第233話 底知れぬ力
突如クーデターを起こしたアドウェル王子。
近隣諸国への影響も考慮すると、あまり長くこの状況を続けさせておくわけにもいかなかった。可能な限りに迅速な対応を取り、なんとか平和なローダン王国を取り戻さなくては。
「やってやるぞぉ!」
「「「「「うおおおおおおおおっ!」」」」」
シュルツさんのかけ声に、集結したサリーナ姫派の騎士たちが雄叫びで応える。
気合は十分。
……だが、少し戦力差がある。
おまけに向こうとは違って、こちらは武器や防具も乏しかった。まあ、勢いのままにアドウェル王子たちの軍勢から逃げて来たので、準備も何もできたものではなかったが、今振り返るとこれは大きいな。
さて、この戦力差をどうやって埋めるべきか。
このままでは敗北は必至――けど、まだあきらめるには早い。
またしても竜樹の剣が、この状況を打開できる可能性を秘めている。
「シュルツさん。ここは俺に任せてください」
「し、しかし……どうやって?」
「足りない兵力を増やします」
そう告げて、俺は新しくなった竜樹の剣を地面へと突き刺す。
戦力を増やす――それは、武器や防具を調達するというわけではなく、兵の数を増やすというそのままの意味だった。
では、どのようにして増やすのか。
考えられるのは、農場づくりの際に大きく貢献してくれたウッドマンたちだ。
しかし、あの時のままのウッドマンを量産しても、戦力になるとは言えないだろう。彼らはあくまでも仕事を手伝ってくれるくらいの力しかなく、戦闘には向いていない。
――だが、戦闘に特化したバージョンのウッドマンがいたとしたら、話はガラッと変わってくる。
「た、足りない兵力を増やす? 何を言っているんだ?」
シュルツさんだけでなく、マルティナたちも不思議そうに顔を見合わせていた。
今まで、そのような力を使ったことはないから無理もない。
これは新しくなった竜樹の剣だからこそ可能になったもので、まだ実際に使ったことはないからだ。
その能力は――やはり神種だ。
名前はガンティア。
戦闘に特化したウッドマンたちを生みだすためのものだ。
地面に突き刺した竜樹の剣の剣先から溢れていく神種と、その神種を育てるために大地へと染み込んでいく魔力。
それらが融合した時、新たなウッドマンが地面を突き破って現れる。
「うおっ!?」
「モ、モンスターか!?」
動揺する騎士たちとは対照的に、
「あ、あれって、ウッドマン!?」
「で、でも、なんだか私たちの知るウッドマンとは違うような……」
「そうですわね」
「うむ。明らかにこちらの方が強そうじゃ」
「頼もしいですぅ!」
「お、驚いたなぁ……」
女性陣はいつも一緒に生活しているウッドマンたちだと気づいたようだが、戦闘特化型というだけあってサイズアップしているなど、その違いに驚いているようだ。
というわけで、新しく兵力として加わるのは総勢でニ十体の新ウッドマン。
これ以上は俺の魔力がもたなかったけど……まあ、これだけの数が前衛についてくれたら心強いだろう。
「シュルツさん、彼らはウッドマンと言って、俺たちの味方です」
「そ、そのようだな……」
「彼が先行してアドウェル王子の軍勢に挑みます」
「分かった。俺たちはそのあとから追撃しよう」
反撃の流れは決まった。
あとは成功を祈るのみだな。
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