第285話 まったりのんびりゼノディア王都
ゼノディアの王都はクレンツ王都に比べると人通りはそれほど多くない。
しかし、活気は負けず劣らずのアツさがある。
ルークさんから教えてもらったのだが、これも品評会が大きく影響しているらしい。もともとはライナ姫の野菜嫌いを克服するために企画されたイベントなのだが、噂を聞きつけた大陸中の農家が集まり、さらにその農家が売る野菜を求めて他国の商人や観光客も訪れているという。
言ってみれば、これはもうひとつの国おこし行事といって過言ではなかった。
「なんだかお祭りみたいですね」
「あながちその表現は間違っていないんじゃないかしら」
「わたくしもキアラさんと同意見ですわね」
王都の様子を見たマルティナ、キアラ、シャーロットはそう分析する。確かに、どことなくこの活気は市場が盛り上がっているというよりはお祭り騒ぎを彷彿とさせた。
一方、ハノン、シモーネ、アイリアの三人は人だかりを前に緊張している様子。特にハノンとシモーネのふたりについては種族的に落ち着かないようだ。見た目からして竜人族というのが分かるシモーネに関しては、すでに注目の的となりつつあるようだし。
ともかく、このままここにいても仕方がない。
品評会まではまだ日があるのだし、今日一日は王都を散策することに費やしても問題ないだろう。
――と、いうわけで、ここからはみんなでゼノディア王都を見て回る。
宿に関してはルークさんが用意してくれているので、その点は安心だ。
「それにしても……本当に人が多いのぅ」
「品評会を楽しみにしているのでしょうかぁ……」
「野菜好きの多い国民とか?」
「いや、さすがにそういうわけじゃないと思うぞ、アイリア」
ただ、これについては俺も疑問に感じていた。
大国であるクレンツ王都で開催するというならまだしも、国としての規模がそれほど大きくはないゼノディアで行われる品評会にしては人がたくさん集まっている。
もしかしたら、何か別の楽しみを目的に人が集まっているのではないか。
そう思っていると、
「あっ、あそこに人だかりがありますよ!」
マルティナが指さす方向には、確かにひと際たくさんの人が集まっている。詳しく何をしているのかまでは分からないが、どうやら屋台に並ぶ品を目当てに人が集中しているようだ。
「何を売っているのかしら……」
「行ってみましょう!」
キアラとシャーロットが先行して走りだし、俺たちはそれについていく形となった。
人込みをかき分けながら進み、屋台の前まで来ると――売られている商品が判明する。
「これは……野菜?」
屋台には多種多様な野菜が木箱に入れて並べられていた。中にはこの大陸内では見かけない珍しい物もいくつかある。
これだけの種類を大量に仕入れるのはかなり難しいはず……一体、どこの農場なのだろうか。
そんな関心が湧いてきた直後、
「くくく……あんた、ダンジョン農場の人だろう? 敵情視察かい?」
突然声をかけられた。
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