第44話 また農業にシフトチェンジ! 寛政の改革!  

 田沼意次が商業中心で財政を回復させようとしたら、火山噴火やら飢饉やらで、また財政難に陥ってしまいました。


 そこで、政権を握った松平定信は、田沼意次をクビにして主導権を握り、国を建て直そうとしたのが『寛政の改革』です。


 さて、なんで、松平定信が出てくるのかと言うと、彼は元々、白河藩(現代の福島県)の藩主でした。

 飢饉の最中にも関わらず、食料を備蓄していたため、餓死者をほとんど出さなかったからうえ、吉宗の孫だったからです。


「飢饉に耐えた名君で吉宗の孫」! だかた老中として抜擢されたんですね! 


 はたして、松平定信の寛政の改革は上手くいくのでしょうか!?



【またキツい寛政の改革!】

定信「商業なんてダメダメ! おじいちゃんの時の方がうまくいってたじゃん!」

 

 暴れん坊将軍・吉宗を祖父にもつ、「暴れん坊まご」の松平定信は、吉宗の享保の改革を手本にして、農業中心の政策に戻しました。


 それでは寛政の改革を見ていきましょう!



①、経済政策

 さて、意次が商業中心にした事によって、「農業はもうオワコンだね。これからは、商業の時代だね」と言いながら、田畑を捨てて江戸の町に来ていた人がたくさんいました。


 なので定信は、旧里帰農令きゅうりきのれいを出します。これは、どのような法令かと言うと……


定信「農民は農民らしく村に戻って米を作ったほうがいいよ!」


 こんな感じで、江戸の町に来ていた農民を、元の農村に帰す法令ですが、強制ではなく帰るかどうかは、自由でした。


 そして農民には、『囲米かこいまいの制』といって、米を備蓄させる制度をだします。

 また町人には税金を安くするかわりに、その分浮いた7割のお金を貯金させる『七分積金しちぶつみきん』という、制度を出しました。


 また、贅沢品を禁止する『倹約令』を出します。


 しかし、一度贅沢を知ってしまった、人々は贅沢から抜けられません。


 突然政府が「お肉じゃなくて、安いもやしと納豆を食べてね! あと、お酒やジュースも禁止! お水飲んでなさい!」と言ってきたら、嫌ですよね。


 江戸時代にも同じ事が言え、人々の不満が高まりました。 



②、学問、出版の統制

 定信は朱子学以外の学問を禁止する『寛政異学の禁』という制度を出します。


 これによって、杉田玄白によって盛り上がってきた蘭学もストップしてしまいました。


 なぜ、このような法律を出したのかというと、朱子学は初期の江戸幕府がオススメしていた学問であり、江戸時代の始まりを支えていた思想でもあります。


定信「江戸時代初期のような、幕府の威厳を取り戻そう!」

 

 このように、定信は輝かしい江戸幕府の過去の栄光を、取り戻そうとしたんですね。


 また、定信は思想を統制するために、浮世絵や出版物を規制しました。


 そのため、一部の浮世絵師が逮捕されることもありました。


 現代でいうなら、『ジョジョ○奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦さんや、『進撃○巨人』の作者、諌山創さんが仕事していただけで逮捕されるようなものです。


⑤、失業者対策

 定信は江戸の町でフラフラしている浮浪者、失業者のために『人足寄場』というものを作りました。

 これは、現代でいうところのハローワークみたいなものですね。



【寛政の改革でわかる、意次の良さ】

「農業による経済政策!」 

「過去の威厳を取り戻すための学問統制!」

「贅沢を禁止する倹約令!」



 このように、様々な改革を行った松平定信でしたが……


人々「はあ、楽しいことがなにもない。田沼の時代がよかった……」


 このように、田沼意次の商業中心の時代の良さに、人々は気づいていくのです。


 そりゃそうですよね……


「贅沢するな! 安いもやし食って、水飲んでいればいいんだ。黙って米作ってろ! 町に住んでる人は、必ず給料の7割は貯金しろよ!」


「YouTubeもゲームもアニメも禁止! 漫画家は逮捕したから、ジャンプやマガジンはもう、出ないからね!」


「学問は国語だけでいいの! 数学も理科も学ぶ必要なんてない!」


 こんな国、窮屈じゃないですか?



