第355話 クラウディアの秘密

 クラウディアさんとブラファー家の関係。

 どうやらシャーロットとローレンスさんさえ知らない秘密が隠されていたようだ。


「クラウディアについて語るのなら、まずは彼女の両親の話をしなければならないな」

「両親……確か、すでに亡くなっていると聞きましたわ」

「俺もだ」


 この情報についてはダンジョン農場組の何人かも聞いたことがあるらしく、キアラとマルティナは知っていた。ちなみに俺は初耳だ。


 それにしても、どうして両親の話に?

 話を聞いた瞬間に浮かんだ疑問はすぐに解消された。


「実は彼女の父親であるスレッジは長らくブラファー家に仕えていた庭師だったのだ。彼は仕事をしているうちにメイドとして仕えていたジェリカと恋仲となり、やがて私のもとへ結婚をしたいと相談に来た」

「そ、そうだったんですね……」


 驚いたな。

 まさかクラウディアさんのご両親がもともとはこの屋敷で働いていたなんて。


 俺たち以上に衝撃を受けていたのは、やはりシャーロットとローレンスさんの兄妹だった。

 長年一緒にいながら、そんな話は一度も聞いたことがないらしく、しばらくフリーズ状態となってしまう。


 ――だが、ゼノン様の話はまだ終わらない。

 まだ彼女が出ていった真相にはたどり着いていないからな。


「だが、当時の当主である私の父はふたりの結婚に難色を示した」

「えっ? ど、どうしてですか?」

「実はとある貴族からクラウディアの母親――ジェリカを自分の妻にしたいと迫られていたようだ。かなり有力な家だったようで、逆らうならブラファー家を潰すと脅されたらしい」

「そ、そんな……」


 今から数十年前の話だからなぁ。

 そういった状況も十分あり得るのか。


「結局、父上は断り切れなかったようだが、それを知ったふたりは駆け落ちをして屋敷から出ていったのだ」

「そ、壮絶じゃのぅ……」

「でも凄いですぅ……」


 アルラウネのハノンや竜人族であるシモーネでさえ、クラウディアさんの両親の壮絶な過去に圧倒されていた。


 まあ、こういう話は各地でいろいろとあったんだろうな。

 俺とシャーロットだって、一歩間違ったらめちゃくちゃこじれていたかもしれない。


 たぶんだけど、ゼノン様が若い頃にクラウディアさんの両親を見ているから、俺と婚約がなくなった際も強くは出られなかったのかな。


「彼らがその後どうなったのか、直接会って聞いたわけではないので不確かだが……相当苦労していたようだ。それでも想い人同士で結ばれたという幸せの方が勝っていたようで、苦しい生活環境ながらも強く生きていたという」


 そこでゼノン様の表情が一気に暗くなった。

 ここからまた流れが大きく変わりそうだな。




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