大塩平八郎の乱は終結するのですが……


町人A「平八郎さんが死ぬはずがない!」


町人B「そうだ! 平八郎さんの死体を誰かみたわけなじゃい!」


 町人たちは「マイケル・ジャクソンは生きている説」のように、「平八郎は生きている説」を信じました。そして……


「米を人々に分け与えなさい by平八郎」

「幕府はダメダメだねー by平八郎」

「将軍のバーカ by平八郎」


 こんな感じで、各地の奉行所に死んだはずの平八郎からの、幕府や政治を非難する手紙が連日届いたのです。


 恐らくは何者かが平八郎の名を語っていたのでしょうが、人々のために戦った平八郎は飢饉の最中に現れたヒーローであり、多くの人々から支持されていたのです。


 それだけでなく……


生田万いくたよろず「俺も平八郎さんみたいに、乱を起こすぞ!」


 学者の生田万という人物が、平八郎に触発されてクーデターを起こしたのです。


 こうして大塩平八郎の乱がきっかけとなって、各地で乱が多発するようになりました。


 流石の幕府も「これはマズイ!」と思ったのか、改革を行うことになります。



【もはやワンパターン。またまた農業中心の天保の改革】

 天保の大飢饉や、大塩平八郎の乱によって、国は大混乱! しかも、遊び人・家斉が幕府のお金を使いまくったので、やっぱり財政難に陥っています。


幕府「こりゃいかーん。水野忠邦みずのただくに頼んだぞ!」


忠邦「任せてください!」


 幕府のリーダーとして選ばれたのは、将軍じゃなくて老中の水野忠邦でした。


 さて、忠邦が老中リーダーになった一方で、家斉あそびにんからあとを継いだのは12代目・徳川家慶とくがわいえよしでしたが、特になにもしていないので覚えなくていいですw

 

 忠邦が行った改革を『天保の改革』と言いますが、基本となるのは、やっぱり「農業&節約」ですw


 ワンパターンですねw


 江戸の三大改革と言われる、「享保の改革」、「寛政の改革」、そして「天保の改革」ですが、やったことはそれぞれ微妙に違いますが、3つとも「農業&節約」が中心ですね。

 

 ここで江戸時代のポイントをおさらいしましょう。


1、徹底管理とコントロール

2、キツい、ユルい、を繰り返す

3、ずっとお金に困っていた


 と『江戸時代編』の最初にお話しましたが……


「江戸スタート! キツくしてコントロールします!」(武断政治)

       

「キツくしすぎたら、反発が起きたんでユルめます」(文治政治)

        

「動物愛護で散財! しかも飢饉が起きました」(生類憐れみの令&享保の飢饉)

        

「改革するので、またキツくします」(享保の改革)

        

「キツくしすぎたんでユルめます。しかも商業中心でいきます」(意次の治) 

        

「飢饉が起きました! 食べ物がありません」(天明の飢饉)

        

「改革するので、またキツくします」(寛政の改革)


 同じようなパターンを繰り返してるのに、気付いている人もいるのではないでしょうか?

 吉宗やら、享保やら、寛政やら、意次やら、定信やら、いろんな用語、人物が出てきますが、実はやってることは同じです。



 まるで、娘さんが悪人に襲われたところを「助さん、角さん」が助けて、黄門様一行が娘さんの家でお世話になって、セクシーなお姉さんの入浴シーンを挟みつつ、悪代官に印籠を見せて懲らしめる、この展開くらいワンパターンですねw


 ワンパターンになってきましたが、天保の改革を見ていきます。


 農業によって年貢の徴収率を上げて、財政を回復させようとしましたが、これも3回目ですねw


 忠邦は農業を活性化させるために『人返し令』を出します。


これは江戸に出稼ぎにきている農民を、元の農村に帰す法令です。これは、松平定信が出した旧里帰農令きゅうりきのれいと似ていますが……


忠邦「てめぇら! 江戸から出ていけ! 農民は農民らしく、田舎で米をつくってろ!」


農民「ひいいい!」


 旧里帰農令は帰るかどうかは自由でしたが、『人返し令』は強制でした。


 それで、やっぱり贅沢を禁止する『倹約令』を出します。


忠邦「はい贅沢品は禁止! 安い服を着て、安い物を食べてね!」


 これもワンパターンですが、前回の寛政の改革では浮き世絵師が、逮捕されましたが今回は……


忠邦「落語と歌舞伎は見ちゃダメ! 舞台は封鎖する!」


役者「ええー (|||´Д`) 」


 こんな感じで天保の改革を煽りを受けたのは、役者でした。仕事を国に奪われた俳優やお笑い芸人も大変ですね。


 こんな風に倹約令を出したので、せっかく花開いた化政文化は終わってしまいました。


 ちなみに将軍・家慶も倹約令を受けて、贅沢を禁止されたのですが、彼の好物は生姜でした。


家慶「生姜がないよー! うわーん Σ(ノд<) 」


 こんな感じで、食事に生姜が出なくなった事を嘆いたそうですw



 倹約令によって歌舞伎や落語が禁止されたのは、現代でいうと、吉本新喜劇や映画やテレビが、政府によって制限されるようなものです。


町人「はあ、楽しみがない」


 このように、人々の不満がたまっていくのも、もはやワンパターンですw



【天保の改革の終わり】

忠邦「うーん。もっと、年貢の徴収率を上げたいなあ。ついでに、幕府の権威も見せつけたい!」

 

 改革を進める忠邦はこのよう考えていました。そこで……


忠邦「大阪の土地を貰おう! 土地が増えれば、幕府の徴収率も上がるし、幕府の権威も示せるぞ!」


 このように考え『上知令じょうちのれい』を出しますが……


忠邦「大阪のひとー! 土地を江戸幕府に渡しなさい!」


大阪人「は?」


忠邦「土地を渡しなさいって言ってるの! それと、引っ越し代は自腹ね」


「年貢の徴収率アップ」&「幕府の権威を示す」という目的の『上知令』でしたが、その内容は、「土地を寄越せ!」、「引っ越し代は自腹」という理不尽なものでした。


 なので大阪の人は……


大阪人「ふざけんな! 忠邦! そんな要求飲めるわけねーだろ!」


忠邦「ひいいいいい!」


 大阪の人から反発されるのも、当然でした。


家慶「大阪と揉めるのはマズイよ忠邦。 はあ、生姜食べたい……」


忠邦「すいません」


家慶「もう老中クビね。生姜食べさせてくれないし」


忠邦「ガーン (|||´Д`) 」

 

 忠邦は『上知令』を出したことによって、失敗しました。ちなみに、家慶から生姜を取り上げたのは、関係ないと思いますw


 忠邦が天保の改革を失敗させている一方で、アメリカから……


???「ふっふっふ、日本め! 鎖国はもう終わりだ!」


 あの黒船が太平洋を渡って近づいていたのです!

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