第357話 心当たり

 行方不明となったクラウディアさんを捜すため、俺たちはゼノン様に別れを告げてブラファー家の屋敷を出る。


 その際、俺だけなぜか呼び止められた。


「君には改めてお礼を言っておきたかったんだ」

「お礼?」

「シャーロットのことだ。あの子があんなにも明るくなったのは君たちのおかげだよ。本当にありがとう」

「い、いえ、そんな」

「これからもシャーロットをよろしく頼む。困ったことがあったら相談してくれ。ブラファー家はいつでも君の力になるぞ」

「ありがとうございます!」


 最後に力強く握手を交わしてから、俺はみんなのもとへと戻った。


「お父様とはどのようなお話をされていたのですか?」

「シャーロットをよろしく頼むって言われたよ」

「えっ?」


 真っ先に反応したのはキアラだった。

 それを見たシャーロットの表情は一瞬にあくどいものへと変わった。


「つまりお父様はわたくしたちの仲をお認めになった、と?」

「はあぁ? あくまでもダンジョン農場でお世話になるってことでしょ?」

「あらあらキアラさんったら、見苦しいですわよぉ?」

「それを言うならあたしだってママが公認しているんだから同じよ! というか、あんたの方がずっと出遅れているんだからね!」

「むっ! 聞き捨てなりませんわぁ!」


 何やらバトルが始まってしまった。

 相変わらず元気だなぁ、あのふたりは。


「やれやれ……騒々しいのぅ。それよりもベイルよ」

「うん?」

「先ほどクラウディアの行き先について心当たりがあるようなことを言っておったが、本当に見当はついたのか?」

「絶対とは言えないけどね。――ただ、可能性は高いと思うよ」

「なら、そこへ行きましょう!」

「だね。どのみち他に手がかりはないんだし」

「じゃあ、すぐにお出かけの準備をしましょう」


 キアラとシャーロットを除くメンバーは旅支度に意欲を燃やしていた。

 仲良くケンカをしていたふたりもようやく自分たちが除け者状態だったことに気づき、慌てて合流。


 まあ、ケンカするほど仲が良いというし、これもまた彼女たちなりの愛情表現なのだろう。

 

「さて……それじゃあダンジョン農場のツリーハウスへ帰ろうか」


 改めて旅支度を進めるべく、俺たちは帰路へと就くのだった。

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