第353話 対面
ついにシャーロットの父親――ゼノン・ブラファー様と顔を合わせる時がきた。
以前会ったのは本当に俺が小さかった頃……正直、ほとんど覚えていないんだよな。
うちの父親よりも年上っていう情報は頭に入っているが、それくらいだ。
緊張しながらも部屋の中へ入ると、ひとりの初老の男性が俺たちを待っていた。
「やあ、久しぶりだね、ベイルくん」
柔らかな口調とにこやかな表情で出迎えてくれたこの人が……シャーロットの父親。
彼の顔を見た瞬間、不思議なことにそれまで眠っていた記憶が続々とよみがえってくる。
直接顔を合わせたことが引き金になったのかな。
とにかく、俺の頭の奥底に沈んでいたゼノン様に関する記憶は湯水のごとく溢れてきた。
「どうかしたかね?」
「あっ、い、いえ」
「ははは、そう緊張しなくてもいい。過去のことは過去のことだし、それに……君はシャーロットから再び笑顔を引き出してくれた。それだけで私は満足だよ」
「ゼノン様……」
俺とシャーロットの婚約は、オルランド家から破棄を申し出たらしい。
詳細な理由については聞かされていないが、のちのシャーロットの態度とか見るとかなり一方的だったと思われる。
俺とシャーロットの間にはもう新しい絆が出来つつあるけど、親同士の遺恨というのはなかなか消えそうにない。それが息子である俺にも波及し、門前払いを食らっても仕方がないと覚悟していただけに、この対応には驚かされた。
「それで、君たちがこうしてやってきた理由についてだが……大方、突然メイドの仕事を辞めたクラウディアについてだろう?」
「っ!? そ、そうです!」
先読みされていたか。
……まあ、タイミング的にもそれしかないよな。
いよいよ本題へ移ろうとしたまさにその時、執務室のドアをノックする音が。
「どうやらこれで揃い踏みのようだな。――入れ」
ゼノン様は俺たち以外にも誰かを呼んでいたようだ。
それは意外な人物だった。
「失礼します。――っと、ベイル・オルランド!?」
「ロ、ローレンスさん?」
「お兄様!?」
シャーロットの兄であるローレンスさんだった。
なぜ妹の専属メイドに関する話に兄のローレンスさんが呼び出されたんだ?
「どういうことですか、父上」
「実はな……クラウディアが仕事を辞めて屋敷を出ていったのだ」
「クラウディアが!?」
えっ?
何その反応。
もしかして……めちゃくちゃショックを受けている?
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