第257話 依頼内容

 農家である一方、俺にはレジナルド騎士団長からいただいた特務騎士という役職がある。

 ローダン王国での一件も、その仕事の成果といえた。


 モンスター討伐とかなら、きっと騎士団に依頼するだろうし、わざわざ俺に話を持ってきたということはやはり農業関連の事案なのか?


「依頼してきたのは魔法薬の権威でね。彼は長年にわたって幻の薬草を探しているんだ」

「ま、幻の薬草……」


 効果はまったく分からないが、とにかく「凄そう」というのは伝わってくる。それと同時に、なぜスラフィンさんが俺をここへ呼んだのか、その理由に大体の見当がついた。

 

「君の竜樹の剣で生みだせないかと思ってね」


 やはりそうだったか。

 これまで、俺はさまざまな神種で本来であれば不可能とされるようなことを実現してきた。今住んでいるツリーハウスだって、そのひとつだ。


 ……しかし、薬草となれば話は変わってくる。


「すいません、スラフィンさん。その薬草についてなのですが……俺の竜樹の剣の力を持っても入手は難しいと思います」

「うぅむ……やはりそうか」


 進化させた樹神の剣であれば可能かもしれないが、望み薄だろう。

 ただ、薬草というなら俺よりも詳しそうな子がいる。


「ねぇ、ひょっとしたら……ハノンが何か知っているんじゃないかしら」


 そう。

 アルラウネという植物系モンスターであるハノンならば、その薬草について何かを知っているかもしれない。この場にいるシャーロットやシモーネ、マルティナも同じことを考えていたようだ。


「そういえば、以前君たちに渡したアルラウネの種から生まれた子がいると言っていたね」

「はい。彼女なら、何かを知っているかもしれません。すぐに戻って聞いてみます」

「よろしく頼むよ」


 日頃お世話になっているスラフィンさんからの依頼だ。

 なんとかそれを達成されるためにも、ハノンが何かを知っていればいいのだが。



  ◇◇◇



「知らんのぅ」


 ツリーハウスに戻ってきた俺たちは早速ハノンに薬草の話をしたのだが……間髪入れずに返事がきた。


「ほ、本当に知らないか?」

「悪いが、皆目見当もつかん」


 幻の薬草といわれるだけあり、そう簡単には見つからないか。


「まあ、仕方がないわね。ママには私から説明をしておくわ」

「いや、俺も行くよ。せっかく依頼してきてくれたわけだし」


 キアラとそんなやりとりをしていると、ダンジョン探索から戻ってきたアイリアが割って入ってきた。


「なんの話をしていたんだい?」

「幻の薬草についてだよ」

「アイリアは何か知らないかしら」

「えっ?」


 キアラが尋ねると、アイリアの表情が一変する。

 もしかして……何か知っているのか?

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