【松平定信の失脚! 尊号一件そんごういっけんとは?】

 『寛政の改革』を行った定信ですが、なんと天皇ともめます。


 この事件、非常にややこしいので、ザックリお話すると「定信が天皇の皇位継承に、口を出したのが原因です」


 今まで黙っていた十一代目将軍・徳川家斉とくがわいえなりも……


家斉「いやいや、定信。天皇に歯向かうのはダメだろ! 余計な事をするな!」


 こんな感じで定信と家斉の仲が悪くなり……


家斉「定信。お前、調子乗り過ぎ! クビね!」


定信「ガーン!」


 こうして、定信は失脚して、寛政の改革は終わりました。



【ユルくなって花開いた化政文化!】

 定信がクビになって寛政の改革が終わると、窮屈な生活から解き放たれたかのように、カルチャーが一気に発展しました。


 寛政の改革の後に花開いたカルチャーを、『化政文化』と言います。


 さて、江戸中期に花開いた『元禄文化』は大阪が舞台でしたが、『化政文化』は江戸で発展したのが特徴です。

 

 文化の中心となるのは、やはり町人です。


 この頃になると、歌舞伎の料金も下がり、それなりの稼ぎがあれば、誰でも観れるようになっていました。


 現代のように、一般の人が映画館で映画を観るようなものですね。


 また文学面でも、新たなカルチャーが生まれます。

 

「東海道中膝栗毛」で有名な『十返舎一九じゅっぺんしゃいっく、「浮世風呂」で有名な『式亭三馬しきていさんば』などの小説家が出てくるのですが、堅苦しくて真面目な文学ではありません。


 エロくて下ネタがある大衆向けの作品が出版されるようになりました。現代でいうところの、下品でエロいギャグマンガっところでしょうか。


 この大衆向けギャグ小説を『滑稽本こっけいぼん』と言います。


 またギャグマンガではなく、熱いバトルマンガのような小説、『読み本』というものも出てきますよ。


 有名なところでは、『曲亭馬琴きょくていばきん』の「南総里見八犬伝」です。

 その内容は「8人の特殊能力を持ったキャラクターが悪と戦う!」、というお話で、完全に「異能バトルもの」です。


 ギャグマンガやバトルマンガなど、現代の少年マンガに通じるストーリーは、化政文化から始まった言えますね。


 もちろん、大衆向け文学だけじゃなく、浮世絵もすごい人物が出てきますよ。


「富獄三十六景」で有名な『葛飾北斎』や、「東海道五十三次」で有名な『歌川広重』など、世界的に有名な浮世絵師が現れるのも、化政文化の時です。

 


【遊び人、家斉】

 定信の寛政の改革は人々に窮屈な生活を強制していましたが、将軍も例外ではなく、質素な生活を強いられてしました。


 窮屈で質素な生活でしたが、米による徴税はある程度上手くいき、質素な生活によって幕府の財政はある程度、回復していました。


 しかし……


家斉「定信がいなくなったから、窮屈な生活が終わったぜ! これからは、たくさん遊ぼう!」


 なんと、将軍である家斉が幕府のお金を使いまくります。窮屈で質素な生活の反動が来たのかもしれません。


 家斉は政治とか国の運営には興味がなく、朝からお酒を飲んでいました。


 それだけでなく、大奥の強化を行いました。


 大奥(ハーレム)を強化して、朝から晩までズッコン、バッコンしていたので、子供が55人も出来ました。


 こんな感じで、家斉は遊びにお金を使いまくり、子供もたくさんいたので、食費や養育費もかさみます。


「お酒と女と遊びが大好きな家斉」は、かなりヤバイ将軍と言えますね。



【外国船対策でさらに出費拡大!】

 家斉が遊んで散財している一方で……


イギリス「私タチト、貿易シマショウヨー」


ロシア「オランダダケジャナク、私タチトモ、仲良クシマセンカ?」


アメリカ「漁ノ途中デ、疲レタカラ、チョット休マセテ、クダサーイ」


 こんな感じで、鎖国中の日本に、ロシアやイギリス、アメリカの船がよく来るようになりました。


幕府「うーん。仕方がない。少しだけだよ」


英&露&米「ヤッター!」


 実は完全に鎖国を解いたわけじゃありませんが、幕府は鎖国を緩和したのです。


 しかし、日本人と外国人との間のトラブルが多発します。


 たとえば、日本人がロシアに連れていかれたり、『フェートン号事件』と言って、イギリスの戦艦フェートン号が、長崎にあったオランダ商館の従業員を人質にとり、食料を強要する事件です。


 なんだか、銀行強盗みたいですね……フェートン号の人は、よっぽど切羽詰まっていたんでしょうか?


 こんな感じで、日本中で外国人とのイザコザが発生したので……


幕府「やっぱりダメだ! オランダと中国以外の船は追い払え! 怪しい船を見つけたら、容赦なく大砲を打ち込んでやりなさい!」

 

 こうして、大砲を「ドーン」と撃ち込んで、外国の船を追い払う『異国船打ち払い令』という、江頭2:5○よりも過激な法令が出されました。


 将軍・家斉が遊び呆けて散財している一方で、日本の沿岸では外国船に大砲を打ちまくっていたので、どんどんお金がかさんでいきました。

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