第319話 たどり着いたのは……
シモーネ。
エセルダ。
ヴィネッサ。
俺たちがこれまで出会った竜人族はしっかりと話が通じる者たちばかりだった。特にシモーネとは長い付き合いで、一緒に生活をしている仲だ。
そういったわけで、ダンジョン農場の面々は竜人族に対して好印象を抱いていた。確かにドラゴン形態にはビビる時もあるけど、根っこは何も変わらない。それがよく分かっていたからだ。
――が、どうもそういう竜人族ばかりではないらしい。
森に響き渡る咆哮の主は人の肉に飢えているとヴィネッサは語った。あくまでも噂なのだが、竜人族には人間を食べたくなる時期があるという。ただ、さっきも言ったようにこれは噂の域を出ない。確かめるためには……やっぱり、あの吠えているドラゴンのもとへ向かわなければならないだろう。
シモーネがこの森から離れようとしないのも、そのドラゴンが関係しているっぽいし。
しばらく歩いていくと、開けた空間にでた。
さらに驚いたのは、
「りゅ、竜人族がこんなに……」
その場所はどうやら村のようだった。
一見すると普通の人たちが暮らしているように映るが、彼らにはシモーネたちのように変わった耳や尻尾があり、竜人族であるというのが分かる。
まさか村があるとは思わなかったけど、それ以上に気になったのはそこにいる竜人族たちの様子であった。
まるで覇気がない。
何か怯えていると言ったらいいのか、とにかく暗い印象を受ける。俺たちが近づいても特に話しかけるようなこともなく、なぜかそそくさとその場からいなくなった。
「人間が入ってきたのだから、良くも悪くも関心があってよさそうなものだけどな」
「今はそれどころじゃないんだろ」
そう告げたヴィネッサは、なぜか顔を見上げていた。
空に何かあるのかと、俺もつられて視線は上空へ。
「なっ!?」
そこで俺は信じがたい光景を目の当たりにし、固まる。
俺の声を聞いた他のメンバーも同じように視線をあげて似たようなリアクションを取った。
さっきまでは背の高い木々に周りを囲まれていたから気づかなかったが……めちゃくちゃデカいドラゴンの頭が見えたのだ。たぶんヤツがさっきの咆哮を放っていたのだろう。
俺たちが呆気に取られている中、
「とうとう見つけたぞ……」
ヴィネッサはひとり闘志を燃やしていたのだった。
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